ピンクの桜で彩られたデザイン。2面にわたるカラー紙面には、「感謝」「ありがとう日本!」の文字が大きく躍る――。
日本政府は6月4日、新型コロナウイルスの感染が拡大していた台湾へ約120万回分のアストラゼネカ製ワクチンを無償提供すると明らかにした。
その9日後、6月13日付の「産経新聞」に掲載されたのが、この「台湾人有志一同」という署名が入った新聞広告だ。同日、産経新聞はインターネット版でも、
《台湾発「ありがとう日本」ワクチン提供に産経新聞広告で》
と題した記事を掲載。この広告について、以下のような解説もおこなった。
《新型コロナウイルスワクチン124万回分を台湾に無償提供した日本政府と国民に対し、感謝の気持ちを伝えるため、約130の台湾系企業、団体などが共同出資して掲載されたものだ。》
これについて、広告を出した「台湾人有志」の一人でもある台湾の企業家は顔を曇らせ、こう話す。
「じつは今回、日本の大手紙の中で、産経新聞にだけ感謝広告を出したのです。それが無駄だったとは言いませんが、われわれ協賛企業から1口あたり5万元(約20万円)を募って出稿したこの広告がなかったとしても、産経新聞の“愛読者”には、すでに十分すぎるほど謝意は伝わっていましたよね(苦笑)。
それに、この広告を企画している団体は、もとから日本とは“特別な理由”で関係が深い団体なんです」
特別な理由とはどういったものなのか。
「紙面にも名前が出ていたように、この感謝広告は『台湾傳統基金會』と『台湾櫻花返郷會』という2つの団体が企画しました。前者は親日家で知られた故・李登輝元総統と親しかった台湾の元地方首長がトップを務めています。
問題は後者で、これは日台共同の一般社団法人『日本桜里帰りの会』の台湾における組織名なのです。昭和天皇が台湾でお手植えした桜の苗木などを日本に“里帰り”させることを目的とした団体で、台湾側は李登輝元総統の夫人が名誉会長を務めていますが、日本側の名誉会長は、あの安倍洋子さんなんですよ」(前出・企業家)
安倍洋子氏(93)は、いわずと知れた、安倍晋三前首相(66)の実母である。
「日本桜里帰りの会」の代表を務める外交評論家・加瀬英明氏(84)に確認すると、「そうです。洋子夫人が名誉会長ですよ。台湾側が李登輝元総統の夫人を名誉会長にするというので、日本側も女性がいいだろうと、洋子夫人に就任を依頼しました」と話す。
首相在任時代から、台湾との友好関係を強調してきた安倍前首相。大手紙の政治部記者は、今回の日本から台湾へのワクチン提供に際しても「その繋がりが垣間見えた」と話す。
「日本政府からのアストラゼネカ製ワクチンの無償提供では、安倍前首相がキーマンだったとされています。
日本で、1億2000万回分を調達予定だったアストラゼネカ製の公的接種が中断された際に、ワクチンを台湾側に“相互援助”の一環として提供するように菅義偉首相や麻生太郎財務相を説得したのが安倍前首相でした。
そして、この安倍前首相の動きをどこよりも早く詳細に報じたのが『産経新聞』だったのです」
実際に産経新聞は6月3日にインターネット版で、
《ワクチンの台湾提供、安倍前首相ら動く 中国妨害警戒 日米台が水面下で調整》
と題した記事を掲載している。
前出の台湾の企業家はこうした背景を知って、広告出稿について複雑な心境になったという。企業家が続ける。
「安倍前首相の実母が名誉会長を務める団体が主導して台湾で募金を集め、『安倍前首相がワクチン無償提供で活躍した』と真っ先に報じていた産経新聞だけに単独で感謝広告を出す。
安倍前首相の政治活動に利用するための“マッチポンプ”というか“自作自演”のような動きにも感じられて、気分はよくありません」
産経新聞社に、広告出稿の経緯や、記事との関連性を指摘する声があることへの見解を尋ねたが、「個別の広告案件について出稿経緯などはお答えしておりませんが、ご指摘のような事実はございません」とのみ回答があった。
前出の「日本桜里帰りの会」代表の加瀬氏にも経緯を尋ねたが「広告は台湾側が企画したもので、私(日本側)はタッチしていませんよ。掲載2日前に連絡が来たくらいです」と話す。
菅首相の統制力に陰りが見え、自民党内で安倍前首相が確実に“存在感”を見せ始めている。退陣から約1年、政治活動を活発化して表舞台に登場する機会も増えている。
2に続く
FLASH
7/15(木) 6:05
https://news.yahoo.co.jp/articles/b6d0048a285d6e320cc37fae2299cd1cda6ea7d9
日本政府は6月4日、新型コロナウイルスの感染が拡大していた台湾へ約120万回分のアストラゼネカ製ワクチンを無償提供すると明らかにした。
その9日後、6月13日付の「産経新聞」に掲載されたのが、この「台湾人有志一同」という署名が入った新聞広告だ。同日、産経新聞はインターネット版でも、
《台湾発「ありがとう日本」ワクチン提供に産経新聞広告で》
と題した記事を掲載。この広告について、以下のような解説もおこなった。
《新型コロナウイルスワクチン124万回分を台湾に無償提供した日本政府と国民に対し、感謝の気持ちを伝えるため、約130の台湾系企業、団体などが共同出資して掲載されたものだ。》
これについて、広告を出した「台湾人有志」の一人でもある台湾の企業家は顔を曇らせ、こう話す。
「じつは今回、日本の大手紙の中で、産経新聞にだけ感謝広告を出したのです。それが無駄だったとは言いませんが、われわれ協賛企業から1口あたり5万元(約20万円)を募って出稿したこの広告がなかったとしても、産経新聞の“愛読者”には、すでに十分すぎるほど謝意は伝わっていましたよね(苦笑)。
それに、この広告を企画している団体は、もとから日本とは“特別な理由”で関係が深い団体なんです」
特別な理由とはどういったものなのか。
「紙面にも名前が出ていたように、この感謝広告は『台湾傳統基金會』と『台湾櫻花返郷會』という2つの団体が企画しました。前者は親日家で知られた故・李登輝元総統と親しかった台湾の元地方首長がトップを務めています。
問題は後者で、これは日台共同の一般社団法人『日本桜里帰りの会』の台湾における組織名なのです。昭和天皇が台湾でお手植えした桜の苗木などを日本に“里帰り”させることを目的とした団体で、台湾側は李登輝元総統の夫人が名誉会長を務めていますが、日本側の名誉会長は、あの安倍洋子さんなんですよ」(前出・企業家)
安倍洋子氏(93)は、いわずと知れた、安倍晋三前首相(66)の実母である。
「日本桜里帰りの会」の代表を務める外交評論家・加瀬英明氏(84)に確認すると、「そうです。洋子夫人が名誉会長ですよ。台湾側が李登輝元総統の夫人を名誉会長にするというので、日本側も女性がいいだろうと、洋子夫人に就任を依頼しました」と話す。
首相在任時代から、台湾との友好関係を強調してきた安倍前首相。大手紙の政治部記者は、今回の日本から台湾へのワクチン提供に際しても「その繋がりが垣間見えた」と話す。
「日本政府からのアストラゼネカ製ワクチンの無償提供では、安倍前首相がキーマンだったとされています。
日本で、1億2000万回分を調達予定だったアストラゼネカ製の公的接種が中断された際に、ワクチンを台湾側に“相互援助”の一環として提供するように菅義偉首相や麻生太郎財務相を説得したのが安倍前首相でした。
そして、この安倍前首相の動きをどこよりも早く詳細に報じたのが『産経新聞』だったのです」
実際に産経新聞は6月3日にインターネット版で、
《ワクチンの台湾提供、安倍前首相ら動く 中国妨害警戒 日米台が水面下で調整》
と題した記事を掲載している。
前出の台湾の企業家はこうした背景を知って、広告出稿について複雑な心境になったという。企業家が続ける。
「安倍前首相の実母が名誉会長を務める団体が主導して台湾で募金を集め、『安倍前首相がワクチン無償提供で活躍した』と真っ先に報じていた産経新聞だけに単独で感謝広告を出す。
安倍前首相の政治活動に利用するための“マッチポンプ”というか“自作自演”のような動きにも感じられて、気分はよくありません」
産経新聞社に、広告出稿の経緯や、記事との関連性を指摘する声があることへの見解を尋ねたが、「個別の広告案件について出稿経緯などはお答えしておりませんが、ご指摘のような事実はございません」とのみ回答があった。
前出の「日本桜里帰りの会」代表の加瀬氏にも経緯を尋ねたが「広告は台湾側が企画したもので、私(日本側)はタッチしていませんよ。掲載2日前に連絡が来たくらいです」と話す。
菅首相の統制力に陰りが見え、自民党内で安倍前首相が確実に“存在感”を見せ始めている。退陣から約1年、政治活動を活発化して表舞台に登場する機会も増えている。
2に続く
FLASH
7/15(木) 6:05
https://news.yahoo.co.jp/articles/b6d0048a285d6e320cc37fae2299cd1cda6ea7d9