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築地市場の移転が延期され、市場跡地に敷設予定である環状2号線の計画に狂いが生じる可能性が大きくなりました。2020年の「東京オリンピック」
において重要な輸送路のひとつになるこの環状2号線、移転延期でその道路は、そしてオリンピックはどうなってしまうのでしょうか。
築地市場移転延期、そこから狂う「ある計画」
2016年8月31日(水)、東京都の小池百合子都知事は築地市場の豊洲移転について延期することを正式に表明しました。これに関連して、築地市場が移転後の
跡地に通る予定で、現在敷設中である環状2号線の計画がどうなるのか、非常に気になります。
たとえ築地市場移転が中止になっても、つまり現状維持なわけですから、当面の市場機能に問題は生じません。しかし環状2号線は2020年に開催される
「東京オリンピック」において、重要な輸送路になる予定。これが間に合わないと大きな問題です。
都心部の神田佐久間町から水道橋、四谷、新橋などを経由し、臨海副都心部の有明へと至る環状2号線は現在、神田佐久間町~汐留間と豊洲~有明間が開通済み
。そしてオリンピック前に全線開通し、新橋と、晴海地区に予定されているオリンピック選手村や有明地区の競技会場とを結ぶBRT(バス高速輸送システム)が走る予定で、
下記のようなスケジュールになっていました。
2016年11月:築地市場移転
2016年12月:築地市場跡地の地上に暫定道路が開通(片側1車線)
2019年内:BRT開業
2020年:オリンピック直前(数カ月前?)に環状2号線(一部地下・片側2車線)が本開通
2020年7~9月:「東京2020オリンピック・パラリンピック大会」開催
現在、都心部と臨海副都心部を直結する一般道は、混雑の激しい晴海通り(都道304号線)のみ。環状2号線の開通はオリンピック運営をスムーズに行う上で重要です。
しかし、築地市場の跡地を一部地下で通す予定のため、この区間は前述した市場の移転が完了しないと工事にかかれません。
延期半年以上は本開通困難か 中止なら迂回ルートも無し
先に挙げた環状2号線の敷設計画から、築地市場移転延期による影響を逆算してみました。
・移転中止の場合
環状2号線は築地部で途切れたままで機能しません。迂回ルートはありません。
・移転延期が数カ月以内の場合
築地市場の移転時期(今年11月)は、もともと環状2号線の工事に要する期間から逆算されていたため、余裕はほとんどありませんが、それでも数カ月以内の遅れなら、なんとか間に合わせることは可能と推測されます。
・移転延期が半年以上になった場合
現在の建設関係の人手不足などを考えると、本開通をオリンピックへ間に合わせるのは非常に困難になります。ただ、注目すべきは地上の「暫定道路」です。すでにある築地市場南側の道路を利用してとりあえず開通させるもので、本来の予定では、
今年12月にこの暫定道路が開通することになっていました。東京都第一建設事務所によれば「かなりの突貫工事」で、市場移転後わずか1カ月余で工事を完了させる計画だったのです
暫定道路は片側1車線の平面交差になるため、輸送力は限定されますが、本開通が間に合わないとなれば、暫定道路を片側2車線にするなどの対策も不可能ではないでしょう。
BRTに関しても、2019年内から、まずは暫定道路を走らせる予定でした。所要時間が多少増え、直前の開通の場合は習熟度不足も懸念はされますが、運行自体は行えるはずです。
前述のように、「東京オリンピック」開催の数カ月前までに築地市場の移転が完了すれば、不完全ながら環状2号線もBRTも稼働し、多少のトラブルはあっても、今夏の「リオデジャネイロオリンピック」のような泥縄式でなんとかなるでしょう。
日本人は何事もキッチリ予定通りに進まないと気が済みませんが、リオは駆け込みの泥縄で結構うまく行きました。我々もブラジル人を見習って、もう少し楽天的になったほうが精神衛生上、いいかもしれません
今回の築地市場移転延期がもし政治的なパフォーマンスだったとしても、小池知事は「環状2号線はオリンピックまでに通す」という主旨の発言をしていますから、このことに関してそれほど心配する必要はないかもしれません
。もちろん、その政治的パフォーマンスにどれほどの意味があるのかは、また別問題ですが。