岸田首相が表明した「防衛費大増税」が大揺れだ。岸田首相は今後5年間で防衛費を段階的に拡大し、2027年度に現状の約2倍に増額。財源不足分のうち1兆円を増税で確保する方針だ。これに“身内”のはずの自民党議員から「増税するな!」と批判が続出。「増税反対」と言えば聞こえはいいが、だまされてはいけない。そもそも、この騒動自体が“ヤラセ”の可能性があるのだ。
◇ ◇ ◇
〈賃上げマインドを冷やす発言を、このタイミングで発信された総理の真意が理解出来ません〉
岸田首相の増税表明に、こうツイッターで噛みついたのは、高市経済安保相だ。萩生田政調会長は11日、防衛費倍増の原資について「あらゆる選択肢を排除しない。例えば国債もだ」と発言。6日には「(増税話を)統一地方選前に出すのは大きなマイナスだ」とも言っていた。西村経産相も「増税は慎重にあるべき」と牽制してみせた。
何より激しかったのは、9日に開かれた自民党の政調全体会議だ。2時間以上に及んだ会議では、参加した50人超の議員から「このタイミングで増税を言い出すのはおかしい」「唐突すぎる」「増税でなく国債で賄うべき」といったブーイングが続出し、大紛糾。会議終了後に出席議員がメディアの取材に応じ、「増税反対」をぶちまけるのは異様としか言いようがなかった。
「会議終了後、報道対応した松本洋平政調副会長は『会議は基本的に今回の1回限り』『あくまで皆さんの意見表明の場』と説明。1回こっきりの会議で意見表明させたのは、増税に懐疑的な議員のガス抜きに加え、『世間へのアピール』という狙いがあったようだ。メディアの前で『増税反対』を強く打ち出せば、来春の統一地方選へ向け、『我々は国民生活を第一に考えている』というアピールになる」(永田町関係者)
■狙いは「ガス抜き」と「世間へのアピール」
そもそも、周辺諸国を刺激し、軍拡競争になりかねない防衛費倍増が本当に必要なのか否か、議論は尽くされていない。
なのに「防衛費倍増」を大前提にして「増税やむなし」「増税はダメ」とやり合うのは、議論のスリ替えに他ならない。国民の目を本質からそらさせるマヤカシだろう。
「今回の騒動はほとんど“ヤラセ”ですよ」と言うのは、立教大大学院特任教授の金子勝氏(財政学)だ。
「自民党議員は、本当は増税しなくても防衛費増額分を捻出できることを知っているはずです。ポイントは、防衛費増の原資のひとつとして挙げられた『決算剰余金の活用』です。決算剰余金は、年度内に使われず繰り越しもされなかったカネのことで、21年度は1.4兆円でした。一方、純粋な『予算の使い残し』はもっと巨額で、同年度は28.7兆円。政府はやろうと思えばここからいくらでも決算剰余金として防衛費に流用できる。また、もうひとつ原資として挙げた『防衛力強化資金』を年度をまたいで使用できる基金にしたり、100兆円超に膨張した財政投融資特別会計の資金を活用することも可能。そんな実情を知りながら、『増税反対』を叫ぶのはしらじらしい限りです」
政治家が勇ましく声を上げた時ほど、国民は冷静にならなければダメだ。
自民税調案は法人税、たばこ税、復興所得税を活用 防衛増税は24年度から
自民党の税制調査会は防衛増税をヤル気満々だ。11日に非公式会合を開き、防衛費の財源確保策について議論、法人税、たばこ税、東日本大震災後に設けた復興特別所得税を活用することで調整に入った。法人税とたばこ税については2024年度から段階的に増税する方向だ。
法人税は税率を触らず、法人税額に一定割合を上乗せする「付加税方式」を採用する。中小企業については負担軽減策を検討する。
復興特別所得税は所得税額に2.1%を上乗せする時限的な増税措置。年間4000億円規模の税収の一部を防衛に回した上で、37年までとなっている期限を延長する方向だ。
しかし、震災復興のための所得税上乗せ分を防衛に回すことが国民の理解を得られるのか。
岸田首相は「来年度は増税しない」と言っていたが、裏を返せば「再来年度からは増税する」ということだ。
日刊ゲンダイ
12/12(月) 14:10
https://news.yahoo.co.jp/articles/c321d734137c4f1a7b8d442c7e5183f910716f9a
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〈賃上げマインドを冷やす発言を、このタイミングで発信された総理の真意が理解出来ません〉
岸田首相の増税表明に、こうツイッターで噛みついたのは、高市経済安保相だ。萩生田政調会長は11日、防衛費倍増の原資について「あらゆる選択肢を排除しない。例えば国債もだ」と発言。6日には「(増税話を)統一地方選前に出すのは大きなマイナスだ」とも言っていた。西村経産相も「増税は慎重にあるべき」と牽制してみせた。
何より激しかったのは、9日に開かれた自民党の政調全体会議だ。2時間以上に及んだ会議では、参加した50人超の議員から「このタイミングで増税を言い出すのはおかしい」「唐突すぎる」「増税でなく国債で賄うべき」といったブーイングが続出し、大紛糾。会議終了後に出席議員がメディアの取材に応じ、「増税反対」をぶちまけるのは異様としか言いようがなかった。
「会議終了後、報道対応した松本洋平政調副会長は『会議は基本的に今回の1回限り』『あくまで皆さんの意見表明の場』と説明。1回こっきりの会議で意見表明させたのは、増税に懐疑的な議員のガス抜きに加え、『世間へのアピール』という狙いがあったようだ。メディアの前で『増税反対』を強く打ち出せば、来春の統一地方選へ向け、『我々は国民生活を第一に考えている』というアピールになる」(永田町関係者)
■狙いは「ガス抜き」と「世間へのアピール」
そもそも、周辺諸国を刺激し、軍拡競争になりかねない防衛費倍増が本当に必要なのか否か、議論は尽くされていない。
なのに「防衛費倍増」を大前提にして「増税やむなし」「増税はダメ」とやり合うのは、議論のスリ替えに他ならない。国民の目を本質からそらさせるマヤカシだろう。
「今回の騒動はほとんど“ヤラセ”ですよ」と言うのは、立教大大学院特任教授の金子勝氏(財政学)だ。
「自民党議員は、本当は増税しなくても防衛費増額分を捻出できることを知っているはずです。ポイントは、防衛費増の原資のひとつとして挙げられた『決算剰余金の活用』です。決算剰余金は、年度内に使われず繰り越しもされなかったカネのことで、21年度は1.4兆円でした。一方、純粋な『予算の使い残し』はもっと巨額で、同年度は28.7兆円。政府はやろうと思えばここからいくらでも決算剰余金として防衛費に流用できる。また、もうひとつ原資として挙げた『防衛力強化資金』を年度をまたいで使用できる基金にしたり、100兆円超に膨張した財政投融資特別会計の資金を活用することも可能。そんな実情を知りながら、『増税反対』を叫ぶのはしらじらしい限りです」
政治家が勇ましく声を上げた時ほど、国民は冷静にならなければダメだ。
自民税調案は法人税、たばこ税、復興所得税を活用 防衛増税は24年度から
自民党の税制調査会は防衛増税をヤル気満々だ。11日に非公式会合を開き、防衛費の財源確保策について議論、法人税、たばこ税、東日本大震災後に設けた復興特別所得税を活用することで調整に入った。法人税とたばこ税については2024年度から段階的に増税する方向だ。
法人税は税率を触らず、法人税額に一定割合を上乗せする「付加税方式」を採用する。中小企業については負担軽減策を検討する。
復興特別所得税は所得税額に2.1%を上乗せする時限的な増税措置。年間4000億円規模の税収の一部を防衛に回した上で、37年までとなっている期限を延長する方向だ。
しかし、震災復興のための所得税上乗せ分を防衛に回すことが国民の理解を得られるのか。
岸田首相は「来年度は増税しない」と言っていたが、裏を返せば「再来年度からは増税する」ということだ。
日刊ゲンダイ
12/12(月) 14:10
https://news.yahoo.co.jp/articles/c321d734137c4f1a7b8d442c7e5183f910716f9a