国会会期末が10日に迫り、旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の被害者救済法案をめぐる協議が大詰めを迎えている。自民党から5日に示された修正案はほぼゼロ回答で、公明党への「配慮」がプンプン。骨抜きの救済法を成立させ、旧統一教会問題をフェードアウトさせようとする政府・与党の思惑が露骨すぎる。
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政府法案では法人が寄付を勧誘する際、寄付が必要不可欠と告げ、困惑させた場合でなければ取り消せない。野党側は「必要不可欠」と「困惑」の削除や文言変更を求めている。
また、野党側は自由な意思を抑圧したり、生活の維持を困難にしたりしないよう定める寄付勧誘の「配慮義務」について「禁止規定」にできると訴えている。最低限、これらを修正しなければ、ほとんど被害者救済の役に立たないからだ。
自民党の修正案は、法人が配慮義務を怠った場合には政府が「勧告」、従わなければ法人名を「公表」できるようにし、施行後3年としていた見直し期間を2年に短縮した。被害者救済に向け前進したのか。全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)の川井康雄弁護士が言う。
「勧告については、個人の権利保護に著しい支障が生じていると『明らかに認められる場合』という条件が付されているため、実際に勧告がなされるのはかなりひどい事案に限られてしまう。抑止力も不足しているし、裁判実務ではほとんど役に立たない。被害者救済としても不十分と言わざるを得ません。また、『困惑』や『必要不可欠』の文言に修正が入らなかったのは大いに問題です」 自民党が「配慮義務」を「禁止事項」に改めず、寄付規制に実効性を持たせようとしないのは、それこそ創価学会が母体である公明党への「配慮」だ。
「救済法案について公明党は一貫して寄付規制強化に激しく抵抗してきた。自民は公明の顔色をうかがいながら法案を作成し、修正もその延長線上にある。実効性のある修正は期待できません」(永田町関係者)
世間の批判を恐れたのか、公明党はここへきて、修正をめぐって“やってる感”を演出。石井啓一幹事長は2日、「骨格に関わらない部分的な修正はあり得る」と口火を切り、4日のNHK日曜討論では高木陽介政調会長が「見直し規定などは議論の余地がある」と発言。
この日の公明新聞は1面トップに石井幹事長のインタビューを掲載し、「『公明党が後ろ向き』などという批判は当たりません」としらじらしく強調していた。
自民党は公明党が傷つかない範囲の修正にとどめ、今国会で救済法成立を強行する構えだ。年内に旧統一教会問題のケリをつけ、年明けの通常国会に引きずりたくないからだ。
立憲民主党の長妻昭政調会長は日曜討論で「ひとえに総理大臣の判断にかかっている」と訴えた。岸田首相が「配慮」すべきは被害者か、公明党か。
日刊ゲンダイ
12/7(水) 9:06配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/74e7c4d43a41ad02f880fcce099d64116bf83fc2