NTTから高額接待を受けデジタル庁幹部が処分された問題で、同席していた平井卓也デジタル相は28日の閣議後会見で、週刊文春からの取材をきっかけに同社に飲食代を支払ったことを明らかにした。NTTとの会食は「割り勘」ではなく、事実上の接待と言えるが、国民の疑惑を招く行為を禁じる大臣規範に抵触しないとの認識を示した。(坂田奈央)
平井氏はこの問題が発覚した6月時点では、会食が大臣規範に抵触しない理由として「割り勘」を挙げていた。実際の支払いが会食から半年以上がたった文春の取材後だったことを認めたことで、従来の説明と食い違う形となった。だが、今度はNTTと利害関係にないことを規範に触れない理由として強調し、「支払っている、いないということはまず関係ない」と強弁した。
この問題では、同席していたデジタル庁の赤石浩一デジタル審議官が24日付で減給処分を受けた。平井氏は処分公表時には、自身の同席や大臣給与1カ月分の自主返納を明らかにしていなかったが、「あえて公にしなくてもよかろうと思っていた」と述べた。給与を返納する理由については、赤石氏が処分されたことへの「一定の責任」とした。
平井氏が参加したNTTの接待は昨年10月と12月に行われ、赤石氏のほかに向井治紀同庁参与も同席。平井氏は文春から取材があった6月21日に3人分の飲食、タクシー、土産の代金22万円をNTTに支払った。向井氏についても、今月1日付でいったん退職してから参与に就いており、退職前の行為を理由に処分がなかった。
◆「抵触しない」の判断は平井氏自身
NTTからの接待について、平井卓也デジタル相は大臣規範に触れる行為ではないと主張する。だが、規範の条文は書きぶりが曖昧で、抵触するかどうかの判断も大臣ら当事者が行うため、その抜け穴ぶりが改めて浮き彫りとなった。
大臣ら政務三役を対象にした大臣規範は、政治への国民の信頼確保などを目的に2001年に閣議決定された。「関係業者」からの接待を一応は禁じるものの、条文は「供応接待を受けること、職務に関連して贈物(おくりもの)や便宜供与を受けること等であって国民の疑惑を招くような行為をしてはならない」と分かりにくい。政府関係者は「接待の定義もなく、『等』が入ることで恣意的しいてきな解釈の余地は残る」と指摘する。
平井氏は28日の会見で、規範に触れないと判断したのは自分自身だと説明。NTTグループ全体では国のデジタル事業の受注実績も豊富だが、NTT自体が事業を行わない持ち株会社であることを理由に、利害関係のある「関係業者」に当たらないと主張する。接待に同席した赤石浩一デジタル審議官は処分を受けたが、平井氏は割り勘だったかどうかも「関係ない」とした。
不透明な「事後割り勘」が明らかになり、大臣規範の「国民の疑惑を招く行為」に当たらないかとも会見では問われたが、「疑念を招くかは人によって違うと思う」などと開き直った。
NTTの接待問題を巡っては、総務省の大臣経験者らへの高額接待が明らかとなり、今回の平井氏と同様に元閣僚らは自らの判断で大臣規範に触れないと主張。これを追認するように、政府は3月、規範に触れるかは大臣らが自分で判断すべきだとする答弁書を閣議決定した。(森本智之)
東京新聞
2021年9月28日 21時05分
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