4日に投開票された東京都議選で、自民党が前回よりも議席を伸ばす見通しとなった一方、共産党と立憲民主党が存在感を示した背景の一つには、両党が新型コロナウイルス禍での東京五輪・パラリンピック大会開催に中止を訴えたことがある。政府は選挙戦終盤で「無観客」案に言及したが、開催そのものへの有権者の不安は拭えなかった。(原昌志)
「有権者の危機感を肌で感じる」
選挙戦終盤、共産陣営関係者は東京大会の「中止」の訴えに、手応えを語っていた。
本紙が5月下旬と6月の告示直後に行った都民意識調査では、中止が最多を占めた。6月調査は割合こそ低下したものの、まだ4割が中止を求めた。各種世論調査でも中止や延期を少なくない人が選択していた。
政府は観客を「上限1万人」などとする方針にこだわっていたが、都内で感染再拡大傾向がはっきりする中で、感染症の専門家らの懸念は収まらないまま。都議会第1党の都民ファーストの会陣営も「無観客」を前面に出して、自公との対抗軸としようとしていた。自民候補からは「本音は無観客がいい」との声が漏れていた。
当初、公約には触れずに争点化回避を狙った自民、公明も、終盤になって菅義偉首相や山口那津男公明党代表が相次いで「無観客」に言及。沈静化を狙った形だが、感染拡大を防げるのかなどリスク評価がはっきりしないままで、場当たり的な印象が強かった。
中止・延期の主張で共感を集めた共産、立民は都議会での発言力が高まる見通しだ。党派を超えて議論を深め、都民の納得がいく結論を導き出せるのか。目立った発言を控えている小池百合子知事を含めて、都議会の意思が問われる。
東京新聞
2021年07月04日 22時55分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/114606