東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が辞意を表明する見通しについて、海外メディアも相次いで報じた。
欧米、日本の男女格差指数の低迷を指摘
米スポーツ専門局ESPNは日本からの報道を受け、ウェブサイトで速報した。「森喜朗(元首相)の長かった物語は結末が近いようだ」との書き出しから問題の経緯をまとめた上で、「これは新型コロナウイルス流行中の五輪開催という危険な選択をめぐる新たな問題ということにとどまらない」と指摘。世界経済フォーラムのジェンダーギャップ(男女格差)指数で日本が153カ国中121位と低迷していることも紹介し、「森氏の発言は多方面から激しい怒りを買うとともに、日本の政界や重役への女性進出が他国に比べ、いかに遅れているかを浮き彫りにした」と伝えた。
フランスのルモンド紙は東京特派員発の記事で報じた。当初、菅義偉首相や経団連のトップは森氏に辞任を求めなかったが、世論の批判が五輪のスポンサー企業に向けられたことで追い込まれたと指摘した。また、森氏の後任として名前が挙がった川淵三郎氏について「極右に近い立場を取ることで知られている」と解説した。
ロイター通信は、新型コロナウイルスの感染拡大によって東京五輪の開催に懸念が広がっていることに言及し、「森氏の辞任は、五輪の実行可能性について新たな疑念を呼び起こすだろう」と報じている。
中国、国営メディアが相次いで報道
中国では旧正月(12日)前日ということもあって森氏の辞意について手厚く報じられてはいないが、通信社の中国新聞社や中国中央テレビ(CCTV)など国営メディアが相次いでインターネット上で伝えた。
中国新聞社は森氏の発言を紹介した上で「スポンサー企業やアスリート、ボランティアから強い不満や批判の声が出ていた」と報道。CCTVは、日本の世論調査で6割が森氏が職にふさわしくないと答えたと紹介している。
中国は来年2月に北京冬季五輪を控え、着々と準備を進めている。
韓国「組織委が混乱に陥る可能性」
韓国の聯合ニュースは11日、森氏の辞任によって、東京五輪の準備に支障が出ることが予想されると指摘し、組織委員会が混乱に陥る可能性があるとも報じた。聯合ニュースは、森氏が謝罪したにもかかわらず、退陣を求める日本国内の声が大きくなったとして、海外を含めた反発で準備に影響が出るという憂慮から、森氏が辞任を決意したとみられると分析した。
中央日報(電子版)は「女性を卑下した森会長、結局辞任する」との見出しで報道。留任に傾いていた日本国内の雰囲気を変えたきっかけとして、国際オリンピック委員会(IOC)による9日の声明の影響を挙げた。
ロシア「世論から激しい批判を受けていた」
一部のロシアメディアも日本の報道を引用する形で速報を伝えた。タス通信は「自身の性差別発言を巡るスキャンダルで辞任する」と報じ、政治家やスポンサー企業から批判が相次いでいたことや、ボランティアや聖火ランナーの間で辞退の動きが続いていることを背景として挙げている。露紙コメルサントは「世論から激しい批判を受けていた」ことなどが理由と指摘した。【ロサンゼルス福永方人、北京・米村耕一、ソウル渋江千春、モスクワ前谷宏、パリ久野華代】
毎日新聞
2021年2月11日 18時48分
https://mainichi.jp/articles/20210211/k00/00m/040/189000c