7月12日投開票の鹿児島県知事選を巡り、県内の複数の首長が「三反園訓知事から電話があり、地元が県に要望した事業を挙げながら、三反園氏への票の取りまとめなど選挙協力を依頼された」と南日本新聞の取材に証言した。公職選挙法は特別職を含む公務員が地位を利用して選挙運動することを禁じている。三反園知事は20日、取材に対し「電話も依頼もしていない」と事実関係を否定した。
証言した首長の1人によると、6月14日昼すぎ、自身の携帯電話に三反園氏から着信があった。三反園氏は知事選情勢について「(この首長の自治体では)半数も取れそうにない」「県内で一番悪い」と厳しい口調でまくし立てたという。
その上で「あなたのところは県の事業も採択している。選挙では結果が数として出るんですよ」と迫り、「(地元の票を)まとめて、今回は協力してください」と求めてきたという。通話は1分ほどだった。
この首長は20日、取材に「知事の立場を前面に出して票を求めるのはおかしい。事前運動にも当たり、圧力をかけられたと感じる。民主主義の根幹が崩れる」と批判。三反園氏が電話や依頼を否定したことには「着信履歴が残っており、知事の発言を記録したメモもある」と述べた。
別の首長も携帯電話に6月、三反園氏から連絡があったと証言。「(地元が)要望した事業はちゃんとやるから」と、暗に知事選への協力を求められたという。この首長は取材に「会話の最後に『(選挙後に)市町村別の得票は分かりますよ』と言われ、驚いた。半ば脅しだ」と話した。
これとは別に、ある首長は三反園氏が1、2年前、県がいったん不採択とした事業を持ち出して、後援会設立を要請してきたと明かす。抗議すると、三反園氏は「今回のことはなかったことにして、黙っていてほしい」と釈明したという。その後、事業は採択された。
公選法に詳しい上脇博之神戸学院大教授(憲法学)は「公共事業をちらつかせた選挙運動が事実なら、公選法(公務員の地位利用による選挙運動禁止)に違反する。法をゆがめた公金の私物化であり、政治的にも極めて問題だ」と指摘した。
南日本新聞
(2020/06/21 08:45)
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