通常国会の会期末を17日に控え、立憲民主党など野党4党は16日、新型コロナウイルス感染症の第2波に備えるため、会期を12月28日まで194日間延長して事実上の通年国会を求めることで一致した。政府・与党は延長せず閉会させる方針。安倍政権では、成立を優先させたい法案が残っていれば会期を延ばしてきた。一方で、野党が会期延長や臨時国会召集を要求しても一向に応じようとせず、ご都合主義的な対応が常態化している。 (妹尾聡太)
菅義偉(すがよしひで)官房長官は十六日の記者会見で「会期は国会が決めることだ。政府としてはコメントを差し控えたい」と話すにとどめた。安倍晋三首相もこれまで国会審議で同様の答弁を重ねている。野党は十七日に大島理森衆院議長に会期延長を申し入れる。
通常国会は国会法で一月召集、会期は百五十日間で延長が一回だけできると定められている。新型コロナ問題のように経済や国民生活に深刻な影響を与える事態が発生した年には、会期を延長するケースが多い。
リーマン・ショック後の二〇〇九年や、一一年の東日本大震災後は、参院で野党が多数を占める「ねじれ国会」だったこともあり、与野党の合意で会期が延長された。
菅氏も、自民党が野党だった一一年五月には自身のブログで「震災の影響が依然として広がっている今、国会を閉じるべきではありません」と主張。自民、民主両党の中堅若手グループで会期延長の署名集めに奔走した。
一二年末に第二次安倍政権が発足し、与党の議席数が安定して以降、会期が延長されたのは一五、一八年の二度。一五年は安全保障関連法、一八年はカジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備法など政権が推し進める法律の成立を押し通すためだった。
野党は、通常国会が会期延長されない場合、内閣に臨時国会の早期召集を求める構えだ。憲法五三条は、衆参両院いずれかの総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は召集を決定しなければならないと規定。自民党は一二年策定の改憲草案で「要求があった日から二十日以内」と召集期日を明確化し、憲法規定を重んじる姿勢も示していた。
だが一五年に野党が憲法に基づき臨時国会召集を求めた際は、安倍政権は応じなかった。一七年六月の召集要求では、約三カ月後の九月二十八日に臨時国会を開いたが、首相はその日に衆院を解散した。
生活直結の法案、審議されぬまま
通常国会は、新型コロナウイルス対策をはじめとした国民生活に直結する野党提出の議員立法が審議されないまま、十七日で閉じようとしている。野党は、安倍晋三首相がかかわる問題の追及から逃れようとする政府・与党の姿勢に批判を強めている。
立憲民主、国民民主、共産、日本維新の会、社民の野党五党は四月下旬、新型コロナの影響で減収した事業者の家賃支払いを一年間猶予する法案を衆院に提出した。日本政策金融公庫がいったんオーナーに家賃を払い、猶予期間後に借り主から回収する仕組みなど盛り込んだ。しかし野党案は一度も審議されなかった。
立民、国民、共産、社民の野党四党が提出したセクハラ禁止法案も審議されていない。業務上の地位を利用した、相手の意に反する性的言動を禁じる内容。今月施行の女性活躍・ハラスメント規制法には禁止規定までは明記されず、野党は不十分さを指摘している。
全原発を即時停止させる原発ゼロ基本法案や、違憲の疑いが強い集団的自衛権の行使をできなくする安全保障関連法廃止法案など、過去に野党が共同提出した法案も、与党は審議入りさせなかった。
野党は会期延長で法案審議を求めるほかに、森友・加計学園問題などでも引き続き首相をただす考えだ。立民の辻元清美氏は九日の衆院予算委員会で「心の中では(国会を)早く閉じたいと思っているのでは」と首相に問いかけた。首相は「想像たくましい」と不快感をあらわにした。 (大野暢子)
東京新聞
2020年6月17日 07時11分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/36005
菅義偉(すがよしひで)官房長官は十六日の記者会見で「会期は国会が決めることだ。政府としてはコメントを差し控えたい」と話すにとどめた。安倍晋三首相もこれまで国会審議で同様の答弁を重ねている。野党は十七日に大島理森衆院議長に会期延長を申し入れる。
通常国会は国会法で一月召集、会期は百五十日間で延長が一回だけできると定められている。新型コロナ問題のように経済や国民生活に深刻な影響を与える事態が発生した年には、会期を延長するケースが多い。
リーマン・ショック後の二〇〇九年や、一一年の東日本大震災後は、参院で野党が多数を占める「ねじれ国会」だったこともあり、与野党の合意で会期が延長された。
菅氏も、自民党が野党だった一一年五月には自身のブログで「震災の影響が依然として広がっている今、国会を閉じるべきではありません」と主張。自民、民主両党の中堅若手グループで会期延長の署名集めに奔走した。
一二年末に第二次安倍政権が発足し、与党の議席数が安定して以降、会期が延長されたのは一五、一八年の二度。一五年は安全保障関連法、一八年はカジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備法など政権が推し進める法律の成立を押し通すためだった。
野党は、通常国会が会期延長されない場合、内閣に臨時国会の早期召集を求める構えだ。憲法五三条は、衆参両院いずれかの総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は召集を決定しなければならないと規定。自民党は一二年策定の改憲草案で「要求があった日から二十日以内」と召集期日を明確化し、憲法規定を重んじる姿勢も示していた。
だが一五年に野党が憲法に基づき臨時国会召集を求めた際は、安倍政権は応じなかった。一七年六月の召集要求では、約三カ月後の九月二十八日に臨時国会を開いたが、首相はその日に衆院を解散した。
生活直結の法案、審議されぬまま
通常国会は、新型コロナウイルス対策をはじめとした国民生活に直結する野党提出の議員立法が審議されないまま、十七日で閉じようとしている。野党は、安倍晋三首相がかかわる問題の追及から逃れようとする政府・与党の姿勢に批判を強めている。
立憲民主、国民民主、共産、日本維新の会、社民の野党五党は四月下旬、新型コロナの影響で減収した事業者の家賃支払いを一年間猶予する法案を衆院に提出した。日本政策金融公庫がいったんオーナーに家賃を払い、猶予期間後に借り主から回収する仕組みなど盛り込んだ。しかし野党案は一度も審議されなかった。
立民、国民、共産、社民の野党四党が提出したセクハラ禁止法案も審議されていない。業務上の地位を利用した、相手の意に反する性的言動を禁じる内容。今月施行の女性活躍・ハラスメント規制法には禁止規定までは明記されず、野党は不十分さを指摘している。
全原発を即時停止させる原発ゼロ基本法案や、違憲の疑いが強い集団的自衛権の行使をできなくする安全保障関連法廃止法案など、過去に野党が共同提出した法案も、与党は審議入りさせなかった。
野党は会期延長で法案審議を求めるほかに、森友・加計学園問題などでも引き続き首相をただす考えだ。立民の辻元清美氏は九日の衆院予算委員会で「心の中では(国会を)早く閉じたいと思っているのでは」と首相に問いかけた。首相は「想像たくましい」と不快感をあらわにした。 (大野暢子)
東京新聞
2020年6月17日 07時11分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/36005