北朝鮮が四日に発射した飛翔体に関し、米政府が国連安全保障理事会決議に違反する「弾道ミサイル」だったとの見方を日本側に伝えていたことが九日、分かった。公表した場合、トランプ米大統領が継続の意向を示す米朝交渉の土台が崩れかねないため、発表を保留する考えも伝達した。複数の日米関係筋が明らかにした。
弾道ミサイルだとの見方は、国防総省を中心とした分析結果に基づく。最終結論ではないものの、米側は覆る可能性は低いとの認識を日本側に示唆している。トランプ氏が公式に弾道ミサイルと認めるかどうかが今後の焦点となるが、日本は当分の間、対米配慮の観点から対外的に「分析中」(岩屋毅防衛相)との説明を強いられそうだ。
関係筋によると、米外交当局者は今月上旬、日米協議の席上で、現時点での米政府の分析を踏まえ「北朝鮮が発射したのは弾道ミサイルだった」と説明。発表を保留する理由に関し、米朝交渉に望みをつなぐトランプ氏の姿勢との整合性を図る必要があるからだと解説した。トランプ氏が四日の飛翔体発射後、ツイッターで「(北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は)私との約束を破るつもりはないだろう」と書き込んだことが発表保留の判断に大きく影響したという。
飛翔体を巡り米国のビーガン北朝鮮担当特別代表は八日、東京で外務省の金杉憲治アジア大洋州局長と協議。「飛翔体は弾道ミサイル」とする米側の見方は、この協議でも取り上げられたもようだ。米朝非核化交渉で金氏は、核・ミサイル実験の凍結をトランプ氏に約束している。弾道ミサイルであれば、金氏はトランプ氏との信頼関係を損ねたことになる。
東京新聞
2019年5月10日 朝刊
https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201905/CK2019051002000155.html