厚生労働省が想定する今後の社会保障改革のスケジュールが判明した。当面は公的年金の増える施策などを打ち出し、「安心」を強調するが、2020年度からは国民に不人気な「負担増」の議論を本格化させる。25年には団塊の世代(1947〜49年生まれ)が全員75歳以上の後期高齢者となる、「2025年問題」に向けた対応を加速したい考えだ。
安倍晋三首相が打ち出している「全世代型社会保障への転換」に向け、厚労省は19年末をめどに年金制度改革案や高齢者雇用制度の見直し策などの検討を進めている。
公的年金については、受給開始時期を70歳以降に遅らせることで受給額を多くできるようにする。また、国民年金より受給額の多い厚生年金に入れるパート労働者らの対象も増やす。高齢者雇用では、希望すれば働き続けられる年齢を現在の「65歳」から「70歳」に引き上げたい考えだ。
厚労省が当面、大きな負担増に踏み込まないのは、今夏に参院選があることに加え、後期高齢者の増加がそれほど大きくない事情がある。19〜21年度の増加率は0.5〜2.9%で推移する見込みだが、22〜24年の伸び率は3.9〜4.2%と見込まれる。22年から団塊の世代が後期高齢者入りするからだ。
このため、厚労省は20年6月にまとめる「骨太の方針」で、負担増につながる政策の方向性を提示。20年末をめどに具体策を取りまとめ、21年の通常国会には国民の「痛み」を伴う法案を提出したい考えだ。
今のところ、厚労省の念頭にあるのは医療保険制度の見直しだ。主な論点は、後期高齢者の病院窓口での自己負担(原則1割)の2割への引き上げ。また、がん免疫治療薬「オプジーボ」など超高額薬の影響で薬剤費の伸びが高くなっていることを踏まえ、公的医療保険の使える薬の範囲の見直しも議論になりそうだ。保険の使えない薬が多くなれば、それだけ自己負担も増える。
ただ、参院選の結果次第では想定通りに進まない可能性がある。厚労省幹部は「政権が打撃を受ければ負担増を持ち出せなくなる」と指摘する。【阿部亮介】
毎日新聞
2019年3月24日 07時00分
https://mainichi.jp/articles/20190323/k00/00m/040/346000c.amp
安倍晋三首相が打ち出している「全世代型社会保障への転換」に向け、厚労省は19年末をめどに年金制度改革案や高齢者雇用制度の見直し策などの検討を進めている。
公的年金については、受給開始時期を70歳以降に遅らせることで受給額を多くできるようにする。また、国民年金より受給額の多い厚生年金に入れるパート労働者らの対象も増やす。高齢者雇用では、希望すれば働き続けられる年齢を現在の「65歳」から「70歳」に引き上げたい考えだ。
厚労省が当面、大きな負担増に踏み込まないのは、今夏に参院選があることに加え、後期高齢者の増加がそれほど大きくない事情がある。19〜21年度の増加率は0.5〜2.9%で推移する見込みだが、22〜24年の伸び率は3.9〜4.2%と見込まれる。22年から団塊の世代が後期高齢者入りするからだ。
このため、厚労省は20年6月にまとめる「骨太の方針」で、負担増につながる政策の方向性を提示。20年末をめどに具体策を取りまとめ、21年の通常国会には国民の「痛み」を伴う法案を提出したい考えだ。
今のところ、厚労省の念頭にあるのは医療保険制度の見直しだ。主な論点は、後期高齢者の病院窓口での自己負担(原則1割)の2割への引き上げ。また、がん免疫治療薬「オプジーボ」など超高額薬の影響で薬剤費の伸びが高くなっていることを踏まえ、公的医療保険の使える薬の範囲の見直しも議論になりそうだ。保険の使えない薬が多くなれば、それだけ自己負担も増える。
ただ、参院選の結果次第では想定通りに進まない可能性がある。厚労省幹部は「政権が打撃を受ければ負担増を持ち出せなくなる」と指摘する。【阿部亮介】
毎日新聞
2019年3月24日 07時00分
https://mainichi.jp/articles/20190323/k00/00m/040/346000c.amp