資料「平成27年度国民経済計算年次推計(平成23年基準改定値)(フロー論)ポイント」
アベノミクス演出に大きく貢献したGDP算出方法の変更についてお話しします。
2016年12月8日、内閣府はGDPの算出方法を変更し、それに伴い、94年以降のGDPをすべて改定して公表しました。改定前の名目GDPの史上最高額は97年度であり、15年度とは約20兆円も差がありました。ところが、改定後だと、97年度と15年度の差は0.9兆円となり、ほとんど差がなくなりました。歴史が変わってしまったと言ってよいでしょう。
この改定は表向き、最新の国際的GDP算出基準である「2008SNA」への対応が強調されました。この基準だと、研究開発費等が上乗せされるので、毎年のGDPがだいたい20兆円程度カサ上げされます。しかし、本当に重要なのはそこではありません。この「2008SNA」とは全く関係のない「その他」の部分で大きな数字の調整がされているのです。
改定前後で差額を比較すると、@「2008SNA」対応によるものA「その他」によるもの――の2つに大別することができますが、Aに対応する差額を抜き出すと、異常なことになっています。アベノミクス以降“のみ”大きくカサ上げされているのです。アベノミクス以降の平均値を出すと5.6兆円もカサ上げされています。ところが、それ以外の年度はほぼ全部マイナスであり、特に90年代は完全に全部マイナスです。平均値を出すとマイナス3.8兆円の「カサ下げ」になっています。つまり、「その他」の部分だけで、アベノミクス以降と90年代では平均して約10兆円も差がついていることになります。
このように、名目GDPが高かった90年代をカサ下げし、アベノミクス以降を思いっきりカサ上げしたことにより、「15年度の名目GDPが97年度にほぼ追いつく」という信じられない現象が起きたのです。
そして、16年度の名目GDPはめでたく史上最高値を更新し、現在も日本のGDPは史上最高値を更新中――という状況になっています。
私はこの「その他」によってアベノミクス以降のみ大きくカサ上げされ、逆に90年代は大きくカサ下げされる現象を「ソノタノミクス」と名付けました。この「ソノタノミクス」でカサ上げされた数字ですが、改定前後の名目最終消費支出の差額と比較してみると、アベノミクス以降のみ、3年度連続で一致します。つまり、「ソノタノミクス」により、アベノミクスで最も失敗した国内消費の数字を修正しようとしたのでしょう。しかし、前回も指摘した通り、これほどのインチキをしても、国内実質消費は「3年連続減少」「4年前を下回る」という悲惨な「結果」を残しているのです。
次回はソノタノミクスについてより詳しくお話しします。=つづく
日刊ゲンダイ
19/03/16 06:00
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