2回目の米朝首脳会談が迫り、安倍首相がまたぞろ北朝鮮による拉致問題の解決をアピールしている。
20日にトランプ大統領と約30分間、電話会談。その3分の2を拉致問題に費やしたとか、トランプが「シンゾーの問題は私の問題だ」と繰り返し、「絶対、シンゾーの思いは伝える。約束する」と協力を快諾したとも報じられている。安倍首相が「この内閣で必ず解決する」とブチ上げてから6年あまり。安倍首相に事態の進展を期待する国民がいるのか。拉致被害者の家族会にすら見限られたようなありさまだ。
家族会らが17日に発表した金正恩朝鮮労働党委員長宛ての「全拉致被害者の即時一括帰国を決断していただきたい」と題したメッセージは強烈だった。「全拉致被害者の即時一括帰国が実現すれば、国交正常化に反対する意思はない」と従来の姿勢を強調し、「帰国した被害者から秘密を聞き出さない」との一文も盛り込んだ。内容もさることながら、安倍首相の頭越しに金正恩に直接メッセージを送るのは前例がない。
「安倍首相は掛け声こそ勇ましいものの、問題解決の糸口はサッパリ見えない。家族会の高齢化が進み、安倍政権にピッタリ寄り添ったままでいいのか、信頼しきったままでいいのか、という意見が広がってきていました」(野党関係者)
それも無理はない。生存する被害者をガン無視した疑いも強まっている。15日に共同通信が拉致被害者の田中実さん(失踪当時28)と特定失踪者の金田龍光さん(同26)が妻子とともに平壌で暮らしていると報道。日朝がストックホルム合意を交わした2014年5月より前に、その情報は伝えられていたという。国会で質問された安倍首相は「今後の対応に支障を来す恐れがあり、コメントを差し控える」と常套句でスットボケた。
拉致問題に詳しい国際ジャーナリストの太刀川正樹氏は言う。
「ストックホルム合意に基づく拉致被害者の再調査でも、北朝鮮側が複数の生存者情報を提示し、2人が含まれていたといいます。ところが、安倍首相が救出を訴える象徴的な存在の横田めぐみさんは含まれておらず、死亡という従来の結果が覆らなかったため、安倍政権は再調査報告書の受け取りを拒んだのです」
悲痛な家族の思いを政権浮揚に利用する安倍首相が政権にとどまる限り、拉致問題解決は見通せない。
日刊ゲンダイ
2019/02/24
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/248173/