拉致問題を理由に国が朝鮮学校を高校無償化制度から除外し、自治体の補助金支給が相次いで打ち切られている問題で、元文部科学事務次官の前川喜平氏が16日、横浜市内で講演し、「国や自治体が率先して差別を行い、国民の差別感情を助長している。官製ヘイトだ」と批判。露骨な差別政策がまかり通る現状について「大きな政治の力が働いており、有権者が政治を変えなければならない」と呼び掛けた。
県内では外国人学校のうち神奈川朝鮮中高級学校のみ授業料無償化制度が適用されず、県は同校を含む5校に通う児童・生徒への学費補助を2016年度以降、停止している。
黒岩祐治知事は教科書に拉致問題の記載がないことを理由に挙げ「県民の理解が得られない」とするが、前川氏は「まったく理由にならず理不尽。県民の差別意識をなくすべきなのに追認し、自ら差別を行いヘイトスピーチを助長している」と非難。「『県民の理解』というひきょうな言い分を許してはならない。知事や議会、政治の世界を変えなければならず、選挙権を持つ有権者である日本人が理解を広める必要がある」と訴えた。
前川氏は子どもの学ぶ権利は国籍・民族に関係なく憲法や国際条約で等しく保障されていると強調。高校無償化の制度設計に関わった立場から「当初は朝鮮学校も対象に含まれていた。教育と無関係の拉致や核ミサイル問題を絡めるのは朝鮮学校を狙い撃ちするもので法の下の平等に反する」と指摘。背景に安倍晋三政権が強める自国民中心主義、歴史修正主義の政治があると警鐘を鳴らした。
講演会は市民団体・かながわ朝鮮女性と連帯する会などの主催で約250人が参加した。
神奈川新聞
2019/02/17 02:00
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