毎月勤労統計の調査方法や基準変更で賃金伸び率が過大になった問題で、安倍晋三首相と菅義偉(すがよしひで)官房長官は十三日の衆院予算委員会で、厚生労働省が同統計のあり方を話し合う有識者検討会を設けた二〇一五年当時、「首相秘書官が厚労省職員に調査方法などについて問題意識を伝えていた」と明らかにした。検討会では変更に慎重意見が多かったが、厚労省は変更方針を固めた。学識者は「厚労省側が官邸の圧力を感じた可能性は否定できない」とみている。 (井上靖史)
政府統計の信頼性確保をただした自民党の笹川博義氏に、菅氏は「あらためて官邸全体を調べた。当時、首相秘書官が厚労省の担当者から説明を受けた際、実態を適切に表すための改善の可能性などについて、問題意識を伝えたことはあった」などと答えた。
これを受け、立憲民主党会派の大串博志氏は「首相秘書官が指摘するのは簡単なことではない。見直しに大きな(政治的)力が働いたことは否定できないのではないか」と首相に迫った。首相は秘書官の厚労省職員への指摘を認めた上で「一五年は平和安全法制(安全保障関連法の策定)が最大の関心事。そこで統計でサンプル入れ替えるとか、私が関心を示すはずない」と自身の指示を否定した。
安倍、菅両氏は「調査方法の見直しは統計委員会をはじめとする専門家の意見を経て統計的な観点から行われた」と強調。有識者検討会の議論を踏まえなかった点の説明はなかった。
毎月勤労統計は、サンプル調査を続けるうちに廃業する企業などが抜けるため徐々に平均賃金が高くなり、サンプルを入れ替えると下がりやすい。入れ替え前後の差を解消するため、厚労省は一五年、有識者検討会で入れ替えペースや数の変更を検討したが、調査する都道府県の負担が増すため変更に慎重だった。だが厚労省は変更方針を固め、一七年に総務省統計委員会の承認を受けた。
一八年一月から、調査方法の変更や他の基準変更も重なって賃金の伸び率は過大となり、野党は「アベノミクス偽装」と追及。検討会委員の一人は本紙に「官邸か菅長官かがそれまでの調査方法に怒っている、と厚労省職員が強く意識していた」と証言している。
日本大の岩井奉信(ともあき)教授(政治学)は「官邸主導で中央省庁の幹部人事を一元管理する内閣人事局が一四年にでき、役所に対するグリップは強い。官僚が官邸の圧力を感じて、忖度(そんたく)をした可能性は否定できない」と話している。
政府統計の信頼性確保をただした自民党の笹川博義氏に、菅氏は「あらためて官邸全体を調べた。当時、首相秘書官が厚労省の担当者から説明を受けた際、実態を適切に表すための改善の可能性などについて、問題意識を伝えたことはあった」などと答えた。
これを受け、立憲民主党会派の大串博志氏は「首相秘書官が指摘するのは簡単なことではない。見直しに大きな(政治的)力が働いたことは否定できないのではないか」と首相に迫った。首相は秘書官の厚労省職員への指摘を認めた上で「一五年は平和安全法制(安全保障関連法の策定)が最大の関心事。そこで統計でサンプル入れ替えるとか、私が関心を示すはずない」と自身の指示を否定した。
安倍、菅両氏は「調査方法の見直しは統計委員会をはじめとする専門家の意見を経て統計的な観点から行われた」と強調。有識者検討会の議論を踏まえなかった点の説明はなかった。
毎月勤労統計は、サンプル調査を続けるうちに廃業する企業などが抜けるため徐々に平均賃金が高くなり、サンプルを入れ替えると下がりやすい。入れ替え前後の差を解消するため、厚労省は一五年、有識者検討会で入れ替えペースや数の変更を検討したが、調査する都道府県の負担が増すため変更に慎重だった。だが厚労省は変更方針を固め、一七年に総務省統計委員会の承認を受けた。
一八年一月から、調査方法の変更や他の基準変更も重なって賃金の伸び率は過大となり、野党は「アベノミクス偽装」と追及。検討会委員の一人は本紙に「官邸か菅長官かがそれまでの調査方法に怒っている、と厚労省職員が強く意識していた」と証言している。
日本大の岩井奉信(ともあき)教授(政治学)は「官邸主導で中央省庁の幹部人事を一元管理する内閣人事局が一四年にでき、役所に対するグリップは強い。官僚が官邸の圧力を感じて、忖度(そんたく)をした可能性は否定できない」と話している。