北方領土返還要求全国大会(政府や民間団体など主催)が「北方領土の日」の7日、東京都内で開かれた。大会では「(日露の)平和条約締結に向けた交渉を後押しするとともに、北方領土問題の解決を目指す」とのアピールを採択したが、北方領土を巡る表現で例年使用してきた「不法に占拠され」との文言は盛り込まなかった。ロシアが領土の主権を巡る主張を強めていることから、安倍晋三首相が進展に強い意欲を示す日露交渉に影響を与えないよう配慮したとみられる。
アピールは、北方領土を「わが国固有の領土」とし「北方四島の返還実現」を目指す方針は維持した。しかし、4島が日ソ中立条約に反して不当に占領されたとの政府見解に基づく「不法占拠」との言葉は使わなかった。また、従来の「解決がこれ以上長引くことを断じて許すわけにはいかない」との表現も回避。「北方四島の早期返還の実現を目指し行動を推し進める」としてきた具体的な活動方針についての記述も「北方領土問題の解決を目指し行動を推し進める」との表現にとどめた。
首相は大会で「戦後73年以上残された課題の解決は容易ではないがやりとげなければならない」と強調。これまで「北方四島の帰属問題を解決して平和条約を締結する」としてきた基本方針について「領土問題を解決して平和条約を締結する」との表現に替え、「相互に受け入れ可能な解決策を見いだすための共同作業を力強く進める」と述べた。
政府は「平和条約締結後に歯舞群島と色丹島を引き渡す」とした1956年の日ソ共同宣言を基礎とし、両島の返還と共同経済活動などを併せた「2島プラスアルファ」での決着を模索している。しかし、ロシア側は早期の合意には慎重姿勢を示し、交渉の先行きは見通せていない。アピールの表現や首相が発言のトーンを変えたのは、ロシアを刺激して交渉に応じない「口実」を与えることを懸念したためとみられる。【川辺和将】
毎日新聞
2019年2月7日 18時48分
https://mainichi.jp/senkyo/articles/20190207/k00/00m/010/192000c