地元関係者によると、環境省の計画では、南相馬市沿岸部の仮置き場に保管している汚染土約千立方メートルを異物を取り除くなどした後に使う。平均放射能濃度は一キログラム当たり七七〇ベクレル程度で特別な処分が必要な指定廃棄物(同八〇〇〇ベクレル)より低いとされる。常磐道浪江−南相馬インターチェンジ(IC)間で一部区間の拡幅部分の盛り土にし表面を汚染されていない土で覆う。
環境省は昨年十二月十四日の市議会全員協議会で、盛り土に使うことを「実証事業」として説明した。同二十六日には事業候補地の同市小高区羽倉(はのくら)地区の相良(さがら)繁広区長(67)に、住民説明会開催の申し入れをした。
本紙の取材に相良区長は「区内にある仮置き場の汚染土が、まだ中間貯蔵施設に搬出されていないのに、新たな汚染土を受け入れるわけにはいかない。候補地の周りに農地があり、大雨などで汚染土の流出が心配だ」と話した。今月三日には住民の緊急役員会を開き、環境省と交渉しない意思を確認するという。
計画について、環境省で担当する山田浩司参事官補佐は「地元に正式に話していないので、お答えできない」としている。
汚染土利用を巡っては、南相馬市の仮置き場で二〇一七年五月から盛り土をつくり、周辺の放射線量や浸透水の放射能濃度を測定した。放射線量の高い飯舘(いいたて)村長泥(ながどろ)地区では一八年十二月から、汚染土で園芸作物を栽培し、放射性セシウムの移行状況などを調べている。今後、盛り土の造成や露地栽培をする。二本松市では市道の盛り土工事に使う実証事業を計画したが、住民の反対で頓挫している。
◆利用拡大の突破口か
<伴英幸・原子力資料情報室共同代表の話> 汚染濃度が低いからといって、汚染土を公共事業に使うのは筋違い。中間貯蔵施設で30年間きちんと管理すべきだ。最初は汚染濃度が低いものを使い、使える土を増やすため、最終的には指定廃棄物すれすれの8000ベクレル以下まで持っていくのではないか。今回の計画はその突破口になる恐れがある。
◆既成事実の積み上げ
<清水晶紀・福島大准教授(行政法・環境法)の話> 汚染土は中間貯蔵施設に搬入するのが原則。それを道路の盛り土に使うというのは、政府が説明してきた中間貯蔵施設に関する制度設計を、根底から覆す行為だ。一度埋めたものを掘り返すとは思えず、既成事実を積み上げようとしているとしか思えない。
東京新聞
2019年2月2日 朝刊
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201902/CK2019020202000136.html

