ジャーナリストの田原総一朗氏は、安倍内閣の延長を危惧する。
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第4次安倍改造内閣がスタートしたが、安倍内閣はこれから3年で終わる。ピリオドが明確な場合は、歴史的に見てレームダックになる確率が高い。中国の習近平国家主席やロシアのプーチン大統領は、いずれも任期を撤廃・延長し、世界には任期の延長を図る権力者が少なくない。だが、安倍内閣の延長はありえない。
レームダック化阻止のための策を懸命に考えている自民党幹部がどれだけいるか。きわめて少ないのではないか、と私は見ている。幹部たちのほとんどが安倍首相のイエスマンになってしまっているからである。
たとえば、森友・加計疑惑で、国民の7割以上が問題ありだとしている。そして、当然ながら自民党の議員たちも、問題ありだと捉えているはずである。だが、自民党議員からは、問題ありだという声がまるで出てこない。安倍首相のご機嫌を損ねることを何よりも恐れているためだ。とすれば、幹部たちも含めて、この国のために何をすべきか、何をすべきでないのかということを真剣に考えていない、と捉えざるを得ない。
レームダックに陥らないために、安倍首相が何としてもやるべきは、国民が納得できる新しい経済政策を打ち出すことだ。国民の多くは、アベノミクスは行き詰まりだと感じている。先進国では最悪の借金財政で、しかも日銀は出口戦略らしいものを打ち出せていない。そして、来年10月には、消費税を2%上げることになっている。もしも、来年の参議院選挙までに、国民が納得できる経済政策を打ち出せないと、参院選で自民党が負けるおそれがある。
野党はチャンスだと捉えているだろう。それに、沖縄の県知事選で自民・公明党が推した佐喜真淳氏を玉城デニー氏が打ち破って、野党は活気づいているはずである。
安倍首相は、これらを重く感じ、何としても、国民が納得する経済政策を打ち出そうと考えているはずである。そのことに真剣な自民党幹部がどのくらいいるのか。私は、何人もの幹部に確かめているのだが……。
もう一つ。安倍首相は憲法改正をしたい、と表明している。
前もって記しておくが、私は護憲論者ではない。憲法と自衛隊との関係は、誰でもわかる大矛盾ありだ。
憲法9条2項では、日本は戦力を持たず、交戦権を持たない、と明記している。だが、自衛隊は世界第8位の軍事力があり、もちろん戦力も有している。もっとも、こんな大矛盾があるとは歴代の自民党の首相は皆わかっていたはずだが、池田勇人以後、誰一人として憲法を改正しようとしなかった。
竹下登氏が首相になったとき、私は直接問うた。日本には、自衛隊という組織があるが、これは戦えない軍隊である。戦えない軍隊でよいのか、と。竹下首相は、戦えないから日本は平和なのだ、戦えれば、軍隊というのは戦ってしまうのだ、と答えた。竹下以後の各首相もこれと同じ捉え方をしていたはずである。
だが、安倍首相は憲法改正をしたいと表明した。自民党議員たちは当然同意しているはずだ。とすれば、それぞれの選挙区で、なぜ改正をすべきなのか、改憲でこの国と国民の生活がどう良くなるのかを説くべきである。ところが、ほとんどの自民党議員たちが説得するどころか、憲法から逃げている。これでは国民が改憲に賛成するわけがなく、憲法から逃げることは、安倍首相を裏切ることではないのか。
※週刊朝日 2018年11月2日号
2018/10/24 07:00
https://dot.asahi.com/wa/2018102300044.html