2011年に廃止された地方議員年金を事実上復活させる議論が、政府・与党内にくすぶっている。地方議員の待遇向上で成り手不足の解消を目指すとともに、来年の統一地方選や参院選対策として地方議員への「配慮」を示す狙いだ。しかし国民への公的年金給付が抑制される中、新たな公費負担には「議員優遇」批判も再燃しかねず、一筋縄ではいきそうにない。
地方議員年金を巡っては石田真敏総務相が、5日の報道各社のインタビューで「復活しても良い」と口火を切った。自民党の萩生田光一幹事長代行も、10日の記者会見で「セーフティーネットとしてはあってもいい。必要であれば検討に値する」と呼応した。
もともと自民、公明両党は先の通常国会で、地方議員の厚生年金加入を可能にする法改正を目指していたが、約3万3000人の対象議員に年間約200億円の公費負担が生じる可能性があり、反対論が噴出。結局、法案提出を見送った。
一方、過疎地域などで成り手不足が急速に問題化する中、既に1000を超える地方議会が法整備を求める意見書を採択した。公明党の山口那津男代表は11日の会見で「(議会に)人材を受け入れる基盤を真剣に考えるべきだ」と訴えた。
旧来の地方議員年金は公的年金に上乗せする形で、約6割を議員の掛け金、約4割を公費負担で支給していたが、財政難や行政改革の流れから「議員の特権」との批判があった。さらに「平成の大合併」による議員の減少で積立金が底を突きかけ、11年に民主党政権が廃止した経緯がある。
このため与党内にも「どの業界も人手不足の中、地方議員だけというのは国民の理解が得られない」(自民党の小泉進次郎氏)などと異論は根強い。石田氏も10日の会見で「国民に納得いただくのは大変だ」とややトーンダウンした。
ただ与党には各選挙の実動部隊となる地方議員を支援したい思惑もあり、統一地方選や参院選への影響を考慮しつつ議論する方針。公明党幹部は「統一選前に一気にやりたい」と息巻くが、批判を浴びれば逆効果だけに、自民党幹部は「選挙にプラスかマイナスか、両論ある」と世論を慎重に見極める考えを示した。
【村尾哲、竹内望】
毎日新聞
2018年10月18日 21時26分
https://mainichi.jp/articles/20181019/k00/00m/010/103000c