https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180221-00209614-toyo-bus_all
平昌五輪での日本選手大活躍で列島にあふれる歓喜とは裏腹に、安倍晋三首相の政権運営の前途に暗雲が立ち込めている。森友学園問題をはじめとするいわゆる“炭水化物疑惑”に加えて、首相が自ら名づけた「働き方改革国会」の中核となる裁量労働制導入に絡む不適切データが野党側の「絶好の攻撃材料」となりつつあるからだ。
森友問題では、国有地払い下げ交渉に関わる大量の財務省資料の公表で、昨年の通常国会において「資料はすべて廃棄」と繰り返した佐川宣寿財務省理財局長(現国税庁長官)の「虚偽答弁」の可能性がますます強まった。さらに裁量労働制の根拠ともなる厚生労働省のずさんな調査データは、首相を答弁撤回と陳謝に追い込む失態となった。
こうした騒動は今のところ、平昌五輪男子フィギアスケートでの羽生結弦選手の二大会連続金メダルや、スピードスケート女子500メートルの小平奈緒選手の金メダル獲得などメダルラッシュの陰に隠れ、新聞、テレビの報道も限定的だ。しかし、来年度予算成立後の後半国会は「もり・かけ・スパ」疑惑や不適切データ撤回問題によって、働き方改革関連法案など重要法案の審議は紛糾が必至だ。今後の展開次第では、9月の自民党総裁選での首相の3選にも影響が出かねないだけに、首相もいらだちを隠せない。
■野党は「もり・かけ・スパ」の追及に勢いづく
前半国会の最重要課題である来年度予算案の審議は、21日に衆院予算委中央公聴会を開催することで、政府与党が目指す月内衆院通過・年度内成立にメドが立った。政権絡みとされる一連の疑惑など野党側は追及材料に事欠かないが、ここにきての世界同時株安などによる経済不安拡大で、野党も予算案を人質にした審議拒否はできず、結果的に審議が順調に進んできたからだ。
そうした中、野党側は国会審議で安倍晋三首相の泣き所とされる森友問題の追及に血道をあげている。野党第1党の立憲民主党は、加計学園問題やスーパーコンピューター事件も含めた政権絡みとされる一連の疑惑を炭水化物食品になぞらえて「もり・かけ・スパ」(辻元清美立憲民主党国対委員長)と名付け、1強首相に一太刀浴びせることを狙う。
これに対し、自民党は日本維新の会取り込みなどで野党陣営の足並みの乱れを誘うなど、手練手管を駆使してガードを固めるが、森友問題やスパコン事件での捜査当局の動きがなお見極めにくいこともあり、党内からは「炭水化物疑惑を早く収束させないと、後半国会での重要法案審議が厳しくなる」(国対幹部)と危惧する声が出始めている。
なかでも、国有地売却をめぐる森友問題は、財務省が値引き交渉に絡む新たな内部文書公表を余儀なくされたことで、佐川氏の虚偽答弁問題を含めて一段と疑惑が拡大した。ただ、政府は麻生太郎財務相らが「払い下げ価格の交渉記録ではない」と強弁し、佐川氏の国税庁長官への昇格も「適材適所の人事」(麻生氏)として野党側が迫る佐川氏の国会招致にも応じない構えだ。
(略)
■“逃げ恥”作戦なら首相3選への黄信号点滅も
9日の平昌五輪開幕以来、新聞・テレビの報道はオリンピック一色で、国会での与野党攻防など政治関連のニュースは片隅に追いやられている。従軍慰安婦問題による日韓関係悪化の中での五輪開会式出席という首相の勇断などで内閣支持率も上昇傾向にあり、安倍1強政権は表向き盤石とみられている。しかし、予算案の衆院通過が予定される月末以降は、国会攻防や自民総裁選絡みの政局にメディアの関心が戻ってくる。
“安倍1強”の構図は変わらないが、疑惑解明も進まず政権の失点が続く現状には首相も苛立ちを隠せない。政府与党は、政権運営を危うくする火種となる“炭水化物疑惑”について、「時間がたてば国民の関心も薄れる」という昨年来の“逃げ恥”作戦を続ける構え。だが、永田町では「このままの状態では政権がじわじわと追い込まれて、首相の3選にも黄信号が点滅し始める」(自民長老)との不気味な予言も出ている。
泉 宏 :政治ジャーナリスト
平昌五輪での日本選手大活躍で列島にあふれる歓喜とは裏腹に、安倍晋三首相の政権運営の前途に暗雲が立ち込めている。森友学園問題をはじめとするいわゆる“炭水化物疑惑”に加えて、首相が自ら名づけた「働き方改革国会」の中核となる裁量労働制導入に絡む不適切データが野党側の「絶好の攻撃材料」となりつつあるからだ。
森友問題では、国有地払い下げ交渉に関わる大量の財務省資料の公表で、昨年の通常国会において「資料はすべて廃棄」と繰り返した佐川宣寿財務省理財局長(現国税庁長官)の「虚偽答弁」の可能性がますます強まった。さらに裁量労働制の根拠ともなる厚生労働省のずさんな調査データは、首相を答弁撤回と陳謝に追い込む失態となった。
こうした騒動は今のところ、平昌五輪男子フィギアスケートでの羽生結弦選手の二大会連続金メダルや、スピードスケート女子500メートルの小平奈緒選手の金メダル獲得などメダルラッシュの陰に隠れ、新聞、テレビの報道も限定的だ。しかし、来年度予算成立後の後半国会は「もり・かけ・スパ」疑惑や不適切データ撤回問題によって、働き方改革関連法案など重要法案の審議は紛糾が必至だ。今後の展開次第では、9月の自民党総裁選での首相の3選にも影響が出かねないだけに、首相もいらだちを隠せない。
■野党は「もり・かけ・スパ」の追及に勢いづく
前半国会の最重要課題である来年度予算案の審議は、21日に衆院予算委中央公聴会を開催することで、政府与党が目指す月内衆院通過・年度内成立にメドが立った。政権絡みとされる一連の疑惑など野党側は追及材料に事欠かないが、ここにきての世界同時株安などによる経済不安拡大で、野党も予算案を人質にした審議拒否はできず、結果的に審議が順調に進んできたからだ。
そうした中、野党側は国会審議で安倍晋三首相の泣き所とされる森友問題の追及に血道をあげている。野党第1党の立憲民主党は、加計学園問題やスーパーコンピューター事件も含めた政権絡みとされる一連の疑惑を炭水化物食品になぞらえて「もり・かけ・スパ」(辻元清美立憲民主党国対委員長)と名付け、1強首相に一太刀浴びせることを狙う。
これに対し、自民党は日本維新の会取り込みなどで野党陣営の足並みの乱れを誘うなど、手練手管を駆使してガードを固めるが、森友問題やスパコン事件での捜査当局の動きがなお見極めにくいこともあり、党内からは「炭水化物疑惑を早く収束させないと、後半国会での重要法案審議が厳しくなる」(国対幹部)と危惧する声が出始めている。
なかでも、国有地売却をめぐる森友問題は、財務省が値引き交渉に絡む新たな内部文書公表を余儀なくされたことで、佐川氏の虚偽答弁問題を含めて一段と疑惑が拡大した。ただ、政府は麻生太郎財務相らが「払い下げ価格の交渉記録ではない」と強弁し、佐川氏の国税庁長官への昇格も「適材適所の人事」(麻生氏)として野党側が迫る佐川氏の国会招致にも応じない構えだ。
(略)
■“逃げ恥”作戦なら首相3選への黄信号点滅も
9日の平昌五輪開幕以来、新聞・テレビの報道はオリンピック一色で、国会での与野党攻防など政治関連のニュースは片隅に追いやられている。従軍慰安婦問題による日韓関係悪化の中での五輪開会式出席という首相の勇断などで内閣支持率も上昇傾向にあり、安倍1強政権は表向き盤石とみられている。しかし、予算案の衆院通過が予定される月末以降は、国会攻防や自民総裁選絡みの政局にメディアの関心が戻ってくる。
“安倍1強”の構図は変わらないが、疑惑解明も進まず政権の失点が続く現状には首相も苛立ちを隠せない。政府与党は、政権運営を危うくする火種となる“炭水化物疑惑”について、「時間がたてば国民の関心も薄れる」という昨年来の“逃げ恥”作戦を続ける構え。だが、永田町では「このままの状態では政権がじわじわと追い込まれて、首相の3選にも黄信号が点滅し始める」(自民長老)との不気味な予言も出ている。
泉 宏 :政治ジャーナリスト