2018年1月25日 朝刊 東京新聞
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201801/CK2018012502000134.html
安倍晋三首相は二十四日の衆院本会議で、米軍ヘリコプターの不時着が沖縄県で相次いでいることに関し「あってはならない。地域住民の安全確保を最優先課題として日米で協力して取り組む」と強調した。一方、沖縄県渡名喜村(となきそん)で二十三日に不時着した米軍AH1攻撃ヘリの同型機が午後、普天間(ふてんま)飛行場(同県宜野湾(ぎのわん)市)を離陸して飛行した。小野寺五典防衛相が米側に飛行停止を求めていたが、無視された格好。沖縄県の翁長雄志(おながたけし)知事は「とんでもない」と強く反発した。
翁長氏は二十四日、自民党の二階俊博幹事長や杉田和博官房副長官、ヤング駐日首席公使らと東京都内で個別に会い、徹底した原因究明と実効性のある再発防止策を要求した。県と、米軍基地を抱える県内市町村でつくる「沖縄県軍用地転用促進・基地問題協議会」として要請した。
不時着した米軍ヘリの同型機による飛行再開について、翁長氏は「県民は怒り心頭だと何百回も言ってきたが、一体何回こういう話をすれば良いのか」と官邸で記者団に述べた。
首相は衆院本会議で「戦後七十年以上を経た今も、なぜ沖縄だけが大きな基地負担を背負い、米軍の事件・事故により安全が脅かされるのか」と述べ、負担軽減に全力を挙げる決意を表明した。「沖縄県民の気持ちは十分に理解し、真摯(しんし)に受け止める」とも語った。二階氏と立憲民主党の枝野幸男代表への答弁。
◆所属機飛行停止、米軍は明言せず 宜野湾市長が抗議
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)所属ヘリコプターの同県渡名喜村への不時着について、宜野湾市の佐喜真淳(さきまあつし)市長は二十四日、同県北中城村(きたなかぐすくそん)の米軍キャンプ瑞慶覧(ずけらん)を訪れ、海兵隊太平洋基地のクラーク政務外交部長(大佐)に抗議した。クラーク大佐は、普天間飛行場所属機の飛行停止については明言しなかった。
佐喜真氏によるとクラーク大佐は「県民に不安を与え申し訳ない」とし、徹底的な調査・点検を約束。佐喜真氏は安全が確認されるまでの飛行停止を求めたが「上司に伝える」と述べるにとどめたという。
佐喜真氏は抗議後、記者団に「米軍も頻繁にトラブルが起きていることを重大視している。二度と起こらないようにしてほしい」と話した。
◆政府・与党で批判相次ぐ 名護市長選告示控え危機感
沖縄県で今月に入り、米軍ヘリコプターの不時着が三回続発したことを受け、政府・与党内で二十四日、米軍への苦言が相次いだ。沖縄では今年、首長や議会の選挙が集中。今月二十一日の南城市長選では、安倍政権が支援した現職候補が僅差で敗北した。二十八日には米軍新基地建設が争点となる名護市長選の告示を控え、政府・与党内には危機感が広がっている。
自民党の二階俊博幹事長は、二十四日の衆院代表質問で、米軍ヘリの不時着続発について「大変遺憾で、米国に強く抗議し、原因究明と再発防止に全力を尽くすのは当然だ」と政府に厳しい対応を求めた。
代表質問に先立ち、都内で開かれた与党幹部の会合でも、原因究明まで不時着したヘリと同型機の飛行停止を米軍に促すよう、政府に求める方針で一致。その後、小野寺五典(いつのり)防衛相は、飛行停止を米軍に申し入れたことを明らかにした。
南城市長選では、名護市辺野古(へのこ)での米軍新基地建設反対を訴える政党や団体でつくる「オール沖縄会議」が支援した新人が、四選に挑んだ現職に六十五票差で勝利した。
首相周辺は「(現職が)僅差で負けたのは米軍のせいだ。事故ばかり起こすから、こうなる。米軍はたるんでいる」と、相次ぐ米軍機のトラブルを敗因に挙げ、不満を募らせた。 (新開浩)