https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20171121-00000040-sasahi-kr
ジャーナリストの田原総一朗氏は、中国の特使が北朝鮮へ派遣されたことについて、日本政府が不安を抱いているという。
* * *
いま、日本では北朝鮮問題について、二つの見方が生じている。
米国のトランプ大統領が、はじめてのアジア歴訪を終えて帰国した。前回も記したが、トランプ大統領は、日本の安倍首相と韓国の文在寅大統領には「米国は北朝鮮への圧力を最大限まで高めていく」と強調し、安倍首相も文大統領も完全に一致したようだ。
だが、日本も韓国も「北朝鮮への圧力を高める」とは言っても、具体的な手段は、ほとんどない。その点、中国はまったく違う。中国は、北朝鮮を破綻に追い込む具体的な手段を、いくつも有している。たとえば、北朝鮮に送り込んでいる原油のパイプを全面的に止めれば、北朝鮮の国民の生活は成り立たなくなる。だから、中国がその気になれば、北朝鮮は核の廃棄にも応じざるを得なくなる。そこで、米中首脳会談に、世界中が注目したのであった。
ところが、習近平国家主席は「(9月の)国連安保理の決議を守る」としか言わなかった。「北朝鮮に対する圧力を強化する」とは言わず、トランプ大統領も反対しなかった。
ここまでは前回も記したのだが、トランプ大統領はなんと、その後訪れたベトナムで、ツイッターに「彼(金正恩)と友人になるように頑張ろう。いつかは実現するかもしれない!」と書き込んだのである。さらに「(友人関係が)実現すれば、北朝鮮にも世界にも良いことだ」と強調した。
トランプ大統領は、いったい何をどう考えているのか。日本の新聞各紙も、強い困惑を示した。さらに11月9日に、信じられない情報が流された。
北朝鮮は9月15日に中距離弾道ミサイルを発射したのだが、もし北朝鮮が60日間、つまり11月15日まで核実験やミサイルの再発射を自制すれば、米国は北朝鮮と対話をしてもよい、要するにトランプ大統領が金正恩委員長と会う、というのである。
これは、テレビ各局の報道番組でも北京駐在の特派員たちが語っているので、それなりに裏がとれているのであろう、と私はとらえていた。
ここまでは、前回の疑問符の延長であった。ところが13日の夜、元政府幹部だった人物が、17日に中国の習近平主席の特使が北朝鮮に派遣されることになった、と教えてくれた。しかも、トランプ大統領も承知しているという。17日とは、問題の60日目の2日後である。
元政府幹部は、特使はもちろん金正恩委員長と会う、つまり習近平主席は米国と北朝鮮の対話の仲介をするつもりなのではないか、と説明した。これが事実ならば大変なことだ。彼は米・中・北朝鮮で対話が進み、日本が外されるのではないか、と心配しているのである。
14日に、外務省筋に特使のことを確かめた。外務省筋は特使の派遣は認めたが、慣例として党大会についての説明をするためで、特別の意味はない、とみているようだった。
そして、16日に新聞各紙が、17日の北朝鮮への特使の派遣を大きく報じた。元政府幹部の情報は事実だったのである。派遣されるのは、党中央対外連絡部トップの宋濤部長で、習主席の側近中の側近だということだ。ただし、特使の派遣の目的については、対話要請説と、慣例であって特別の意味はない、との二つの見方に分かれている。だが、官邸は、米、中、北朝鮮の接近に相当不安を抱いているようである。
ジャーナリストの田原総一朗氏は、中国の特使が北朝鮮へ派遣されたことについて、日本政府が不安を抱いているという。
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いま、日本では北朝鮮問題について、二つの見方が生じている。
米国のトランプ大統領が、はじめてのアジア歴訪を終えて帰国した。前回も記したが、トランプ大統領は、日本の安倍首相と韓国の文在寅大統領には「米国は北朝鮮への圧力を最大限まで高めていく」と強調し、安倍首相も文大統領も完全に一致したようだ。
だが、日本も韓国も「北朝鮮への圧力を高める」とは言っても、具体的な手段は、ほとんどない。その点、中国はまったく違う。中国は、北朝鮮を破綻に追い込む具体的な手段を、いくつも有している。たとえば、北朝鮮に送り込んでいる原油のパイプを全面的に止めれば、北朝鮮の国民の生活は成り立たなくなる。だから、中国がその気になれば、北朝鮮は核の廃棄にも応じざるを得なくなる。そこで、米中首脳会談に、世界中が注目したのであった。
ところが、習近平国家主席は「(9月の)国連安保理の決議を守る」としか言わなかった。「北朝鮮に対する圧力を強化する」とは言わず、トランプ大統領も反対しなかった。
ここまでは前回も記したのだが、トランプ大統領はなんと、その後訪れたベトナムで、ツイッターに「彼(金正恩)と友人になるように頑張ろう。いつかは実現するかもしれない!」と書き込んだのである。さらに「(友人関係が)実現すれば、北朝鮮にも世界にも良いことだ」と強調した。
トランプ大統領は、いったい何をどう考えているのか。日本の新聞各紙も、強い困惑を示した。さらに11月9日に、信じられない情報が流された。
北朝鮮は9月15日に中距離弾道ミサイルを発射したのだが、もし北朝鮮が60日間、つまり11月15日まで核実験やミサイルの再発射を自制すれば、米国は北朝鮮と対話をしてもよい、要するにトランプ大統領が金正恩委員長と会う、というのである。
これは、テレビ各局の報道番組でも北京駐在の特派員たちが語っているので、それなりに裏がとれているのであろう、と私はとらえていた。
ここまでは、前回の疑問符の延長であった。ところが13日の夜、元政府幹部だった人物が、17日に中国の習近平主席の特使が北朝鮮に派遣されることになった、と教えてくれた。しかも、トランプ大統領も承知しているという。17日とは、問題の60日目の2日後である。
元政府幹部は、特使はもちろん金正恩委員長と会う、つまり習近平主席は米国と北朝鮮の対話の仲介をするつもりなのではないか、と説明した。これが事実ならば大変なことだ。彼は米・中・北朝鮮で対話が進み、日本が外されるのではないか、と心配しているのである。
14日に、外務省筋に特使のことを確かめた。外務省筋は特使の派遣は認めたが、慣例として党大会についての説明をするためで、特別の意味はない、とみているようだった。
そして、16日に新聞各紙が、17日の北朝鮮への特使の派遣を大きく報じた。元政府幹部の情報は事実だったのである。派遣されるのは、党中央対外連絡部トップの宋濤部長で、習主席の側近中の側近だということだ。ただし、特使の派遣の目的については、対話要請説と、慣例であって特別の意味はない、との二つの見方に分かれている。だが、官邸は、米、中、北朝鮮の接近に相当不安を抱いているようである。