「加計学園」獣医学部 大学設置審 最終段階でも緊迫の応酬
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20171110/k10011219211000.html
11月10日 18時39分
学校法人「加計学園」の獣医学部について、文部科学省の大学設置審議会は来年4月の開学を認めるとする結論をまとめ、林文部科学大臣に答申しました。
加計学園の獣医学部の開学を認めるべきかどうか、実質的に審査したのは文部科学省の大学設置審議会の専門委員会です。獣医学などの専門家14人で構成され、専門的な見地から学園から申請された教員の数や定員、教育内容に法令違反がないか審査に当たりました。通常の学部の場合、設置審では最終的に8割以上の開学が認められるなどそのハードルは低いとされています。しかし国家戦略特区で認められた獣医学部の審査は今回が初めてでした。設置審は非公開で行われますが、最終的な答申をまとめるまでに委員の間、さらに文部科学省との間で緊迫したやり取りがあったことがNHKの取材でわかりました。
厳しい指摘続いた申請内容
まず問題となったのは学園が提出した申請内容でした。
ことし5月に行われた専門委員会の審査では、抜本的な見直しが必要な場合にのみつけられる「警告」が出されました。
その理由として、国家戦略特区の構想にある新たな獣医学部の必要性について「具体的な需要が不明だ」と指摘しているほか、国内最大の160人の学生規模について「実習を円滑に実施できるか不明」と記されるなど、厳しい意見が相次ぎました。
委員の一人は「学園が当初提出した計画は、教員の年齢層が偏っていたりとか、研究施設が狭く、既存の大学に比べても非常に劣ったりしているものだった」と振り返りました。
これに対し、学園側は、定員を20人少ない140人に減らしたり専任教員を増やしたりして修正案を出しました。
しかし設置審は8月、学生の実習計画などが不十分だなどとして認可の判断を保留しました。
特区の条件めぐり疑問も
また審査では、政府が国家戦略特区の中で獣医学部新設を決めるにあたって閣議決定したいわゆる「4条件」をどう扱うべきかについても焦点となりました。
4条件とは、既存の大学や学部にない、とか、ライフサイエンスなど新たに対応すべき分野で具体的な需要があることなど、政府が獣医学部新設の根拠としたものです。
政府は学園の獣医学部はこの4条件に合致していると説明したのに対し、野党などは議論はほとんどされていないと反論していました。
今回の設置審でも委員の間から「学園の申請内容はいわゆる4条件を満たしていない」という意見が出されたということです。
これに対して文部科学省の担当者は「4条件は特区での検討事項であり、この審議会では審査しない」と繰り返し説明したということです。
委員の一人は「特区の中では加計学園の獣医学部は4条件を満たしているというが、学園から提出された計画をみるかぎりそうは思わなかった」と話しています。
最終段階でも異論
設置審の専門委員会が認可を認める結論を出したのは今月2日です。
この日の議論では「依然として実習体制が十分でない」などとして、認可に向けた結論を出すことに異論を口にする委員もいました。
こうした中、取りまとめ役を務めた委員から「設置審としてこれ以上認可を先延ばしにすれば、学園側と訴訟を含めたトラブルになる可能性がある」という発言もあったということです。
これについては「訴訟という言葉を聞かされ、何も言えなくなった」と話す委員もいました。
最終的に設置審は、実習計画全体としては改善され、最低限の設置基準は満たしているという結論に至りました。