[SNSと選挙]<2>担い手たち
「SNSをうまく使えば、地方議員選挙ならまず負けない」。愛媛県を拠点に活動する選挙プランナーの男性(49)はそう豪語する。
男性が選挙の世界に飛び込んだのは2018年。飲食店などからSNS広告の仕事を受けていたが、知人の選挙を手伝って当選させると、評判が広がり、20年にプランナーとして独立した。50以上の選挙に携わり、9割超の勝率を誇る。
23年4月の東京都港区議選に出馬した元ネットアイドルの新藤加菜氏(31)から依頼を受けた。20年の都議補選で、新型コロナ対策で国が配布した布マスクを下着に見立てた選挙ポスターを掲示し、物議を醸した人物だ。都議補選は最下位、その後の千葉県印西市長選も惨敗していた。
新藤氏は「今度は本気で当選を目指す」と男性に依頼。男性は戦略次第で十分勝てると考えた。
男性は、自らの経験からSNSごとの特性を踏まえて使い分けるよう助言する。
インスタグラムは位置情報を入力することで、近くでアプリを開いた人に表示されやすく、地方選挙で有効だという。ユーチューブ動画は最後まで視聴されることで、他の視聴者に関連動画としておすすめされやすくなるため、できるだけ短くするという。
動画の再生数は区議選の候補者中で圧倒的に多く、定数34に対し、14位で当選した。新藤氏は「動画は質より量。SNSでは有権者に刺さる『動物愛護』一本に絞り、ほかの政策は街頭演説で訴えた」と振り返る。
男性は「選挙がエンタメ化し、SNSで情報を得る人が増えていると肌で感じる。SNS対策は『しなければならない』時代になっている」と語った。
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選挙戦略を指南する選挙プランナーは、1989年に活動を始めた元国会議員秘書の三浦博史氏(73)が日本初とされる。選挙におけるSNSの存在感が増す中、政治経験に乏しい人も参入するようになった。
一方、公職選挙法は、選挙運動の対価として報酬を支払うことは原則禁じている。プランナーは選挙期間中は「ボランティア」として活動し、候補者は選挙と関係ない「政治活動」への助言の対価として報酬を支払うケースが一般的だ。
新藤氏も、政治活動での「サポート代」として99万円をプランナーに支払った。
報酬の名目にかかわらず、実態が選挙運動の対価であれば公選法に抵触する可能性がある。だが、線引きは曖昧で、特にSNSはプランナーの関与が見えにくい。(以下有料版で,残り:516文字)
読売新聞 2025/02/20 05:00
https://www.yomiuri.co.jp/national/20250220-OYT1T50000/