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ラッコにはそんなつもりはなかったんだろうが、はからずも生態系の危機を救う、救世主となっていたようだ。
侵略的外来種のヨーロッパミドリガニが増殖し、アメリカ西海岸の生態系を脅かしている中、カリフォルニア州モントレー湾では、
愛らしいカリフォルニアラッコの群れが、年間数万匹ものミドリガニを捕食し、生態系を回復させたのだ。
■外来種「ヨーロッパミドリガニ」の脅威
ヨーロッパミドリガニは、ヨーロッパからの商船のバラスト水(船底に積む重り用の水)に混じって米国に侵入したと考えられている。
1980年代にはアメリカ西海岸の海草の破壊、幼体のカニやサケの捕食、さらには沿岸生態系全体を荒廃させるなど、壊滅的な影響を及ぼしてきた。
甲幅6cmほどの小さなカニだが、その被害は数百万ドル規模に及び、漁業や水産業に深刻な影響を与えている。
アラスカ州は早期発見・対応計画を実施しており、ワシントン州では約17億円を投入して侵略を食い止めようとしているが、根本的な解決には至っていない。
オレゴン州では、カニ漁師に1日最大35匹のミドリカニを捕獲するよう奨励している。
■カリフォルニア州ではラッコの活躍でカニを制圧
しかし、カリフォルニア州モントレー湾近くのエルクホーン湿地帯では、予想外の救世主が現れた。それがカリフォルニアラッコである。
エルクホーン湿地帯には2000年には大量にヨーロッパミドリガニが生息していたが、時が経つにつれ、人間が手を加えてないにもかかわらず
カニの数が減少していることに管理者らは気が付いた。
カリフォルニアラッコにとってミドリガニはごちそうだったようで、ムシャムシャと大量に食べていたのだ。
「ラッコはとにかく食いしん坊な捕食者です」と、エルクホーン湿地国立河口研究保護区の研究コーディネーター、カースティン・ワッソン氏は言う。
私たちの計算では、エルクホーン湿地に生息するラッコは、年間5万~12万匹のミドリガニを食べています
研究チームは、1時間で30匹ものヨーロッパミドリガニを食べるラッコの姿も目撃したという。
その結果、過去10年間で、ミドリガニは姿を消し始めた。はからずもラッコが救世主となったのだ。
かつて最大100匹のミドリガニが罠にかかっていた場所でも、現在では5匹未満しか捕まらない。
カリフォルニアラッコの存在が侵略的外来種の制圧に直接的な役割を果たしているのだ。
その間にいくつかの重要な変化が起きていた。
モントレー湾に位置する全長約11kmの干潟では、水質が改善され、元々その地域に生息していたアマモ(海草の一種)の藻場が回復した。
さらに、潮汐による水と湿地の自然な交換が復活し始めた。
研究チームの一員であるリッケ・ジェプセン氏は、
「ラッコがミドリガニを食べたことで、水草が回復し、水質が改善されました。これはラッコ自身の生活環境にも良い環境を与えています」と述べた。
生物学誌「Biological Invasions 」に掲載された論文によると、エルクホーン湿地帯では、ヨーロッパミドリガニの生息数が一貫して低水準を保っているという。
事実ラッコのいない、サンフランシスコ湾、トマレス湾、ドレイクス湾などでは、最近までミドリガニの個体数が急増している。
■一時は絶滅寸前だったカリフォルニアラッコ
かつて毛皮を目的とした乱獲で絶滅寸前に追いやられたカリフォルニアラッコは、1913年に保護指定され、
翌年にはモントレー湾南部のビッグサー近郊で少数の個体が確認された。
1990年代後半に初めてオスのラッコがエルクホーンに現れ、2000年代初頭にはメスや子どもも加わり、徐々に繁殖が進んだ。
さらに、モントレーベイ水族館のリハビリプログラムが放流した37匹の子ラッコがこの地域の個体群を増やした。
エルクホーンは西海岸沿いでラッコが再び定着した唯一の湿地であり、現在では120匹のラッコが生息している。
アザラシのような他の海洋哺乳類は体温を保つために脂肪層を持っているが、ラッコには脂肪層がないので、
毎日代謝維持のため、体重の30%に相当する餌を摂取する必要がある。
ラッコの好物はハマグリだが、この地に適応したラッコは、ミドリガニを好んで食べるようになったようだ。
リッケ・ジェプセン氏は、「数十年にわたるミドリガニの研究で確認された、初めての良いニュースだ」と述べ、ラッコにとても感謝しているという。