JBpress 2/1
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/73684
ドイツがウクライナに強力な戦車「レオパルト2」を供与することを決めた。第2次世界大戦での敗戦国がどうして最強といわれる戦車をつくれたのか? 航空機でも似たようなことがいえるのだ。開発が凍結された三菱重工業のジェット旅客機「スペースジェット」のライバルと目されたブラジルのエンブラエル機が、実質ドイツ製としてスタートしたことはあまり知られていない。ドイツはかつてメッサーシュミットやハインケルなどの軍用機でのノウハウを持ち、それは民間ジェット機の製造にも活かされている。スペースジェットの開発頓挫の要因とエンブラエル機が高い評価を得ている理由を考えてみたい。
■「一旦立ち止まる」からすでに2年以上が経過
三菱重工業が国産初のジェット旅客機「三菱スペースジェット(旧名はMRJ=ミツビシ・リージョナル・ジェット)」の開発凍結を表明して2年以上の月日が過ぎた。
2020年10月30日に「一旦立ち止まる」と表明し、型式証明(TC)の取得に必要な文書作成は続けるとしながらも、飛行試験は中断となり、訓練所は閉鎖されている。米国での試験を行っていた飛行試験機4機のうち3号機は解体されている。
誰がどう考えてもこのプロジェクトの破綻は明らかだ。プライドが高い三菱重工業として失敗を認めたくない気持ちがあるのだろうが、国からも多額の税金が投入されてきた以上、曖昧で中途半端な説明を繰り返すのではなく、ここは早期に「失敗」の総括を行ったうえで、再起を期した方が良いのではないか。
同社が昨年11月1日に発表した2022年4~9月期決算では、スペースジェットの「開発減速」について決算短信にこう記している。
「当社は、新型コロナウイルス感染症の世界的流行の影響を受けた民間航空機市場の不安定化等を踏まえ、SpaceJetの開発活動を減速することを2020年10月に公表した」
「これによりSpaceJetの量産初号機の引き渡し予定時期を見通すことは困難となり、これを受けた顧客等との協議の結果等により追加の負担が発生し、将来の財政状態及び経営成績に影響が生じる可能性がある」
こんな悠長なことを言っている場合なのだろうか。
開発の中止を新型コロナのせいにしているが、事実関係を見ても、新型コロナの発生以前に納入延期を6度も繰り返しており、これでは正しい総括もできないだろう。
三菱重工は補助金などで約500億円もの公費が投入されている手前、引くに引けない状況であると言われているが、それは逆ではないのか。血税が使われているからこそ一刻も早く失敗を認め、返済方法の協議に入るべきであろう。
■MRJからスペースジェットへの名称変更はなぜ
三菱重工業は2019年6月3日、当初の「MRJ」から「スペースジェット」へと名称変更したが、理由は失敗を隠すためのイメージチェンジであったと言われる。
その時点での失敗とは、米国当局から依然として耐空証明(TC)が出されないことに加え、それまでの90席仕様の「MRJ90」では、米国市場などでは勝負できないとわかったためである。
米国内には「スコープクローズ」と呼ばれるリージョナル機の座席数や最大離陸重量を制限する労使協定がある。
その目的は一般のジェット旅客機とリージョナルジェット機との線引きをすることで、民間航空のパイロットの待遇を守ろうとするものだ。具体的には、座席数では最大88席まででなければリージョナルジェットとして認められないのである。
三菱重工もその協定の存在を知らぬはずはなく、なぜ90席仕様のMRJ90での開発を優先させたのかはわからない。
いずれ早期にその協定もなくなるだろうと思ったのかもしれないが、急遽70席クラスの機種の開発を優先させるように変更したのであった。
そして名称を「スペースジェットM100」としたのであるが、北米市場の事情を知らぬ戦略の大失態が、すでに5度の納入延期と耐空証明が取れない状態に追い打ちをかけることになった。
■最大のライバルはブラジルのエンブラエル
MRJ開発当初、リージョナルジェットの分野では、ブラジルのエンブラエル、「CRJ」を擁するカナダのボンバルディア、それに中国が開発した「ARJ」などとの競合の中で、燃費が以前よりも約20%向上する米プラット・アンド・ホイットニー(P&W)のギヤードファンエンジンを搭載すれば勝ち抜くことができると予想していたようだ。
しかし、実際にはCRJやARJは様々な弱点があり、強豪相手として、エンブラエルに絞り込んで開発にあたるべきであった。
エンブラエル機と聞けば、航空に少しでも知識があれば、ブラジル製であることが知られている。
※以下出典先で
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/73684
ドイツがウクライナに強力な戦車「レオパルト2」を供与することを決めた。第2次世界大戦での敗戦国がどうして最強といわれる戦車をつくれたのか? 航空機でも似たようなことがいえるのだ。開発が凍結された三菱重工業のジェット旅客機「スペースジェット」のライバルと目されたブラジルのエンブラエル機が、実質ドイツ製としてスタートしたことはあまり知られていない。ドイツはかつてメッサーシュミットやハインケルなどの軍用機でのノウハウを持ち、それは民間ジェット機の製造にも活かされている。スペースジェットの開発頓挫の要因とエンブラエル機が高い評価を得ている理由を考えてみたい。
■「一旦立ち止まる」からすでに2年以上が経過
三菱重工業が国産初のジェット旅客機「三菱スペースジェット(旧名はMRJ=ミツビシ・リージョナル・ジェット)」の開発凍結を表明して2年以上の月日が過ぎた。
2020年10月30日に「一旦立ち止まる」と表明し、型式証明(TC)の取得に必要な文書作成は続けるとしながらも、飛行試験は中断となり、訓練所は閉鎖されている。米国での試験を行っていた飛行試験機4機のうち3号機は解体されている。
誰がどう考えてもこのプロジェクトの破綻は明らかだ。プライドが高い三菱重工業として失敗を認めたくない気持ちがあるのだろうが、国からも多額の税金が投入されてきた以上、曖昧で中途半端な説明を繰り返すのではなく、ここは早期に「失敗」の総括を行ったうえで、再起を期した方が良いのではないか。
同社が昨年11月1日に発表した2022年4~9月期決算では、スペースジェットの「開発減速」について決算短信にこう記している。
「当社は、新型コロナウイルス感染症の世界的流行の影響を受けた民間航空機市場の不安定化等を踏まえ、SpaceJetの開発活動を減速することを2020年10月に公表した」
「これによりSpaceJetの量産初号機の引き渡し予定時期を見通すことは困難となり、これを受けた顧客等との協議の結果等により追加の負担が発生し、将来の財政状態及び経営成績に影響が生じる可能性がある」
こんな悠長なことを言っている場合なのだろうか。
開発の中止を新型コロナのせいにしているが、事実関係を見ても、新型コロナの発生以前に納入延期を6度も繰り返しており、これでは正しい総括もできないだろう。
三菱重工は補助金などで約500億円もの公費が投入されている手前、引くに引けない状況であると言われているが、それは逆ではないのか。血税が使われているからこそ一刻も早く失敗を認め、返済方法の協議に入るべきであろう。
■MRJからスペースジェットへの名称変更はなぜ
三菱重工業は2019年6月3日、当初の「MRJ」から「スペースジェット」へと名称変更したが、理由は失敗を隠すためのイメージチェンジであったと言われる。
その時点での失敗とは、米国当局から依然として耐空証明(TC)が出されないことに加え、それまでの90席仕様の「MRJ90」では、米国市場などでは勝負できないとわかったためである。
米国内には「スコープクローズ」と呼ばれるリージョナル機の座席数や最大離陸重量を制限する労使協定がある。
その目的は一般のジェット旅客機とリージョナルジェット機との線引きをすることで、民間航空のパイロットの待遇を守ろうとするものだ。具体的には、座席数では最大88席まででなければリージョナルジェットとして認められないのである。
三菱重工もその協定の存在を知らぬはずはなく、なぜ90席仕様のMRJ90での開発を優先させたのかはわからない。
いずれ早期にその協定もなくなるだろうと思ったのかもしれないが、急遽70席クラスの機種の開発を優先させるように変更したのであった。
そして名称を「スペースジェットM100」としたのであるが、北米市場の事情を知らぬ戦略の大失態が、すでに5度の納入延期と耐空証明が取れない状態に追い打ちをかけることになった。
■最大のライバルはブラジルのエンブラエル
MRJ開発当初、リージョナルジェットの分野では、ブラジルのエンブラエル、「CRJ」を擁するカナダのボンバルディア、それに中国が開発した「ARJ」などとの競合の中で、燃費が以前よりも約20%向上する米プラット・アンド・ホイットニー(P&W)のギヤードファンエンジンを搭載すれば勝ち抜くことができると予想していたようだ。
しかし、実際にはCRJやARJは様々な弱点があり、強豪相手として、エンブラエルに絞り込んで開発にあたるべきであった。
エンブラエル機と聞けば、航空に少しでも知識があれば、ブラジル製であることが知られている。
※以下出典先で