違法じゃないけど「最低賃金未満」 公務員賃金に出した総務省通知
地方自治体で働く職員の一部で、賃金の水準が「最低賃金」を下回る事態となっている。最低賃金は法律上、自治体職員には適用されないものの、生活にかかる費用などに基づいて決められることもあり「適用すべきだ」との意見も根強い。自治体職員の賃金を所管する総務省は対策に乗り出した。
「市が広報紙で『最低賃金割れ』の賃金で職員を募っている」。最低賃金の改定から間もない2022年10月上旬、自治体で働く人たちでつくる労働組合の全国組織「日本自治体労働組合総連合」(自治労連)に、茨城県桜川市の情報が寄せられた。9月15日付「広報さくらがわ」で、市は11月から5カ月間にわたり農林課で働く「会計年度任用職員」を時給897円で募集していた。
会計年度任用職員は、公務員のうち、年度ごとに雇用契約を結ぶ非正規雇用の人たちで、賃金は公務員として最も低い水準となっている。公務員は自治体と一体化して働く安定した仕事とされ、最低賃金制度の適用除外となっている。その賃金は、地方公務員法に基づき、生計費に国と他の自治体、民間事業者の水準などを考慮して定めることとされている。
22年10月の改定で、茨城県内の最低賃金はそれまでの時給879円から32円増の時給911円となることが決まっていた。広報紙への苦情は市にも寄せられ、市は最終的には、この募集の時給及び、すでに働いている会計年度任用職員の10月からの時給を、いずれも932円に改定した。
茨城県内4自治体で「最低賃金割れ」
桜川市以外の自治体はどうだったか。茨城県内44自治体について毎日新聞が確認したところ、会計年度任用職員で最も時給が低い人について、22年の最低賃金の改定直前(茨城の場合は9月30日時点)の賃金水準が、改定後の県内の最低賃金(時給911円)を下回るケースは24自治体に上った。このうち桜川市を含む17自治体は、市の規則を変えるなどし、10月1日には時給911円を上回るよう事前に手を打った。
残る7自治体の対応は分かれた。3自治体は22年の12月議会で時給911円を上回る賃金に改定し、対象者には10月にさかのぼって改定後の賃金との差額を支払うとした。このうち石岡市は、897円だった22年度の時給を922円に改定した。
常総市と龍ケ崎市は12月議会で賃金を改定し、最低賃金割れを解消したものの、新たな賃金が適用される時期に応じて2~3カ月分の賃金は最低賃金割れのままとした。下妻市は年度内に賃金を改定する予定がなく、23年度の契約で最低賃金割れを解消する。時給879円を据え置く。担当者は「(最低賃金を下回っても)問題はない。年度内に非正規雇用の職員の賃金を改定するのは難しい」と話した。かすみがうら市は当初、下妻市と同様の対応を取る方針だったが、23年1月分の賃金から、22年10月の改定後の最低賃金と同額の時給911円とすることを決めた。
この結果、県内では4自治体で2カ月間から半年間にわたり、最低賃金を下回る賃金で働く公務員が存在する見通しとなった。
最低賃金引き上げが影響
20年から運用が始まった会計年度任用職員。その賃金は地域の賃金水準も参考に決められるが、人件費削減のため、地域の最低賃金に5~10円ほど加えた額とする自治体もあるなど、低く設定されがちだ。このため、年度の途中の10月に改定される最低賃金の引き上げ額が大きいほど、最低賃金を下回りやすくなる。
全国の最低賃金は、22年10月の改定で時給961円(加重平均=都道府県ごとの労働者数の差異を踏まえた全国平均)となり、それまでの時給930円から31円増となった。各都道府県の引き上げ額は30~33円で、茨城県の32円とそう変わらない。賃金水準が最低賃金割れを起こしたケースは、茨城県以外の各地にも広がっている恐れがある。
自治労連の推計によると、各自治体の会計年度任用職員の22年度当初の賃金水準が、10月の改定後の各都道府県の最低賃金を下回るケースは、全国1741自治体の4割超に及ぶ。桜川市のように改定を踏まえて賃金を上げる自治体もあり、実際に最低賃金を下回る賃金水準となった自治体の数は定かではない。ただ、自治労連には茨城県以外の自治体についても相談が寄せられ、実際に最低賃金割れとなった自治体の存在を確認しているという。
「最低賃金を踏まえて」と通知
国はどう考えているのか。総務省は22年12月23日付で、会計年度任用職員の給与水準は最低賃金を踏まえて適切に決める必要があるとする通知を出した。…(以下有料版で,残り848文字)
毎日新聞 2023/1/18 07:00(最終更新 1/18 07:00) 有料記事 2712文字
https://mainichi.jp/articles/20230115/k00/00m/040/141000c
※スレタイは毎日jpトップページの見出し