【ワシントン=坂口幸裕】ブリンケン米国務長官は21日、ウクライナに侵攻するロシアが停戦に向けた対話に応じる姿勢はないとの認識を示した。米側の要請で21日に米国とロシアの国防相が電話協議したものの「現時点でロシアは意味のある外交をする気があるように思えない」と批判した。
ワシントンで会談したフランスのコロナ外相との共同記者会見で語った。ブリンケン氏は「どんな方法であっても外交を進める余地があれば検討する」と明言。「ロシアのプーチン大統領は逆の方向に突き進み続けている」と非難した。
オースティン米国防長官は21日、ロシアのショイグ国防相と電話し、ロシア側との意思疎通を維持することが重要だと強調した。両氏の電話協議は5月以来、5カ月ぶりだった。
ブリンケン氏はオースティン氏やサリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)らがロシア側と意思疎通を継続する意向だと明らかにしたうえで、同国がウクライナとの停戦協議には関心を示していないとの見方を示した。
プーチン氏は19日、一方的に「併合」を決めたウクライナ4州に戒厳令を導入し、ロシア全土で警戒を高める大統領令に署名した。ブリンケン氏は「ウクライナの99%の人たちがロシアの一部になるのを望んでいるなら、なぜ戒厳令を敷く必要があるのか」と断じた。
米欧はイランがロシアに攻撃型ドローン(無人機)を供与していると分析する。欧州連合(EU)はイランに追加制裁を科すことで合意した。コロナ氏はウクライナの民間インフラや市民に無人機を使用したイランについて「国連安保理決議に違反であり、戦争犯罪にもあたる」と糾弾した。
EUはイランとの核合意の再建に向けて米国などとの協議を仲介してきたが、同国によるロシアへの軍事支援を受けて後退は避けられない。ブリンケン氏はイランと「合意に至る見込みはない」と断言。一方「イランの核開発という難題を外交的に解決するのが最善の道だと信じている」とも話した。
ブリンケン氏とコロナ氏はウクライナ支援で協力を確認するとともに、12月初旬に予定するフランスのマクロン大統領の訪米についても調整した。バイデン米大統領は2021年1月に就任後、初の国賓としてマクロン氏を迎える。
日本経済新聞 2022年10月22日 6:48
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