マネーポストTweetFacebook2022年8月11日 15:00
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現在、大学の教員に「実務家教員」と呼ばれる存在が増加している。文部科学省によれば「専攻分野における実務の経験を有し、おおむね5年以上の実務の経験を有し、かつ高度の実務の能力を有する者」と定義されている。
大学がこうした実務家を教員として雇用するようになった背景には、学部段階から企業との有機的な連携を求める声や、実践的な教育へのニーズの高まりがあると言われている。関西の有名私大に勤務する大学教員(40代・男性)は、実務家教員の存在について、次のように説明する。
「現在、私立大学では、どこも学生たちの就職率を非常に重視しています。学生生活に関するアンケートを実施すると、『内定が取れるか不安』『ちゃんと行きたい業種に就職できるか』といった回答が多くを占めます。またオープンキャンパスで個人面談をすると、保護者の質問もその大半が就職に関するものです。
各大学にはキャリアセンターがあり、そこでイベント開催や面談などをしていますが、それだけではサポートが十分とは言い難い。実務家教員を雇用するメリットは、現場経験が豊富な教員を雇用することで、早くから学生に業界への関心を持たせ、就職活動に励んでもらうということがあります」
しかし、実務家教員を増やすことにはデメリットも感じるという。
「もちろん、メリットだけではありません。大学教員は研究と教育の二本柱が基本ですが、研究を疎かにしている実務家教員は少なくありません。昇任人事の際に、『論文審査よりも教育活動を重視してほしい』と要望を出す方もいました」(同前)
実務家教員による事件も起こっている。今年7月、勤務先の女子大で、女子学生に睡眠薬を混ぜたお酒を飲ませわいせつ行為を行ったとして逮捕されたのは、民放キー局で解説委員などを務めた元大学教授だった(逮捕直前に大学に懲戒解雇されている)。
はたして学生たちは、実務家教員についてどう感じているのか。そのリアルな声を集めた。
■「芸能人と仲が良かった」テレビ局時代の自慢話
「自分たちの知らないマスコミの中の話が聞けるのはよかったが、“業界風のノリ”が嫌だった」というのは、現在、マスコミに勤務する女性・Aさん(20代)。大学時代に「テレビ局出身の実務家教員」のゼミに所属していた。
「ゼミの先生は、とにかく“昭和臭”がすごかったですね。気に入っている女子学生をしょっちゅうゼミのあとに飲み会に誘って、その場でも『彼氏いるか? 早めに相手を見つけないと、売れ残るぞ!(笑)』などとセクハラ発言をしていたこともありますし、男子学生には高圧的な態度で『お前じゃマスコミで働けないぞ? 社会に出る気あるのか?』などと発言していました。“社会人経験者”として学生にマウントを取っている印象でした。
またテレビ局にいた時代の自慢話も多く、『あの芸能人と仲が良かった』とか『自分がテレビを作っていた頃は良かった』と“老害トーク”ばかりで、ちゃんと卒論指導してほしいと愚痴を言っていた学生も少なくありませんでした」
私立大学に通っている女子学生・Bさん(20代)は、「広告代理店出身の実務家教員」によるマーケティング系の講義を受講している。
「コロナ前は頻繁に飲み会をしていて、一部のゼミ生に代理店の男性を紹介したりしていました。私が一番嫌なのは、一部の学生を“さん付け”ではなく『○○ちゃん』と呼んだり、お気に入りの学生を下の名前で呼び捨てしたりすることです。
正直、今の時代に合っていないと思うし、気持ち悪いです。でも、その軽いノリが好きだという学生もいるので、悪い面ばかりではないのかもしれませんが……。なかには代理店に就職したくて、コネがもらえると思い込んでいる学生も多いようです」
この教員の授業を受講しているという男子学生・Cさんは、良い点、悪い点、その両方があると指摘する。
「講義では、広告のコピーライターの話や広告表現について学べて非常に勉強になりました。僕自身、広告業界への興味が高まったのは間違いありません。ただ、男子学生たちと一緒にいる時には、下ネタトークが多すぎる……。コンプライアンスが緩い時代に、なんでもアリのマスコミ業界にいたから、今でもそうした意識が薄いのかもしれません」
もちろん、実務家教員のなかにも優れた研究をおこない、熱心に教育活動に励む者も少なくないはずだ。しかしその一方で、学生との距離感を見誤り、古い“業界ノリ”を持ちこむ教員もいる。大学が学問をする場である以上、そうした慣習を持ち込まないことは最低限のモラルではないだろうか。