2022年7月23日 1:03
【ヤンゴン=新田裕一】国際司法裁判所(本部オランダ・ハーグ、ICJ)は22日、ミャンマーのイスラム系少数民族ロヒンギャに対する迫害問題を巡り、不適法な提訴だと主張したミャンマー側の異議申し立てを却下した。今後、ミャンマー国軍が2016~17年にロヒンギャ居住地域で行った掃討作戦がジェノサイド(大量虐殺)に相当するか、本格的な審理に移る見通しだ。
イスラム教徒が多い西アフリカのガンビアは19年11月、特定集団の破壊を意図した大量殺害などを禁じるジェノサイド条約にミャンマーが違反したとして、ICJに提訴した。これに対しミャンマーは「ガンビアは係争の当事国ではない」などとして、本格審理に入る前に却下するよう求めていた。
ICJは22日、ジェノサイドの防止は条約加盟国の「共通の利益」であり、ガンビアにミャンマーを提訴する資格があると認定した。両国はいずれも同条約に加盟している。
ジェノサイドの認定には特定集団を破壊する「意図」があったことを示す必要があり、立証のハードルは高い。判決が出るには数年かかる見通しだ。ICJは20年1月、ミャンマーに対し、ジェノサイドを防止するために「あらゆる措置」を講じることを命じる仮保全措置を出した。
クーデターで全権を掌握したミャンマー国軍の報道官は22年3月の記者会見で「任務遂行中の兵士が罪を犯した可能性はある」としつつ、「国軍はジェノサイドに関与していない」と否定した。
ロヒンギャの多くはミャンマー西部のラカイン州で暮らしていたが、長年にわたりミャンマー国籍を認められていない。17年8月、ロヒンギャの武装集団が治安施設を攻撃した事件をきっかけに国軍が掃討作戦を実施。この結果、70万人を超す難民が隣国バングラデシュに逃れた。
ICJは国連憲章に基づいて設立された国連の機関で、国家間の係争を扱う。同じハーグに本部を置く国際刑事裁判所(ICC)はジェノサイドや戦争犯罪について個人を訴追・処罰する。ICCも19年、ロヒンギャ迫害に関する正式捜査を開始した。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM22D8T0S2A720C2000000/
【ヤンゴン=新田裕一】国際司法裁判所(本部オランダ・ハーグ、ICJ)は22日、ミャンマーのイスラム系少数民族ロヒンギャに対する迫害問題を巡り、不適法な提訴だと主張したミャンマー側の異議申し立てを却下した。今後、ミャンマー国軍が2016~17年にロヒンギャ居住地域で行った掃討作戦がジェノサイド(大量虐殺)に相当するか、本格的な審理に移る見通しだ。
イスラム教徒が多い西アフリカのガンビアは19年11月、特定集団の破壊を意図した大量殺害などを禁じるジェノサイド条約にミャンマーが違反したとして、ICJに提訴した。これに対しミャンマーは「ガンビアは係争の当事国ではない」などとして、本格審理に入る前に却下するよう求めていた。
ICJは22日、ジェノサイドの防止は条約加盟国の「共通の利益」であり、ガンビアにミャンマーを提訴する資格があると認定した。両国はいずれも同条約に加盟している。
ジェノサイドの認定には特定集団を破壊する「意図」があったことを示す必要があり、立証のハードルは高い。判決が出るには数年かかる見通しだ。ICJは20年1月、ミャンマーに対し、ジェノサイドを防止するために「あらゆる措置」を講じることを命じる仮保全措置を出した。
クーデターで全権を掌握したミャンマー国軍の報道官は22年3月の記者会見で「任務遂行中の兵士が罪を犯した可能性はある」としつつ、「国軍はジェノサイドに関与していない」と否定した。
ロヒンギャの多くはミャンマー西部のラカイン州で暮らしていたが、長年にわたりミャンマー国籍を認められていない。17年8月、ロヒンギャの武装集団が治安施設を攻撃した事件をきっかけに国軍が掃討作戦を実施。この結果、70万人を超す難民が隣国バングラデシュに逃れた。
ICJは国連憲章に基づいて設立された国連の機関で、国家間の係争を扱う。同じハーグに本部を置く国際刑事裁判所(ICC)はジェノサイドや戦争犯罪について個人を訴追・処罰する。ICCも19年、ロヒンギャ迫害に関する正式捜査を開始した。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM22D8T0S2A720C2000000/