Merkmal 4.10
https://merkmal-biz.jp/post/8684
●約40年前から遅々として進まず
「動かざること山のごとし」とやゆされてきた、東京都大田区の新空港線(蒲蒲〈かまかま〉線)の新線計画に一筋の光明が差し込み始めたのか――。大田区は2022年2月10日、同線の関連経費約11億9000万円を2022年度予算案に計上した。予算計上そのものは2017年から続けられているが、これまでは1〜2億円だっただけに、「初の10億円の大台乗せで計画に弾みがつきそうだ」と期待する向きがある一方、
「そもそも蒲蒲線を実現させる気はあるのか」と冷めた声もある。この計画、同区内のJR蒲田駅を終着点とする東急多摩川線を実質羽田空港まで延伸するものである。途中から分岐して地下にもぐり蒲田駅と同駅の東約800mにある京急蒲田駅とを横串で刺すようにアンダーパスし、両駅直下に地下駅を設け、東急、京急、JR3路線の乗り換えの利便性向上を目指す。ちなみに「蒲蒲線」の珍名はふたつの蒲田駅の頭文字から取ったものだ。蒲蒲線はさらに東進して京急空港線と接続し、最終的に羽田空港第1・第2ターミナル駅に東急電車が乗り入れるのが目標。なお総延長は約4km、総事業費は当初1800億円と見積もられた。
だが「動かざること〜」とささやかれているように、同区は2017年から予算計上し始めていながら、計画はほとんど動いていない。さらにさかのぼると1980年代半ばに同区が調査を正式に始めてから実に約40年も経過しながら、まだレール1本も引かれていないという、実に残念な新線計画でもある。
ただし国は大いに期待しているようで、2000年代初頭には運輸政策審議会(現在の交通政策審議会)が「2015年までに整備を着手することが適当」と答申するが、関係各位の思惑は一致せず、2015年着工は幻に。
それでも翌2016年に交通政策審議会が「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」の答申に、蒲蒲線の有効性を盛り込み早期実現を要請。そしてこれを受けて、前述のように区が予算計上――というのがこれまでの経緯なのだが、依然として五里霧中の状況が続いているのが実情だ。
●「ふたつの蒲田駅の一体化」という思惑
遅々として進まない大きな理由としては、区、京急、東急の主役3者の思惑がバラバラ、という指摘が以前からなされており、これを「同床異夢」と辛口表現するメディアもあるほどだ。まず計画を主導する太田区にとっては「ふたつの蒲田駅の一体化」が最大の狙いのようで、これを中核にして集客や知名度を高め、蒲田地区の活性化を図るのが目標である。
換言すれば、仮に東急・京急の相互乗り入れが不発でも、蒲蒲線でふたつの蒲田駅が連絡さえすれば、取りあえずは目標を達成できる、と考えても不思議ではないだろう。実際、京急・東急の相互乗り入れに関しては物理的・技術的に難問を抱え難航しており、これに対処する苦肉の策なのだろうか、早期実現を切望する同区は東急多摩川線〜京急蒲田駅を第1期工事として先行整備する案を提案し始めている。まさに「見切り発車」。なお、これに費やされる事業費を1260億円と概算している。
●空港線を持つ京急は消極的?
前のめりの大田区とは対照的に、京急の心境は少々複雑のようだ。そもそも同社には羽田空港と都心を結ぶドル箱の京急羽田線があり「なぜわざわざ、他社に金の卵を産む鶏を渡さなければならないのか」と不満があるとされている。2010年代後半頃から、国はインバウンド(外国人来訪者)急増/観光立国化を成長戦略として推進。首都圏の国際競争力強化を図るため、空港〜都心の直通鉄道の利便性アップを指摘、当然のことながら羽田にも注目が集まった。
と言うのも、京急の羽田〜都心ルートの場合、都心側は品川や相互乗り入れする都営浅草線の新橋、東銀座、日本橋止まりで、山手線の巨大ターミルである東京、新宿、渋谷、池袋に直結していないため、利便性にやや難がある。こうした事情から京急は、あまり乗り気ではないながらも蒲蒲線計画に参画したようだ。
加えて、東急と京急とでは線路幅(ケージ)が違うため線路をつなげられない、という物理的問題が立ちはだかっている。東急(世田谷線を除く)の線路幅は1067mm(狭軌)で、JR在来線や東京メトロの大半、東武鉄道、西武鉄道などと同じだ。対する京急は約40cmも広い1435mm(標準軌)で、実は東海道・山陽新幹線などと同一なのだ。
※以下リンク先で
蒲蒲線の構想図(画像:大田区)
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●約40年前から遅々として進まず
「動かざること山のごとし」とやゆされてきた、東京都大田区の新空港線(蒲蒲〈かまかま〉線)の新線計画に一筋の光明が差し込み始めたのか――。大田区は2022年2月10日、同線の関連経費約11億9000万円を2022年度予算案に計上した。予算計上そのものは2017年から続けられているが、これまでは1〜2億円だっただけに、「初の10億円の大台乗せで計画に弾みがつきそうだ」と期待する向きがある一方、
「そもそも蒲蒲線を実現させる気はあるのか」と冷めた声もある。この計画、同区内のJR蒲田駅を終着点とする東急多摩川線を実質羽田空港まで延伸するものである。途中から分岐して地下にもぐり蒲田駅と同駅の東約800mにある京急蒲田駅とを横串で刺すようにアンダーパスし、両駅直下に地下駅を設け、東急、京急、JR3路線の乗り換えの利便性向上を目指す。ちなみに「蒲蒲線」の珍名はふたつの蒲田駅の頭文字から取ったものだ。蒲蒲線はさらに東進して京急空港線と接続し、最終的に羽田空港第1・第2ターミナル駅に東急電車が乗り入れるのが目標。なお総延長は約4km、総事業費は当初1800億円と見積もられた。
だが「動かざること〜」とささやかれているように、同区は2017年から予算計上し始めていながら、計画はほとんど動いていない。さらにさかのぼると1980年代半ばに同区が調査を正式に始めてから実に約40年も経過しながら、まだレール1本も引かれていないという、実に残念な新線計画でもある。
ただし国は大いに期待しているようで、2000年代初頭には運輸政策審議会(現在の交通政策審議会)が「2015年までに整備を着手することが適当」と答申するが、関係各位の思惑は一致せず、2015年着工は幻に。
それでも翌2016年に交通政策審議会が「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」の答申に、蒲蒲線の有効性を盛り込み早期実現を要請。そしてこれを受けて、前述のように区が予算計上――というのがこれまでの経緯なのだが、依然として五里霧中の状況が続いているのが実情だ。
●「ふたつの蒲田駅の一体化」という思惑
遅々として進まない大きな理由としては、区、京急、東急の主役3者の思惑がバラバラ、という指摘が以前からなされており、これを「同床異夢」と辛口表現するメディアもあるほどだ。まず計画を主導する太田区にとっては「ふたつの蒲田駅の一体化」が最大の狙いのようで、これを中核にして集客や知名度を高め、蒲田地区の活性化を図るのが目標である。
換言すれば、仮に東急・京急の相互乗り入れが不発でも、蒲蒲線でふたつの蒲田駅が連絡さえすれば、取りあえずは目標を達成できる、と考えても不思議ではないだろう。実際、京急・東急の相互乗り入れに関しては物理的・技術的に難問を抱え難航しており、これに対処する苦肉の策なのだろうか、早期実現を切望する同区は東急多摩川線〜京急蒲田駅を第1期工事として先行整備する案を提案し始めている。まさに「見切り発車」。なお、これに費やされる事業費を1260億円と概算している。
●空港線を持つ京急は消極的?
前のめりの大田区とは対照的に、京急の心境は少々複雑のようだ。そもそも同社には羽田空港と都心を結ぶドル箱の京急羽田線があり「なぜわざわざ、他社に金の卵を産む鶏を渡さなければならないのか」と不満があるとされている。2010年代後半頃から、国はインバウンド(外国人来訪者)急増/観光立国化を成長戦略として推進。首都圏の国際競争力強化を図るため、空港〜都心の直通鉄道の利便性アップを指摘、当然のことながら羽田にも注目が集まった。
と言うのも、京急の羽田〜都心ルートの場合、都心側は品川や相互乗り入れする都営浅草線の新橋、東銀座、日本橋止まりで、山手線の巨大ターミルである東京、新宿、渋谷、池袋に直結していないため、利便性にやや難がある。こうした事情から京急は、あまり乗り気ではないながらも蒲蒲線計画に参画したようだ。
加えて、東急と京急とでは線路幅(ケージ)が違うため線路をつなげられない、という物理的問題が立ちはだかっている。東急(世田谷線を除く)の線路幅は1067mm(狭軌)で、JR在来線や東京メトロの大半、東武鉄道、西武鉄道などと同じだ。対する京急は約40cmも広い1435mm(標準軌)で、実は東海道・山陽新幹線などと同一なのだ。
※以下リンク先で
蒲蒲線の構想図(画像:大田区)