新型コロナウイルスのオミクロン株が、重症化リスクの高い高齢者施設を直撃している。
クラスター(感染者集団)の発生が後を絶たず、約1カ月前の7倍に急増。
施設の介護職員は、病床逼迫(ひっぱく)で病院に入れない入所者の容体急変や自身の感染という二重のリスクに直面し疲弊している。
強い感染力と、ワクチン3回目接種の遅れが要因とみられ、国や自治体はスピードアップに躍起だ。
「症状が急変したらどうすれば良いのか」。大阪府にある高齢者施設の男性施設長(52)は頭を抱える。
90代2人と持病のある人の計3人が2月中旬に感染。3回目接種を始める矢先だった。
軽症や無症状のため入院できず施設療養している。
施設長ら約10人が防護服を着て、隔離した3人と、他の入所者約20人のケアに当たる。
歩き回る人もいて、施設内の動線を分ける「ゾーニング」も容易ではない。
東北地方にある高齢者施設。3回目を施設で打ち始めた直後の1月21日、最初の感染者が出た。
「対策を徹底した」ものの、感染者は約1カ月で入所者と職員計約130人に膨れ上がった。系列グループに応援を仰ぎ何とかしのいでいる。
男性幹部(55)は「もう少し早く接種を始めることができていれば状況は違ったかもしれない」と悔やむ。
「問題の核心は高齢者施設で感染が起きていることだ」。2月24日の参院予算委員会。
政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は危機感をあらわにした。
高齢者施設のクラスターは第6波で際立つ。厚生労働省によると発生数は、2月14〜20日の1週間で437件。
約1カ月前の62件(1月10〜16日)から7倍に。2021年夏の第5波では43件(8月16〜22日)が最多だった。
オミクロン株の感染力が強いことに加え、ワクチンの接種状況の違いが背景にある。
希望する高齢者への2回接種は、21年7月末時点でおおむね完了。
一方で3回目を打ち終えたのは、高齢者人口の約44%(今年2月24日時点)にとどまる。
新潟県では2月1〜21日、高齢者施設と障害者施設計19カ所でクラスターが発生。約9割の17施設が3回目未接種だった。
https://mainichi.jp/articles/20220308/ddl/k27/040/345000c