11月6日放送のTBS系「報道特集」の番組テーマ「最も使われている殺虫剤 ネオニコ系農薬 人への影響は」は、農業関係者の間でさまざまな議論を起こしています。
それならば農薬を使わない植物工場の野菜は健康的なのか?
「ネオニコチノイド系農薬」とは、通常の農薬より少量で大きな殺虫効果が得られるもので、地球温暖化による害虫の増加で、近年主力の農薬として使用されています。しかし、その強毒性は以前から指摘されていました。「報道特集」では、ネオニコ系農薬による生態系への悪影響について次のような問題が挙げられました。
@ネオニコ系農薬が使われ始める1993年を境に、島根県宍道湖でワカサギなどの不漁が起こったという東大教授の山室真澄氏による指摘。
A金沢大名誉教授の山田敏郎氏による実験「低濃度ネオニコによるハチの大量失踪」について。
B神戸大学教授の星信彦氏による「ネオニコの人体に与える危険性」についての指摘。
C絶滅危惧1A類に指定されているトキを守るために、JA佐渡がネオニコ系農薬を使用しない農業に転換。
これに反発したのが業界団体「農薬工業会」で、番組放送後、見解を発表。@〜Bについて否定しました。
虫食いなどの発生を確実に防げるため、この農薬は米だけでなく葉物野菜、果物などさまざまな作物に使われていて、高い歩留まりを維持できます。自然環境の共生の大切さは認識しているものの、収入を考えると使用がやめられないというのが、大半の農家の意見ではないでしょうか。
■問題解決は消費者次第
しかし農薬に関しては矛盾も指摘されています。例えば、各県の栽培基準の半分の農薬量で栽培する作物を「特別栽培」といい、一種ブランド化されています。しかし、この特別栽培にもネオニコ系農薬が使用されているのです。これは消費者の誤解を招くといっていいでしょう。
私は2年に1度、全国20カ所の生産地を訪問して、田んぼでカエルとサギの生息数を観察しています。周辺の生態系の様子を把握するためですが、近年、実感しているのが昆虫の数が確実に減っていることです。
今回、番組内容に反論した農薬業界には、ネオニコ系農薬に代わる、環境負荷の少ない農薬の開発を進めてほしいところですが、実用化までに膨大な時間がかかることでしょう。
現状、ご存じのように、虫食いなど少しでも傷みのある農作物は、正規の市場ルートには流れないことになっていますが、こうした流通構造は消費者の要望によって成立しています。見た目のよさ、もしくは安全面や健康面のどちらを重視するか。消費者自身が考えを改める局面に来ているのではないでしょうか。
(文=常本泰志/米流通評論家)
https://news.yahoo.co.jp/articles/df11d5bd1e2812484167c8701cda29458762e8e0
それならば農薬を使わない植物工場の野菜は健康的なのか?
「ネオニコチノイド系農薬」とは、通常の農薬より少量で大きな殺虫効果が得られるもので、地球温暖化による害虫の増加で、近年主力の農薬として使用されています。しかし、その強毒性は以前から指摘されていました。「報道特集」では、ネオニコ系農薬による生態系への悪影響について次のような問題が挙げられました。
@ネオニコ系農薬が使われ始める1993年を境に、島根県宍道湖でワカサギなどの不漁が起こったという東大教授の山室真澄氏による指摘。
A金沢大名誉教授の山田敏郎氏による実験「低濃度ネオニコによるハチの大量失踪」について。
B神戸大学教授の星信彦氏による「ネオニコの人体に与える危険性」についての指摘。
C絶滅危惧1A類に指定されているトキを守るために、JA佐渡がネオニコ系農薬を使用しない農業に転換。
これに反発したのが業界団体「農薬工業会」で、番組放送後、見解を発表。@〜Bについて否定しました。
虫食いなどの発生を確実に防げるため、この農薬は米だけでなく葉物野菜、果物などさまざまな作物に使われていて、高い歩留まりを維持できます。自然環境の共生の大切さは認識しているものの、収入を考えると使用がやめられないというのが、大半の農家の意見ではないでしょうか。
■問題解決は消費者次第
しかし農薬に関しては矛盾も指摘されています。例えば、各県の栽培基準の半分の農薬量で栽培する作物を「特別栽培」といい、一種ブランド化されています。しかし、この特別栽培にもネオニコ系農薬が使用されているのです。これは消費者の誤解を招くといっていいでしょう。
私は2年に1度、全国20カ所の生産地を訪問して、田んぼでカエルとサギの生息数を観察しています。周辺の生態系の様子を把握するためですが、近年、実感しているのが昆虫の数が確実に減っていることです。
今回、番組内容に反論した農薬業界には、ネオニコ系農薬に代わる、環境負荷の少ない農薬の開発を進めてほしいところですが、実用化までに膨大な時間がかかることでしょう。
現状、ご存じのように、虫食いなど少しでも傷みのある農作物は、正規の市場ルートには流れないことになっていますが、こうした流通構造は消費者の要望によって成立しています。見た目のよさ、もしくは安全面や健康面のどちらを重視するか。消費者自身が考えを改める局面に来ているのではないでしょうか。
(文=常本泰志/米流通評論家)
https://news.yahoo.co.jp/articles/df11d5bd1e2812484167c8701cda29458762e8e0