【ニューヨーク=野村優子、ロンドン=佐竹実】米国は8日、新型コロナウイルスワクチンの接種証明の提示などを条件に、外国人観光客の入国制限を緩和した。これまで入国を原則禁止していた33カ国からの旅行者は、2020年3月以来およそ1年8カ月ぶりに入国できるようになった。
空路で入国する外国人には、ワクチン接種証明と渡航前72時間以内に発行された新型コロナの陰性証明書の提示を求める。認められるのは、米規制当局や世界保健機関(WHO)が承認するワクチンだ。18歳未満は接種証明が免除されるが、渡航前24時間以内の陰性証明が必要になる。
米国は20年3月に入国制限を導入し、過去14日間以内にシェンゲン協定加盟の26カ国や、英国、中国、インドなどに滞在した外国人の入国を原則禁止していた。全米旅行産業協会によると、これらの国からの旅行者は、2019年に全体の53%を占めたという。もっとも、規制の対象外だった日本などは陰性証明の提示に加えてワクチン接種証明も必要となり、入国条件が厳しくなったことになる。
航空大手では、入国緩和に伴う需要増が顕著になっている。デルタ航空によると8日は38カ国から139便が米国に到着するが、全てほぼ満席。10月に緩和策が発表されて以降、発表前に比べて国際線の予約が5.5倍に膨らんだという。米メディアによると、ユナイテッド航空は緩和を受けて外国人の乗客が50%増えると見込む。
特に大西洋を横断するロンドンーニューヨーク便は、航空会社にとってドル箱路線だ。各航空会社は渡航規制の解除を両政府に求めてきた。英ヴァージン・アトランティックの場合、コロナ前は北米便が売上高の7割を占めていた。同社とそのライバルである英ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)は8日、ヒースロー空港をニューヨークに向けて同時に離陸して再開を記念した。
8日朝の便に搭乗したBAのショーン・ドイル最高経営責任者(CEO)は「600日以上の断絶を経て、英米の大西洋航路が再開したことを祝福する日だ。世界をつないで英国経済の回復を支えるには航空便が不可欠だ」と述べた。ニューヨーク市のジョン・F・ケネディ空港では、BA便で到着して家族との再会を喜ぶ人の姿が見られた。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN08CZG0Y1A101C2000000/