47・1%。今回の衆院選で宮城県内6選挙区に立候補した17人に占める女性(8人)の割合は、10人以上が立候補した都道府県では最も高く、わずか17・7%と足踏みした全国平均を大きく上回った。女性候補の増加は有権者の選択肢の幅を広げ、国会が抱えるジェンダーギャップ(男女格差)解消に向けた第一歩となるだけに誇れる数字だが、この流れを続けるには、依然、大きな壁がある。
県内選挙区の女性候補数は政党別で立憲3▽自民、共産、維新、N党、無所属各1人。
「この世界に入って『女性』『若い』と初めて言われた」。選挙初挑戦の立憲3区、大野園子氏は候補者最若手の33歳。9月の集会で、会社員時代にはあり得なかった政治の世界の「時代遅れの感覚」を率直に語った。
国会はジェンダー平等が遅れに遅れている。第5次男女共同参画基本計画は、国会議員の女性候補者の比率を2025年までに35%にする目標を掲げるが、今回の衆院選では17・7%と約半分。政党別では自民9・8%▽立憲18・3%▽公明7・6%▽共産35・4%▽維新14・6%――などだった。
選挙活動で、自分が好きな「アクアマリン」(青緑色)をイメージカラーにした大野氏。選挙戦を振り返り、「選挙に出る女性は、周囲からどう見られようと我を通さなければできない。現実的な人は立候補しない」。再挑戦するつもりだが「性別よりも政策で選ばれる社会に」と望む。
一方、自民唯一の女性候補の5区の森下千里氏は「やわらかいイメージ」としてたすきもズボンも、髪を束ねるシュシュもピンクで統一し「女性らしさ」を前面に。高市早苗政調会長や三原じゅん子参院議員ら女性幹部が次々来援。陣営幹部は「女性の時代を演出した」と明かす。森下氏は「選択的夫婦別姓」に県内女性候補で唯一反対する保守的な立場で、相手陣営からは「中年男性受けを狙っている」との指摘もあった。ただ出口調査では「多様性」に敏感な20〜30代に浸透し、6万票あまりを集めた。
女性比率を高める「クオータ制」導入などを提言する辻村みよ子・東北大名誉教授(憲法学)は、47・1%の数字に「女性が政治に参加する機運を高め、後に続くロールモデル(手本)になる」と評価。仙台市で2代続く女性市長の存在や、東日本大震災の避難所運営の課題などを通じ、女性の視点を持つリーダーの必要性を感じる人が多い点を挙げた。
ただ、比例復活を含めて当選した女性は2人。辻村教授は与党の女性候補が少ない点を問題視し、地方議会から増やし裾野を広げるほか「定年制を設け、引退する人の後任は女性にするなど、改革が必要だ」と指摘する。
女性3人と男性1人が争った1区。激戦を制した自民の土井亨氏の陣営からは「女性支持票が割れてくれた」と喜ぶ声も聞かれたが、敗れた岡本章子氏はその見方を否定。「時代的には非常に画期的だ。男女のどちらを選ぶかではなく、女性の中でも誰がいいのか、一人一人をみてもらう選挙にできた」と強調。岡本氏は比例復活当選した。
35%目標まで残り4年。来年に参院選も控えるが、今後の候補者の顔ぶれに、政党の「本気度」が試される。【衆院選取材班】
毎日新聞 2021/11/4 10:38(最終更新 11/4 10:38) 1297文字
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