大阪市福島区の松本病院を運営する医療法人「友愛会」(同区、今年8月に経営破綻)への市当局による過去の巨額融資が再びクローズアップされている。市は平成9年、法人などに計10億円を無担保で貸し付けたが、今も2億円以上が未返済だ。融資の根拠や経緯など不明瞭な点があるが、法人の理事長(故人)と「影の市長」とも呼ばれた当時の助役が高校の同級生だったという関係性を指摘する声もあり、「貸し付けありきだった」との批判は根強い。税金が原資のずさんな融資はなぜ行われたのか。
■異例の貸付に「伏魔殿といわれた体質」指摘も
「普通の感覚ではありえない融資だ。当時伏魔殿といわれた大阪市役所の体質だ」。先月10日、松井一郎市長は記者団にこう述べ、「負の遺産」であることを強調した。
市は9年3月、友愛会の系列で、理事長職を同じ男性が務める社会福祉法人「友朋会」(福島区)が特別養護老人ホームを建設する際、5億1千万円を融資。病院との合築だったため整備費用として、友愛会にも4億9千万円を貸し付けた。
市によると、特養など高齢者福祉施設の整備時には、総事業費から国や市による補助金を差し引いた法人負担分を全額政府出資の特殊法人「社会福祉・医療事業団」(現福祉医療機構)から融資を受ける形が一般的だったという。
ただ、友愛会が所有する土地に根抵当権が設定されていることを理由に同事業団からの貸し付けを受けられなかった。9年当時は同区に特養がなく、区内での整備が急がれる事情もあり、市は「福祉と医療の緊密な連携のもとに福祉サービスを提供できる」(23年の市議会委員会答弁)として、「個別に判断をして貸し付けを行った」(同)。医療法人に対する貸し付け自体が極めて異例だという。
当初は29年3月に完済される予定だったが、両法人の要請に基づき、11年と17年、令和2年と3度、返済計画が見直された。友愛会から大阪地裁に民事再生が申し立てられた今年8月26日現在、利息を含み約2億2千万円が未返済となっており、友朋会は令和10年度に完済予定としている。
平成30年11月の市監査結果報告によると、市内部にも10億円の貸し付けにかかる「合理的な判断基準とその基準を満たすとの判定結果」を示した資料は存在しない。議会でのオープンな議論や報告もなかった。
■助役の母に個室用意も
ささやかれるのは、両法人理事長だった男性と「影の市長」とも呼ばれた助役(12年3月末に退任)の関係性だ。
2人は高校の同級生で、融資の翌年には、助役の母親に特養の個室が用意され、一般入所希望者の利用を断りつつ、ショートステイ(短期入所)扱いで母親の入所を長期間続けていたことが明らかになった。
市関係者によると、男性は5年の市立総合医療センター(都島区)の開設にあたり、経営が圧迫されるとして、難色を示す周辺医院を「自分が納得させた」と言い回っていたという。
そのため「市は男性に貸しがあった」(市関係者)とされる一方、「無理難題を押し付けるやっかいな存在」(別の市関係者)でもあり、何かを忖度(そんたく)した当時のごく限られた市幹部が独断で融資を決めたとの見方がある。とはいえ、20年以上前の事案で詳しい経緯は判然としないのが実情だ。
友愛会の経営破綻をめぐっては、同法人が26〜29年に入院基本料や回復期リハビリテーション病棟入院科の施設基準を満たさず、虚偽の届け出で診療報酬を請求した疑いが浮上。法人側は債権者に対し、所管する近畿厚生局が不正と判断すれば、多額の返済債務が生じる恐れがあり、民事再生法を適用した直接的な原因になったと説明している。
※省略
■過去には同和対策事業でずさんな対応も
大阪市によるずさんな税投入が指摘されたことは過去にもあった。同和対策事業と関係が深く、平成17年に経営破綻した旧芦原病院(同市浪速区、事業譲渡)に対する多額の支援をめぐり、市は138億円を焦げ付かせた。
芦原病院は昭和32年に芦原診療所として開設。45年には、被差別部落の医療改善を担う同和地区医療センターに位置付けられた。市は43年以降、破綻に至るまで補助金と貸付金計約320億円の支援を実施した。
平成14〜16年度に市が備品、工事補助金として支出した補助金4億8900万円については、実態と異なる申請書や報告書を市側が捏造(ねつぞう)し、病院側が運転資金など別用途に流用した疑いも発覚。市民からすれば納得のし難い厚遇ぶりが明らかになった。
産経新聞 10/13(水) 13:11配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20211013-00000043-san-soci
■異例の貸付に「伏魔殿といわれた体質」指摘も
「普通の感覚ではありえない融資だ。当時伏魔殿といわれた大阪市役所の体質だ」。先月10日、松井一郎市長は記者団にこう述べ、「負の遺産」であることを強調した。
市は9年3月、友愛会の系列で、理事長職を同じ男性が務める社会福祉法人「友朋会」(福島区)が特別養護老人ホームを建設する際、5億1千万円を融資。病院との合築だったため整備費用として、友愛会にも4億9千万円を貸し付けた。
市によると、特養など高齢者福祉施設の整備時には、総事業費から国や市による補助金を差し引いた法人負担分を全額政府出資の特殊法人「社会福祉・医療事業団」(現福祉医療機構)から融資を受ける形が一般的だったという。
ただ、友愛会が所有する土地に根抵当権が設定されていることを理由に同事業団からの貸し付けを受けられなかった。9年当時は同区に特養がなく、区内での整備が急がれる事情もあり、市は「福祉と医療の緊密な連携のもとに福祉サービスを提供できる」(23年の市議会委員会答弁)として、「個別に判断をして貸し付けを行った」(同)。医療法人に対する貸し付け自体が極めて異例だという。
当初は29年3月に完済される予定だったが、両法人の要請に基づき、11年と17年、令和2年と3度、返済計画が見直された。友愛会から大阪地裁に民事再生が申し立てられた今年8月26日現在、利息を含み約2億2千万円が未返済となっており、友朋会は令和10年度に完済予定としている。
平成30年11月の市監査結果報告によると、市内部にも10億円の貸し付けにかかる「合理的な判断基準とその基準を満たすとの判定結果」を示した資料は存在しない。議会でのオープンな議論や報告もなかった。
■助役の母に個室用意も
ささやかれるのは、両法人理事長だった男性と「影の市長」とも呼ばれた助役(12年3月末に退任)の関係性だ。
2人は高校の同級生で、融資の翌年には、助役の母親に特養の個室が用意され、一般入所希望者の利用を断りつつ、ショートステイ(短期入所)扱いで母親の入所を長期間続けていたことが明らかになった。
市関係者によると、男性は5年の市立総合医療センター(都島区)の開設にあたり、経営が圧迫されるとして、難色を示す周辺医院を「自分が納得させた」と言い回っていたという。
そのため「市は男性に貸しがあった」(市関係者)とされる一方、「無理難題を押し付けるやっかいな存在」(別の市関係者)でもあり、何かを忖度(そんたく)した当時のごく限られた市幹部が独断で融資を決めたとの見方がある。とはいえ、20年以上前の事案で詳しい経緯は判然としないのが実情だ。
友愛会の経営破綻をめぐっては、同法人が26〜29年に入院基本料や回復期リハビリテーション病棟入院科の施設基準を満たさず、虚偽の届け出で診療報酬を請求した疑いが浮上。法人側は債権者に対し、所管する近畿厚生局が不正と判断すれば、多額の返済債務が生じる恐れがあり、民事再生法を適用した直接的な原因になったと説明している。
※省略
■過去には同和対策事業でずさんな対応も
大阪市によるずさんな税投入が指摘されたことは過去にもあった。同和対策事業と関係が深く、平成17年に経営破綻した旧芦原病院(同市浪速区、事業譲渡)に対する多額の支援をめぐり、市は138億円を焦げ付かせた。
芦原病院は昭和32年に芦原診療所として開設。45年には、被差別部落の医療改善を担う同和地区医療センターに位置付けられた。市は43年以降、破綻に至るまで補助金と貸付金計約320億円の支援を実施した。
平成14〜16年度に市が備品、工事補助金として支出した補助金4億8900万円については、実態と異なる申請書や報告書を市側が捏造(ねつぞう)し、病院側が運転資金など別用途に流用した疑いも発覚。市民からすれば納得のし難い厚遇ぶりが明らかになった。
産経新聞 10/13(水) 13:11配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20211013-00000043-san-soci