新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)入りから数週間後、ソレン・ブロストロム氏は、
ほとんどの保健当局者が避けていた話題に踏み込んだことで国際的に注目を浴びた。独身者の性行為とコロナの関係についてだ。
デンマークは今、国民の信頼を享受している。EU加盟国でワクチン接種率がマルタに次ぐ2位となっており、
コロナに伴う負担を低水準に抑えながら規制措置の段階的な解除が可能になっている。
ブロストロム氏は冬季の感染急増の可能性に備えながら、明確で直接的なコミュニケーションを続けている。
コペンハーゲンのイスラム教徒のワクチン接種を推進するため市内3カ所のモスクで呼び掛けを行う機会も得た。
デンマークの人口は約580万人。過去1カ月の1日の平均感染者数は900人を下回っており、
この半年の死者数は200人をやや上回る程度。
4月下旬以降、レストランやスポーツ会場の再開を徐々に進めており、マスク着用義務は6月に解除した。
10日からは公的イベントでのいわゆるコロナパスポート提示も必要なくなり、最後の規制措置が解除される。
デンマークのアプローチは、デルタ変異株が広がる中でワクチン接種推進によって正常化を進めようとしている多くの国にとって明るい兆しだ。
デンマークでもデルタ株の感染が中心となっている。
ブロストロム氏によると、デンマークでは医療従事者の99%、50歳以上の95%がワクチン接種を完了したと推計される。
人口の80%余りが免疫を獲得する見込みで、「それは良いことだが十分ではない」と語った。
同氏の現実主義的な考え方は、コロナ感染拡大の状況でも独身者は性行為をしてもいいのかとの2020年4月の記者会見での質問に対する回答で脚光を浴びた。
「私の答えはもちろん可能だというものだった。われわれは性的な存在だ。性行為は健康的で良いことだ」とブロストロム氏は振り返る。
インターネット上では「デンマーク保健庁はセックスに賛成だと情報が広がった」という。
ブロストロム氏は精液や膣液を通じてコロナに感染することはないが、
濃厚な身体的接触を通じてウイルスを吸い込むリスクはあると説明。同氏は10年前に政府入りする前は産婦人科の医師だった。
同氏はその後、他国が行っている勧告をチェックした結果、デンマーク保健庁がコロナ危機時の性行為について検証を行い
ウェブサイト上で提言を行った数少ない当局の一つであることを知ったという。
「コロナパンデミック時の安全な性行為についてアドバイスを提供していた当局は実質的に皆無だった。
セックスは人間の健康に関わる問題であるため、当然ながら私は驚いた」と語った。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-09-09/QZ56X9T1UM1001