主要20カ国・地域(G20)は23日、イタリア・ナポリで気候・エネルギー相会合を開いた。温暖化ガスの排出量が多い石炭火力発電の縮小や廃止に関して議論したが、具体策や数値目標などで合意に至らず、10月に開かれるG20首脳会合に持ち越した。
G20で気候変動とエネルギーの合同閣僚会議を開くのは初めてで、日本からは小泉進次郎環境相らが出席した。
日本の環境省などによると、温暖化ガス排出量の削減目標については「2030年時点の引き上げを目指す」ことでは合意した。だが気温上昇を産業革命前と比べて1.5度以内に抑える目標の表現などを巡って各国の調整が長引き、通常は閉幕直後に公表する共同声明のとりまとめも遅れている。新興国からの慎重な声が多かったためとみられる。
共同声明には、10月末から英国で開く第26回気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)までに、各国が30年の野心的な排出削減目標を更新したり通報したりすることをめざすと記す方向だ。日米などすでに実施済みの国には求めていない。
主要7か国(G7)首脳会議で6月、50年までに温暖化ガスの排出量を実質ゼロにする目標と、それに整合する野心的な30年目標で合意している。G20には50年ゼロを表明していない国もあり、今回の合意で30年目標をどこまで引き上げるか引き続き各国判断に委ねられる部分が大きい。
G20はG7に中国やインド、ロシアといった新興国などが加わり、温暖化ガスの排出量で世界の約8割を占める。世界の気候変動対策が成功するにはG20の協調が欠かせないが、新興国は石炭火力への依存度が高く、踏み込んだ合意に至るのに難しい状況が改めて浮き彫りになった。
COP26に向けて、削減目標引き上げや温暖化による環境変化への適応策、途上国を支援する資金拠出などをめぐって交渉が続く。G20は野心的でバランスの取れた内容で合意できるように協調することを確認した。
日本経済新聞 2021年7月24日 9:29
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