私たちの生活に入り込んだ多くの化学物質は、便利で快適な現代生活を可能にしてくれている反面で、思わぬ健康被害をもたらす恐れがある。
そんな「疑わしい化学物質」の1つが、シャンプーや洗顔料、デオドラント、潤滑油やローションなどに使われ、パック入り食品の保存料としても一般的なパラベンだ。防腐剤のパラベンは、微生物の繁殖を防ぐために使われる。
パラベンは口や皮膚を通して簡単に体内に吸収され、内分泌攪乱物質(環境ホルモン)として働く。内分泌攪乱物質は、細胞のホルモン受容体を活性化することでホルモンの作用を模倣し、体内で生成された本来のホルモンの働きを阻害する。
パラベンは、実験動物をがんにし、人間の場合には――直接的な因果関係は証明されていないにしろ――さまざまな種類のがんの発症に“関与”してきた。
たとえば、乳がん患者の腫瘍からは、パラベンが検出されている。だからと言って、パラベンが乳がんの原因だと証明するわけではないが、ホルモンの正常な働きを阻害することから、乳がんの原因が疑われるのももっともだろう。
食事を通して体内に入ったパラベンは、肝臓や腎臓によって“解毒”される仕組みだが、皮膚から吸収されたパラベンは蓄積しやすい。
パラベン入りのクリームを毎日たっぷり皮膚に塗っていれば、口からの摂取と合わせて、習慣的に体内に取り込んでいることになり、かなり懸念される。
しかし、いい知らせもある。パラベン入り製品の使用をやめれば、ほかの内分泌攪乱物質と同様、やがて体外に排出される。今ではパラベンフリーの製品も市場に出回っている。
パラベンの健康被害を防ぐ確実な方法はひとつ――口に入れる気になれないものを、皮膚につけないことだ。
サンブロックもまた、注意が必要だ。化学成分を使ったごく一般的なサンブロックの危険性のひとつは、紫外線を浴びると非常に有害な物質に変化することだ。最近になってそう証明されたのが、アボベンゾンという化学物質である。
ドラッグストアで買えるアボベンゾン入りのサンブロックを、紫外線と塩素消毒されたプールの水で実験したところ、アボベンゾンは、肝臓や腎臓の障害、神経系障害、がんを引き起こすことがわかっている化学物質に変化したという論文がある。
このほか、オキシベンゾンという化学物質は、内分泌攪乱物質の恐れがある。私たちは毎年夏が来るたびに、こうしたサンブロックをからだにたっぷりと塗り込んでいるのだ。
パラベンのように、アボベンゾンやオキシベンゾンも、皮膚から血液中に簡単に吸収される。ある論文によれば、サンブロックを用法通りにからだ全体に塗ったあと、さらに塗り直したところ、これらの化合物の血中濃度が跳ね上がったという。
アメリカ食品医薬品局が定める「毒性学的懸念の閾値」――それ以下では有害な影響が現れないとする許容摂取量――を、はるかに超える血中濃度だった。
アボベンゾン、オキシベンゾン、オクトクリレン、エカムスルを含むサンブロック(紫外線をブロックする)はできるだけ避けよう。これらは日焼け止めだけでなく、リップクリームや口紅にも使われている。必ず成分を確認してから選ぶようにしよう。
2021/07/14 10:00
https://toyokeizai.net/articles/-/436509
そんな「疑わしい化学物質」の1つが、シャンプーや洗顔料、デオドラント、潤滑油やローションなどに使われ、パック入り食品の保存料としても一般的なパラベンだ。防腐剤のパラベンは、微生物の繁殖を防ぐために使われる。
パラベンは口や皮膚を通して簡単に体内に吸収され、内分泌攪乱物質(環境ホルモン)として働く。内分泌攪乱物質は、細胞のホルモン受容体を活性化することでホルモンの作用を模倣し、体内で生成された本来のホルモンの働きを阻害する。
パラベンは、実験動物をがんにし、人間の場合には――直接的な因果関係は証明されていないにしろ――さまざまな種類のがんの発症に“関与”してきた。
たとえば、乳がん患者の腫瘍からは、パラベンが検出されている。だからと言って、パラベンが乳がんの原因だと証明するわけではないが、ホルモンの正常な働きを阻害することから、乳がんの原因が疑われるのももっともだろう。
食事を通して体内に入ったパラベンは、肝臓や腎臓によって“解毒”される仕組みだが、皮膚から吸収されたパラベンは蓄積しやすい。
パラベン入りのクリームを毎日たっぷり皮膚に塗っていれば、口からの摂取と合わせて、習慣的に体内に取り込んでいることになり、かなり懸念される。
しかし、いい知らせもある。パラベン入り製品の使用をやめれば、ほかの内分泌攪乱物質と同様、やがて体外に排出される。今ではパラベンフリーの製品も市場に出回っている。
パラベンの健康被害を防ぐ確実な方法はひとつ――口に入れる気になれないものを、皮膚につけないことだ。
サンブロックもまた、注意が必要だ。化学成分を使ったごく一般的なサンブロックの危険性のひとつは、紫外線を浴びると非常に有害な物質に変化することだ。最近になってそう証明されたのが、アボベンゾンという化学物質である。
ドラッグストアで買えるアボベンゾン入りのサンブロックを、紫外線と塩素消毒されたプールの水で実験したところ、アボベンゾンは、肝臓や腎臓の障害、神経系障害、がんを引き起こすことがわかっている化学物質に変化したという論文がある。
このほか、オキシベンゾンという化学物質は、内分泌攪乱物質の恐れがある。私たちは毎年夏が来るたびに、こうしたサンブロックをからだにたっぷりと塗り込んでいるのだ。
パラベンのように、アボベンゾンやオキシベンゾンも、皮膚から血液中に簡単に吸収される。ある論文によれば、サンブロックを用法通りにからだ全体に塗ったあと、さらに塗り直したところ、これらの化合物の血中濃度が跳ね上がったという。
アメリカ食品医薬品局が定める「毒性学的懸念の閾値」――それ以下では有害な影響が現れないとする許容摂取量――を、はるかに超える血中濃度だった。
アボベンゾン、オキシベンゾン、オクトクリレン、エカムスルを含むサンブロック(紫外線をブロックする)はできるだけ避けよう。これらは日焼け止めだけでなく、リップクリームや口紅にも使われている。必ず成分を確認してから選ぶようにしよう。
2021/07/14 10:00
https://toyokeizai.net/articles/-/436509