新型コロナウイルスに感染した子どもは、重症化や死亡のリスクは低いものの、数週間から数か月続く後遺症を抱える可能性がある。
こうした後遺症が発生する頻度や原因については、現段階ではまだよくわかっていない。
新型コロナ後遺症の原因は?
研究者たちは、症状が一部の子どもと大人に持続する理由をわからずにいる。
こういった影響の長期化は、ウイルスによって引き起こされた臓器損傷の結果という可能性がある。
あるいは、体内に残っているウイルスタンパク質が慢性的な炎症を引き起こしているのかもしれない。
ウイルスがまだ非常に低いレベルで複製されている可能性があると推測する科学者もいる。
わかっていることは、症状の長期化が新型コロナウイルス感染症に固有のものではないということだ。
別のウイルスも感染後症候群を引き起こす可能性がある。
しかし、症状が新型コロナウイルスによって直接引き起こされているのか、
それとも間接的に関連しているのかを判断するのは往々にして難しいと、パテル医師は言う。
学校の閉鎖や社会的距離の確保といったパンデミック絡みのストレスや社会的変化は、
子どものメンタルヘルスに深刻な影響を与える可能性があるからだ。
どのような症状があるか?
子どもに起こる新型コロナ後遺症の症状は、疲労、筋肉や関節の痛み、頭痛、味覚や嗅覚の喪失、
呼吸器系の問題、胸の圧迫感や痛み、動悸など、大人に見られる症状に酷似している。
「私たちは、本当に長く続く頭痛、ブレインフォグ(頭がもやもやする症状)、
集中力の問題を訴えている多くの子どもたちを見てきました」とジョンストン医師は話す。
どのような人にリスクがあるか?
新型コロナ後遺症のリスクのある人についても、研究者たちに適切な答えはない。
いくつかのデータは、年長の子どもは年少の子どもよりも新型コロナ後遺症を発症するリスクが高いことを示唆している。
しかし、他の危険因子は不明なままだ。たとえば、当初発病した際の重症度がリスクに影響を与えるという説得力のある証拠は存在しない。
「新型コロナ後遺症を訴えている子どもたちの多くは、とても軽症であったか、完全に無症状でした」とジョンストン医師は言う。
新型コロナ後遺症を発症する素因となる可能性がある基礎疾患との明確な関連性も存在しない。
医師がどの子どもに最も高いリスクがあるかを把握していれば、「おそらく予防策があるでしょう」とジョンストン医師は話す。
「中には、何か月もの間苦しんだ後、ようやくクリニックを訪れる子どももいます」。
新型コロナ後遺症の診断と治療法は?
新型コロナ後遺症の検査はない。医師は患者の経緯に耳を傾け、症状を記録し、以前に新型コロナウイルスに感染していたかどうかを評価して臨床診断をする。
新型コロナ後遺症の原因はわかっていないので、医師が治すことはできない。医師たちができる最善のことは対症療法だ。
ごく一部の診療所は、症状がある子どもたちの治療に特化した新型コロナ後遺症科を設置している。
ワクチン接種は新型コロナ後遺症の症状を抑制するか?
ワクチン接種により新型コロナ後遺症の症状を抑制できる可能性はある。 ワクチン接種が役に立つことを示唆する事例報告は数多く存在する。
また、英国の900人を対象とした調査では、ワクチン接種により回答者の57%で症状の程度が改善されたことがわかった(一方で、7%弱が症状の悪化に見舞われた)。
ワクチンによって残っているウイルスやウイルスの残骸を排除できるのかもしれないという仮説を立てている免疫学者もいる。 しかし、子どもに特化したデータはまだ存在しない。
https://www.technologyreview.jp/s/250681/heres-what-we-know-about-kids-and-long-covid/