開幕が迫る東京五輪について、日本でも話題を呼んだ「ぼったくり男爵」の記事を書いた米有力紙「ワシントン・ポスト」のコラムニスト、
サリー・ジェンキンスが、このたび再び辛辣なコラムを執筆した。クーリエ・ジャポンはこの最新のコラムを緊急全訳でお届けする。
東京五輪は安全、それも完全に安全だ。どうしてわかるのかって?
フォン・ボッタクリ男爵をはじめとする国際オリンピック委員会(IOC)の大御所がそう断言しているからだ。
それに、IOCが断言するなら信頼できる、そうじゃないだろうか? 大御所方を見てほしい。濃い色のラペル(下襟)に金のピン、
縁なしのメガネを身につけていて、とても権威がある。彫像のように不動で強固。生身の人間に似ているのは単なる偶然だ。
IOCに安心感を感じるコツは、彼らの姿勢やプロパガンダを鵜呑みにして、不穏な秘密の裏側の目隠しを無視することだ。
世界的なパンデミックと日本の緊急事態の最中に夏季大会を開催すれば変異株のスーパー・スプレッダー・イベントになるのではないか、
と恐れているのなら、IOCの弁護士が選手に署名を求めているゾッとするような自己責任同意書に目をつぶるのが一番だ。
この自己責任同意書は、東京と世界各地を行き来する際に起こり得るいかなる事態に対しても、
IOC関係者のあらゆる責任を未来永劫免除するものだ。
同意書には「私は、新型コロナウイルスやその他の感染症の伝染または猛暑などの健康上の危険にさらされる可能性によって引き起こされる、
本大会への参加および/またはパフォーマンスへのあらゆる影響、重症または死亡に至った場合も含め、
自分自身のリスクと責任において本大会に参加することに同意します……」と記されている。
そう、この安全な、非常に安全な、最も安全な大会のために、IOCが義務付けた参加同意書に新たに挿入された特別な言葉を見逃してほしい。
「選手村は安全な場所であり、オリンピックおよびパラオリンピックは安全な方法で開催されます」と、
トーマス・バッハIOC会長は5月19日、冷静に抑揚のない口調で語った。バッハ会長は、6月29日に五輪コミュニティに宛てた書簡の中で、
催眠術師がうつろに反復するように、7段落の中で3回にわたって「安全で安心」というフレーズを繰り返した。
「私たちは安全で安心な大会をお届けする段階に入っています」と、バッハ会長は書いている。
ほら、まだ始まってすらいないのに、すでに安全なのだ。
オーストラリアのニュースは読まないように。環太平洋地域で猛威を振るった変異株により、シドニーはロックダウンされている。
それから、ニューサウスウェールズ州のグラディス・ベレジクリアン州首相が、レストランやショッピングモールでの「一瞬の」接触で数人が感染したと話したが、それも聞いてはいけない。
「このデルタ株(インド型)は……人から人へと飛び回るということにかけては、実に金メダルものだ」と、ベレジクリアン州首相は述べている。
た、オーストラリア代表チームの医師のデビッド・ヒューズ博士の話にも耳を貸してはいけない。博士は東京の空港や選手村のジムや食堂を「危険エリア」と呼んでいる。
代わりに、クロロホルムのように心地よいジョン・コーツIOC副会長の言葉に耳を傾けよう。
「この大会が参加者にとっても日本のみなさんにとっても安全なものであることは、これまで以上に明らかです」と、5月に約束してくれた。
9万3000人の選手、コーチ、役員、スタッフ、メディアが、世界中から3600の部屋に1万8000のベッドを備えた選手村にやってくる。
パンデミック下でのバスルームの共用? なんら危険はない。安全だ。完璧に。
日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長は、耳当たりのよい声明の中でそう断言している。
「コロナ禍で分断された世界で、スポーツは人と人をつなぐ」と。
選手村のスタッフ2人が7月6日、3000人収容の大食堂の同じテーブルで食事をした後、陽性反応が出たことも気にしてはいけない。
ウガンダ選手団の2人がトレーニングのために日本に到着した直後にデルタ株の陽性反応を示したことも、重ね重ねお願いするが、目を背けてほしい。
ワクチン接種は完了していた選手団のうち、1人は空港で、もう1人は大阪まで300マイル移動した後に陽性反応が出て、結果的に7人の関係者と運転手が隔離されたが。
https://courrier.jp/news/archives/252544/
サリー・ジェンキンスが、このたび再び辛辣なコラムを執筆した。クーリエ・ジャポンはこの最新のコラムを緊急全訳でお届けする。
東京五輪は安全、それも完全に安全だ。どうしてわかるのかって?
フォン・ボッタクリ男爵をはじめとする国際オリンピック委員会(IOC)の大御所がそう断言しているからだ。
それに、IOCが断言するなら信頼できる、そうじゃないだろうか? 大御所方を見てほしい。濃い色のラペル(下襟)に金のピン、
縁なしのメガネを身につけていて、とても権威がある。彫像のように不動で強固。生身の人間に似ているのは単なる偶然だ。
IOCに安心感を感じるコツは、彼らの姿勢やプロパガンダを鵜呑みにして、不穏な秘密の裏側の目隠しを無視することだ。
世界的なパンデミックと日本の緊急事態の最中に夏季大会を開催すれば変異株のスーパー・スプレッダー・イベントになるのではないか、
と恐れているのなら、IOCの弁護士が選手に署名を求めているゾッとするような自己責任同意書に目をつぶるのが一番だ。
この自己責任同意書は、東京と世界各地を行き来する際に起こり得るいかなる事態に対しても、
IOC関係者のあらゆる責任を未来永劫免除するものだ。
同意書には「私は、新型コロナウイルスやその他の感染症の伝染または猛暑などの健康上の危険にさらされる可能性によって引き起こされる、
本大会への参加および/またはパフォーマンスへのあらゆる影響、重症または死亡に至った場合も含め、
自分自身のリスクと責任において本大会に参加することに同意します……」と記されている。
そう、この安全な、非常に安全な、最も安全な大会のために、IOCが義務付けた参加同意書に新たに挿入された特別な言葉を見逃してほしい。
「選手村は安全な場所であり、オリンピックおよびパラオリンピックは安全な方法で開催されます」と、
トーマス・バッハIOC会長は5月19日、冷静に抑揚のない口調で語った。バッハ会長は、6月29日に五輪コミュニティに宛てた書簡の中で、
催眠術師がうつろに反復するように、7段落の中で3回にわたって「安全で安心」というフレーズを繰り返した。
「私たちは安全で安心な大会をお届けする段階に入っています」と、バッハ会長は書いている。
ほら、まだ始まってすらいないのに、すでに安全なのだ。
オーストラリアのニュースは読まないように。環太平洋地域で猛威を振るった変異株により、シドニーはロックダウンされている。
それから、ニューサウスウェールズ州のグラディス・ベレジクリアン州首相が、レストランやショッピングモールでの「一瞬の」接触で数人が感染したと話したが、それも聞いてはいけない。
「このデルタ株(インド型)は……人から人へと飛び回るということにかけては、実に金メダルものだ」と、ベレジクリアン州首相は述べている。
た、オーストラリア代表チームの医師のデビッド・ヒューズ博士の話にも耳を貸してはいけない。博士は東京の空港や選手村のジムや食堂を「危険エリア」と呼んでいる。
代わりに、クロロホルムのように心地よいジョン・コーツIOC副会長の言葉に耳を傾けよう。
「この大会が参加者にとっても日本のみなさんにとっても安全なものであることは、これまで以上に明らかです」と、5月に約束してくれた。
9万3000人の選手、コーチ、役員、スタッフ、メディアが、世界中から3600の部屋に1万8000のベッドを備えた選手村にやってくる。
パンデミック下でのバスルームの共用? なんら危険はない。安全だ。完璧に。
日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長は、耳当たりのよい声明の中でそう断言している。
「コロナ禍で分断された世界で、スポーツは人と人をつなぐ」と。
選手村のスタッフ2人が7月6日、3000人収容の大食堂の同じテーブルで食事をした後、陽性反応が出たことも気にしてはいけない。
ウガンダ選手団の2人がトレーニングのために日本に到着した直後にデルタ株の陽性反応を示したことも、重ね重ねお願いするが、目を背けてほしい。
ワクチン接種は完了していた選手団のうち、1人は空港で、もう1人は大阪まで300マイル移動した後に陽性反応が出て、結果的に7人の関係者と運転手が隔離されたが。
https://courrier.jp/news/archives/252544/