新型コロナウイルスの感染拡大が始まってから1年半の間に浮かび上がった明確なパターンは、
一見確実なことが現実の出来事によって次々とひっくり返されていくことだ。
最近では西側――ここでは主に米国と西欧を指す――がパンデミックを経て普通の状態に戻りつつある。
しかし、戻れる保証は全くない。
ワクチンの接種率が伸び悩み、集団免疫を獲得する目標の達成が文化的な理由による接種拒否に阻まれている。
2歩進んでは1歩下がる状況だ。
懸念されるのは、新しい変異株が登場し、未接種の人々を減らす西側の能力を上回るペースで増えてしまう事態だ。
新しい変異株はすでに、7月4日の独立記念日までに成人の70%にワクチン接種を行うというジョー・バイデン大統領の
目標を達成不可能にしてしまっている。大統領が自ら掲げた目標をクリアできない最初のケースだ。
ホワイトハウスは、この目標は数週間遅れで達成されるだろうと話している。
だが、そのためには大統領や各州政府が文化戦争の激化を恐れてこれまで避けてきた施策を講じざるを得なくなるかもしれない。
例えば、9月の新学期が始まる前にワクチン接種を受けるよう児童・生徒に義務付けることなどだ。
同様な困難はほとんどの欧州諸国の行く手にも待ち受けている。ワクチン接種で出遅れた国が先行していた国に追いつきつつあるのは、
後者の接種率が伸び悩んでいるせいでもある。
西側が次の冬に再びシャットダウンを強いられるリスクを軽く見るべきではない。各国政府は2つの大きな困難に直面している。
第1の困難は、自由を取るか安全性を取るかという昔からある論争を切り抜けることだ。
英語圏のみならず、大半の西側諸国は、強制ではなく説得を通じてワクチン接種を展開している。
接種をためらっている人には、罰金を科すよりも宝くじをプレゼントしたりビールを無料で振る舞ったりする方が有効だ。
だが、ワクチン接種の初期の成功が、接種を拒む人々――若者、宗教的な理由で忌避する人、
そして様々な理由で阻害されている集団――を説得する勢いを削いでしまっている。
どういうことか。まず、米国では「タダ乗り」問題が拡大している。
ソーシャルディスタンシング(対人距離の確保)が消えるにつれ、ワクチンを接種する動機も弱くなっている。
米国では、パンデミックは終わったとの見方が世界のどこより浸透している。
スポーツの試合には、会場の収容人数の上限に近い観客が押しかけている。屋内のレストランは満席だ。
大半の地域では、マスクをしているとエリート主義者だと見なされる。
こうした状況の一部は、米疾病対策センター(CDC)が今年5月、室内でマスクをしなければいけないのはワクチン未接種の人だけだと早まって宣言したせいだ。
このように自己申告に委ねるやり方は、米国のように文化面での分断が激しい土地には向かない。接種証明書をこれほど簡単に偽造できる場合は特にそうだ。
死者数が急減していることも、米国民の危機感をさらに低下させている。
インドで最初に特定された「デルタ株」は、これまでの新型コロナウイルスよりもはるかに感染力が強い可能性がある。
だが、西側の有力ワクチンは今のところ、入院率を低位に抑えることに効果を上げている。英国では今、デルタ株が新規感染者の過半を占めるが、死者数はほとんど増えていない。
これは素晴らしい吉報だ。ただし、このウイルスの過去を振り返ると、これは長い変異の過程の1段階にすぎないかもしれない。
ほとんどの西側諸国では、ワクチン接種率を70%にすることは可能に思える。85%を目指すのは野心的だ。恐らく、米国では達成できないだろう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/65843
一見確実なことが現実の出来事によって次々とひっくり返されていくことだ。
最近では西側――ここでは主に米国と西欧を指す――がパンデミックを経て普通の状態に戻りつつある。
しかし、戻れる保証は全くない。
ワクチンの接種率が伸び悩み、集団免疫を獲得する目標の達成が文化的な理由による接種拒否に阻まれている。
2歩進んでは1歩下がる状況だ。
懸念されるのは、新しい変異株が登場し、未接種の人々を減らす西側の能力を上回るペースで増えてしまう事態だ。
新しい変異株はすでに、7月4日の独立記念日までに成人の70%にワクチン接種を行うというジョー・バイデン大統領の
目標を達成不可能にしてしまっている。大統領が自ら掲げた目標をクリアできない最初のケースだ。
ホワイトハウスは、この目標は数週間遅れで達成されるだろうと話している。
だが、そのためには大統領や各州政府が文化戦争の激化を恐れてこれまで避けてきた施策を講じざるを得なくなるかもしれない。
例えば、9月の新学期が始まる前にワクチン接種を受けるよう児童・生徒に義務付けることなどだ。
同様な困難はほとんどの欧州諸国の行く手にも待ち受けている。ワクチン接種で出遅れた国が先行していた国に追いつきつつあるのは、
後者の接種率が伸び悩んでいるせいでもある。
西側が次の冬に再びシャットダウンを強いられるリスクを軽く見るべきではない。各国政府は2つの大きな困難に直面している。
第1の困難は、自由を取るか安全性を取るかという昔からある論争を切り抜けることだ。
英語圏のみならず、大半の西側諸国は、強制ではなく説得を通じてワクチン接種を展開している。
接種をためらっている人には、罰金を科すよりも宝くじをプレゼントしたりビールを無料で振る舞ったりする方が有効だ。
だが、ワクチン接種の初期の成功が、接種を拒む人々――若者、宗教的な理由で忌避する人、
そして様々な理由で阻害されている集団――を説得する勢いを削いでしまっている。
どういうことか。まず、米国では「タダ乗り」問題が拡大している。
ソーシャルディスタンシング(対人距離の確保)が消えるにつれ、ワクチンを接種する動機も弱くなっている。
米国では、パンデミックは終わったとの見方が世界のどこより浸透している。
スポーツの試合には、会場の収容人数の上限に近い観客が押しかけている。屋内のレストランは満席だ。
大半の地域では、マスクをしているとエリート主義者だと見なされる。
こうした状況の一部は、米疾病対策センター(CDC)が今年5月、室内でマスクをしなければいけないのはワクチン未接種の人だけだと早まって宣言したせいだ。
このように自己申告に委ねるやり方は、米国のように文化面での分断が激しい土地には向かない。接種証明書をこれほど簡単に偽造できる場合は特にそうだ。
死者数が急減していることも、米国民の危機感をさらに低下させている。
インドで最初に特定された「デルタ株」は、これまでの新型コロナウイルスよりもはるかに感染力が強い可能性がある。
だが、西側の有力ワクチンは今のところ、入院率を低位に抑えることに効果を上げている。英国では今、デルタ株が新規感染者の過半を占めるが、死者数はほとんど増えていない。
これは素晴らしい吉報だ。ただし、このウイルスの過去を振り返ると、これは長い変異の過程の1段階にすぎないかもしれない。
ほとんどの西側諸国では、ワクチン接種率を70%にすることは可能に思える。85%を目指すのは野心的だ。恐らく、米国では達成できないだろう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/65843