過去最多の子どもの自殺をくり返さないため、連休明けに注意を
昨年1年間の小中高生の自殺者数が、過去最多の499人にのぼっていたことがわかりました(※1)。国立成育医療研究センターの調査によれば、小学校4年生から高校3年生の4人に1人が「死にたい」などと考えていたこともわかり、新型コロナウイルス感染拡大の影響は、子どもの自殺というかたちでも表れています(※2)。
昨年の月別自殺者数を見ると、5月から一昨年のペースを上回りはじめ、6月と8月という休み明けに自殺者数が突出していました。6月は3か月間に及ぶ一斉休校明け。8月は前倒しされた夏休み明けでした。
一方、コロナ禍は現在も進行中です。このままでは、今年も多くの子どもの自殺が出てしまうかもしれません。そこで子どものSOSが出始める5月の連休明けに今年は気をつけていただきたいと思っています。なぜ5月の連休明けなのか。周囲はどんな対応が必要なのかをお伝えしたいと思います。
4人に1人が「死にたい」
では、現在の子どもの状況はどうでしょうか。おそらく昨年5月よりも強いストレスを子どもは感じているようです。
国立成育医療研究センターは、2020年11月17日から12月27日にかけて調査を実施。調査結果によれば、小学4年生から高校3年生の715名のうち、24%の子が「この1週間のうちで死にたい、自分を傷つけたいと思った」と回答。さらに回答結果から、24%の子どもが中程度以上のうつ症状を抱えていたと分析しました(思春期のうつ症状の重症度尺度PHQ-A)。単純比較はできませんが、4人に1人が「死にたい」と考えていたり、うつ症状が見られたりするのは非常に多いと言えるでしょう。
苦しそうな子への対応原則
目の前の子が心配な場合、どう対応をすればよいのか。非専門家向けに「TALKの原則」と呼ばれている自殺対策の原則があります。この原則は、カナダの自殺予防のグループがつくったもので、日本でも前述の精神科医・松本俊彦先生や、国立成育医療研究センターこころの診療部・田中恭子先生がその重要性を指摘しています。TALKの原則とはなにか。文科省のガイドブックから引用します。
子どもから「死にたい」と訴えられたり、自殺の危険の高まった子どもに出会ったとき、教師自身が不安になったり、その気持ちを否定したくなって、「大丈夫、頑張れば元気になる」などと安易に励ましたり、「死ぬなんて馬鹿なことを考えるな」などと叱ったりしがちです。しかし、それでは、せっかく開き始めた心が閉ざされてしまいます。自殺の危険が高まった子どもへの対応においては、次のようなTALKの原則が求められます。
■TALKの原則
(1)Tell:言葉に出して心配していることを伝える。
(2)Ask:「死にたい」という気持ちについて、率直に尋ねる。
(3)Listen:絶望的な気持ちを傾聴する。
(4)Keep safe:安全を確保する。
(文科省『教師が知っておきたい「子どもの自殺予防」』より)
私になりに意訳しますと、心配な子が現れた場合、周囲の大人は、(1)私は『あなたが心配だ』と誠実な態度で伝え、(2)自殺についての思いを率直に尋ね、(2)話は最後まで聴き、(4)話を聞いて危ないと思ったら安全を確保する。以上です。
「安全確保」とは、緊急時ならば目を離さないこと、いじめが起きている場合は学校へ登校させないことです。いじめなどの暴力を受けていると、恐怖感のあまり不登校を本人が拒む場合もありますが、危険な場所からは本人を遠ざけてください。心身の安全が確保できた段階で、あらためて本人の意思確認を行なったり、精神科など専門家へ相談をしたりといった対応をお願いします。
(全文はこちら)
https://news.yahoo.co.jp/byline/ishiishiko/20210505-00236121/