政府が発令を決めた3度目の緊急事態宣言では、酒類を提供する店への休業要請やイベントの原則無観客化などの措置が並ぶ。2度目の宣言、解除後に適用したまん延防止等重点措置では限定的な制約しか課さなかったが、変異株の感染拡大を防げないと判断し、強い対策にかじを切った。ただ、期間は25日〜5月11日と短く、経済とともに東京五輪への影響を抑えるためとの見方がくすぶる。(上野実輝彦)
■甘かった2度目の宣言期間の措置
菅義偉首相は23日の記者会見で対策に関し「懸念されるのは変異株の動きだ。手をこまねいていれば、大都市の感染が国全体に広がる」と説明した。
政府は、2度目の宣言時は「過去の経験に基づき的を絞る」(首相)と対象地域を首都圏に、営業時間短縮の対象を飲食店に限定。重点措置は、市区町村単位で適用するなど緩やかな措置を続けてきた。
今のタイミングでの方針転換は「変異株が急速に広がったことが要因」(西村康稔経済再生担当相)と政府は主張する。
この対応には疑問符もつく。変異株の感染者は宣言中だった3月中旬、全国で数百人規模で確認され、政府の新型コロナ対策分科会の尾身茂会長は「早晩、変異株が主流になる」と警鐘を鳴らしていた。政府が経済への影響を懸念し、専門家の意見を軽視して後手に回った印象は否めない。
■バッハ会長訪日前に解除?
今回の17日間の期間設定からは、なお経済に配慮したいという政府の思惑もにじむ。発令時に1カ月間と定めた過去2回の半分程度だからだ。官邸内には「宣言の効果を見定めるには短い」(幹部)との異論もあるが、政府高官は「5月11日で終わる」と解除ありきの姿勢を隠さない。
5月中旬には、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長の訪日が予定される。23日の衆院厚生労働委で立憲民主党の山井和則氏は「会長が来る前に終わらせたいと考えている、との指摘がある」と追及したが、首相は直接答えず「短期集中の措置を講じる」と強調した。
東京新聞 2021年04月24日 06時00分
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