https://news.yahoo.co.jp/articles/90c4ffc7baac3e8287d6afcd9964252a77bf765f
「発生源を特定」できていない…
写真:現代ビジネス
新型コロナウイルス感染症の発生源の解明を目指して、中国の武漢を訪問した世界保健機関(WHO)の調査団報告が先月末(3月30日)、ようやく発表された。
【写真】日本人は知らない…中国の「990万人コロナ検査」で見えたヤバい事実
ところが、その内容は、国際的な専門機関のものとは思えないお粗末な仕上がりだ。中国との共同研究という体裁を採ったことが仇になったようである。
報告書は4つのシナリオを提示して、「動物から中間宿主(別の動物)を介してヒトに感染した」という説を最も有力だとする一方で、中国のウイルス研究所から流出したというトランプ前アメリカ政権が主張していた説は「極めて可能性が低い」と結論付けた。
しかし、いずれもが推測の域を出ておらず、肝心の「発生源を特定する」という目的も果たせなかったのだ。
結局のところ、WHOと中国に対する国際社会の不信感は払しょくできず、新たな感染症リスクに対してWHOが予防という使命を果たせない恐れを露わにした。このままでは、人類は感染症に立ち向かう前に国際政治の駆け引きで共倒れになりかねない。
今週は、この悲惨な現状を概観し、打開策を探ってみよう。
今回の報告書のタイトルは、「COVIT-19ウイルスの起源に関するWHOの国際調査:中国編」(WHO‐convened Global Study of Origins of SARS-CoV-2:China Part)で、「2021年1月14日から2月10日のWHO・中国の共同調査」(Joint WHO-China Study 14 January-10 February 2021)という副題が付き、筆責を「共同執筆」(Joint Report)としている。
実物はWHOのホームページに掲載されているが、PDFファイルで120ページに及ぶ。構成や論理は整然と整理されている半面、真実の特定には程遠い内容となったのが特色だ。
米国の主張とは真逆の結果に
新型コロナの発生源として、4つの仮説を可能性が大きいものからランク付けして指摘。この4つは、武漢のフィールド調査が終了した段階で、調査団が記者会見した際には、ランク付けをせずに列挙していたものだ。
調査書のランク付けをみると、一番可能性が高いのが「動物から中間宿主(別の動物)を介してヒトに感染」したケースで、「考えられる、または非常に可能性が高い」と位置付けた。
根拠は、コウモリやセンザンコウから新型コロナとよく似たウイルスが見つかっていること、他にも中間宿主を介してヒトに感染したウイルスが存在することだという。
2番目は、「動物からヒトへの直接の感染」で、「可能性がある、または考えられる」とした。この根拠は、コウモリとの接触機会が多いヒトからコウモリのコロナウイルスに対する抗体が見つかったことである。
3番目は、中国が熱心に主張してきた「海外から武漢に持ち込まれた」という説だ。「可能性はある」という表現で、否定しなかったのだ。
輸入した冷凍食品のパッケージの外側から新型コロナウイルスが見つかった例から低温に耐える特性が明らかになっているというが、実際に感染した証拠がないため、3番目のシナリオにとどめたとしている。
最後が、中国科学院の武漢ウイルス研究所からウイルスが流出したという説だ。米国がかねて強く主張していた説だが、新型コロナ確認時(2019年12月)以前に、類似ウイルスを扱っていた研究所がないとして、「極めて可能性が低い」と突き放した。
次ページは:テドロス自身が報告書の不備を列記
(略)