キリンは高血圧症になりにくい 首が長いからこその進化
石倉徹也2021年3月24日 9時55分
https://www.asahi.com/articles/ASP3S323QP3JULBJ00W.html
ロスチャイルドキリンのオス=ケニア、モーエンス・トロールさん提供
ナミビアの平原を横断する3頭のキリン=モーエンス・トロールさん提供
首が長いキリンは、血圧がほかの哺乳類の2倍ほどもある。高い位置にある頭まで血を送る必要があるためだが、にもかかわらず、高血圧症を防ぐ遺伝子によって心臓や血管の病気になりにくいことを、中国・西北工業大などのチームが発見した。この遺伝子をマウスに入れたところ、血圧が上がりにくく、骨密度も高くなったという。長い首を保つために独特の遺伝子を獲得したとみられる。
背の高いキリンは、高い木の葉でも食べられるのが利点。しかし、頭まで4〜5メートルあると、心臓と脳の高さの差は2メートルほどにもなり、強い心臓で血を押し出す必要がある。このため、血圧が常に高いほか、水を飲む際など頭の上げ下げで血流が急激に変わらないような仕組みも必要という。
こうした高血圧の課題をどう乗り切っているのか。チームは、ケニアやウガンダに主に生息するロスチャイルドキリンの遺伝子情報(ゲノム)を解析。他の動物と比べたところ、心血管に関係しているとみられる特有の遺伝子を発見した。
この遺伝子をマウスに組み込み、血圧を上げる薬を28日間投与したところ、通常のマウスが高血圧によって心臓などに障害が出たのに、血圧がわずかに上昇しただけだった。さらに、このマウスは、脊椎(せきつい)や足の骨密度も高い傾向にあった。長い首を支えるため、骨がしっかりするように進化した可能性があるという。
西北工業大のウェン・ワン教授(進化ゲノム学)は「驚きの結果だ。この遺伝子が心臓や血管を強化し、高血圧の影響を打ち消すのかもしれない。ヒトの心血管疾患や高血圧の治療に役立つ可能性がある」としている。
論文は17日付の米科学誌サイエンス・アドバンシス(https://advances.sciencemag.org/lookup/doi/10.1126/sciadv.abe9459別ウインドウで開きます)に発表された。(石倉徹也)