https://www.sankei.com/smp/premium/news/210227/prm2102270004-s1.html
コロナ禍で自転車需要増も…違反摘発も増加 神奈川で過去最多に 安全教育も減少
新型コロナウイルス禍で需要が高まっている移動手段が自転車だ。公共交通機関を避けての通勤・通学や食事宅配サービスで使用する人が増えているが、交通マナーでのトラブルも散見される。神奈川県警によると、昨年の自転車による違反の摘発件数は2千件を超え過去最多。需要の高まりの裏で、事故を未然に防ぐための安全啓発活動がコロナで激減しているなどの課題もある。(太田泰)
コロナ禍で、自転車の利用率は全国的に増加している。au損害保険(東京)が昨年9月、全国の自転車利用者1千人を対象に行ったアンケートでは、コロナの流行後に自転車の利用頻度が「増えた」「やや増えた」という回答は全体の23・9%だった。「減った」「やや減った」という回答(12・4%)の2倍近くで、4人に1人の割合で利用頻度が増えたことが分かる。増えた理由は「外出自粛による運動不足解消のため」が59・8%(複数回答)で最多だった。
令和元年に保険義務化
自転車に関しては近年、重大な事故の発生や高額な賠償が注目されている。平成20年9月に神戸市内で当時小学5年の男児が乗った自転車が散歩中の女性に衝突し、女性が寝たきりとなった事故で、神戸地裁は男児の母親に約9500万円の賠償を命じた。
神奈川県内では29年12月に、川崎市内で「ながらスマホ」で電動アシスト自転車に乗っていた女子大学生が高齢女性に衝突し、死亡させる事故が発生。この事故の重過失致死罪で在宅起訴された被告に、横浜地裁川崎支部は禁錮2年、執行猶予4年(求刑禁錮2年)の判決を下している。
全国の自治体では保険の加入を条例などで義務化する動きが広がり、神奈川県も令和元年10月から保険加入を義務化した。今月、同県が公表した「令和2年度県民ニーズ調査結果」で、保険に「加入している」と答えたのは74・8%。条例施行前の平成30年度の調査(51・8%)に比べて、20ポイント以上増加している。
ただ、条例には罰則がなく、保険の種類も多岐にわたることから「分かりづらい」との声もある。実際、「加入していない」「分からない」の合計は25・0%で、今後この割合をどう縮めていくかが課題だ。
安全教育は3分の1に
事故を未然に防止するには、安全啓発活動が不可欠だ。しかし、神奈川県警交通総務課によると、コロナ禍に見舞われた昨年の自転車の安全教育は413回。令和元年は1326回で、3分の1以下に激減した。安全教育の多くは学校や事業所で行われるが、感染のリスクを避けるため開催機会が減っているという。
同県警によると、昨年の自転車による違反の摘発件数は2092件。元年(1260件)の約1・7倍で、摘発件数が2千件を超えたのは昨年が初めてだ。同県警が取り締まりを強化したことも一因となっている。他方、昨年の自転車関連の事故は5027件で減少しつつあるが、死者数は12人でほぼ横ばいだった。
同県警は安全教育の代わりに、会員制交流サイト(SNS)や動画の活用に重点をシフトしつつある。また、昨年12月には食事宅配サービスの大手「ウーバーイーツ」と県警が連携し、自転車やバイクを使う約60人の配達員に対して安全指導を行うなど、需要の高まりに即した活動にも力を入れる。
同県警交通総務課の担当者は「自転車も乗れば車の仲間入りで、場合によっては自分が被害者にも加害者にもなる。コロナ禍で安全教育の面では多大な影響が出ているが、さまざまな方法で今後も交通安全の啓発と保険の推奨に努めたい」としている。
2021.2.27 09:00
産経新聞
コロナ禍で自転車需要増も…違反摘発も増加 神奈川で過去最多に 安全教育も減少
新型コロナウイルス禍で需要が高まっている移動手段が自転車だ。公共交通機関を避けての通勤・通学や食事宅配サービスで使用する人が増えているが、交通マナーでのトラブルも散見される。神奈川県警によると、昨年の自転車による違反の摘発件数は2千件を超え過去最多。需要の高まりの裏で、事故を未然に防ぐための安全啓発活動がコロナで激減しているなどの課題もある。(太田泰)
コロナ禍で、自転車の利用率は全国的に増加している。au損害保険(東京)が昨年9月、全国の自転車利用者1千人を対象に行ったアンケートでは、コロナの流行後に自転車の利用頻度が「増えた」「やや増えた」という回答は全体の23・9%だった。「減った」「やや減った」という回答(12・4%)の2倍近くで、4人に1人の割合で利用頻度が増えたことが分かる。増えた理由は「外出自粛による運動不足解消のため」が59・8%(複数回答)で最多だった。
令和元年に保険義務化
自転車に関しては近年、重大な事故の発生や高額な賠償が注目されている。平成20年9月に神戸市内で当時小学5年の男児が乗った自転車が散歩中の女性に衝突し、女性が寝たきりとなった事故で、神戸地裁は男児の母親に約9500万円の賠償を命じた。
神奈川県内では29年12月に、川崎市内で「ながらスマホ」で電動アシスト自転車に乗っていた女子大学生が高齢女性に衝突し、死亡させる事故が発生。この事故の重過失致死罪で在宅起訴された被告に、横浜地裁川崎支部は禁錮2年、執行猶予4年(求刑禁錮2年)の判決を下している。
全国の自治体では保険の加入を条例などで義務化する動きが広がり、神奈川県も令和元年10月から保険加入を義務化した。今月、同県が公表した「令和2年度県民ニーズ調査結果」で、保険に「加入している」と答えたのは74・8%。条例施行前の平成30年度の調査(51・8%)に比べて、20ポイント以上増加している。
ただ、条例には罰則がなく、保険の種類も多岐にわたることから「分かりづらい」との声もある。実際、「加入していない」「分からない」の合計は25・0%で、今後この割合をどう縮めていくかが課題だ。
安全教育は3分の1に
事故を未然に防止するには、安全啓発活動が不可欠だ。しかし、神奈川県警交通総務課によると、コロナ禍に見舞われた昨年の自転車の安全教育は413回。令和元年は1326回で、3分の1以下に激減した。安全教育の多くは学校や事業所で行われるが、感染のリスクを避けるため開催機会が減っているという。
同県警によると、昨年の自転車による違反の摘発件数は2092件。元年(1260件)の約1・7倍で、摘発件数が2千件を超えたのは昨年が初めてだ。同県警が取り締まりを強化したことも一因となっている。他方、昨年の自転車関連の事故は5027件で減少しつつあるが、死者数は12人でほぼ横ばいだった。
同県警は安全教育の代わりに、会員制交流サイト(SNS)や動画の活用に重点をシフトしつつある。また、昨年12月には食事宅配サービスの大手「ウーバーイーツ」と県警が連携し、自転車やバイクを使う約60人の配達員に対して安全指導を行うなど、需要の高まりに即した活動にも力を入れる。
同県警交通総務課の担当者は「自転車も乗れば車の仲間入りで、場合によっては自分が被害者にも加害者にもなる。コロナ禍で安全教育の面では多大な影響が出ているが、さまざまな方法で今後も交通安全の啓発と保険の推奨に努めたい」としている。
2021.2.27 09:00
産経新聞