さらなる感染対策の徹底と強化を
ワクチンの接種がスムーズに進んでいない現状を考えると、変異株の増加は、より徹底した感染対策が必要であることを示している。
検査、マスクの着用、ソーシャルディスタンスの保持は、感染拡大の防止に役立つ。
チェビキ氏は、人々が孤立に飽きてきた今、屋外などのリスクの低い場所での活動を可能にするなど、より賢い方法で対策を実施する必要があると強調する。
密閉された空間ではウイルスが空気中に蓄積し、感染リスクが高まる可能性があるとマレイ氏は説明する。
昨年9月23日付けで学術誌「Clinical Infectious Diseases」に発表された濃厚接触者の追跡から、屋内での感染リスクは屋外より20倍も高いことがわかっている。
屋外でもある程度のリスクはあるものの、短時間の接触ならリスクはきわめて低いとチェビキ氏は言う。
「リスクはスペクトラム(連続的なもの)として見る必要があります」と氏は言う。
「人々は、屋外で出会う他人のことは警戒するのに、友人と会食しているときはすっかり対策を忘れているように見えます」
多くの研究者は、より高性能のマスクの使用を推奨している。
マスクは万能薬ではないし、他の対策と組み合わせる必要があるが、リスクの高い場所に入らざるをえないときに感染リスクを下げるのに役立つ。
米ハーバード大学医学大学院ブリガム・アンド・ウィメンズ病院の内科医アブラール・カラン氏は、
一般市民のためにろ過率の高い高性能マスクの生産を大幅に増やすように呼びかけている。
専門家は、政府の支援が感染拡大阻止の鍵になるとも強調している。
人々が安全に自主隔離するためには、そのための居場所と、体調が悪ければ仕事を休める経済的支援が必要だ。
そして、ウイルスに複製と進化の機会を与えないためには、ワクチン接種のスピードアップが不可欠だ。
米エール大学医学大学院の免疫学者である岩崎明子氏は、「ワクチン接種を早くすればするほど、
さらなる変異株が出てくる可能性は低くなります」と話す。
米国ではバイデン大統領が200兆円規模のコロナ対策の実現に向けて動いており、近いうちに状況が大きく好転する可能性はある。
それでも私たちは力を合わせて警戒を続け、ウイルスの広がりを遅らせる必要がある。
「この状況は永遠に続くものではありません。半年後には終息していることさえありえます」とラスムセン氏は言う。
「けれども今は、気楽に構えている場合ではありません」
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/21/012900049/?P=3