安全な保育難しい…保育所の登園、自粛求める自治体も コロナ感染拡大「柔軟な対応が必要」と専門家
新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言で国が「原則開所」とする保育所について、東京都内では独自に登園自粛を求める自治体が出始めている。「感染者の急増を抑えるため」「休ませたい保護者のニーズに沿った」などが理由だが、自治体でまちまちの対応に困惑する保護者も。「保育園を考える親の会」の普光院亜紀代表は「自治体の判断は理解できるが、個々の家庭や仕事の事情は異なる。画一的でない柔軟な対応が必要」と指摘する。(奥野斐、小林由比)
◆自粛要請の世田谷「いきなり休園避けたい」
「通常保育では感染拡大防止と安全な保育の継続が難しい」。世田谷区は8日、登園自粛の協力をお願いする文書を保護者に出した。
区内の保育施設での感染者数は昨年12月、それまでの月平均の約4倍となる40人ほどに急増。今月も増えている。保育認定・調整課の伊藤祐二課長は「感染者が1人出れば、保育士や園児ら濃厚接触者は必然的に多くなる。いきなり休園となるリスクを減らしたい」と説明する。
感染拡大で預けることに保護者から不安の声もあるといい、「区が登園自粛をすれば、会社側と休業や在宅勤務などの調整がしやすい保護者もいる」。区は今月、保育のガイドラインを見直し、登園自粛の「弱い要請」ができるようにした。登園率は60〜80%を想定し、伊藤課長は「国の開所要請と、保護者側の声の両方を踏まえて対応した」と理解を求める。
◆前回の経験から国は原則開所
都内では文京、目黒、渋谷、荒川各区も、家庭で保育できる人に時間短縮や登園自粛の協力をお願いし、保育料は日割りで減額している。
昨年春の緊急事態宣言の際、国は縮小保育や臨時休園も検討するよう示し、都内では実際に縮小や休園の対応を取る自治体が相次いだ。在宅勤務中の保護者、特に女性への負担増や、親子のストレスの高まりなどの問題が指摘された。
こうした点も踏まえ、国は今回「社会経済活動を幅広く止めるものではなく、保育を必要とする人が大幅に減少しない」「子どもが重症化する割合は低い」などと原則開所を求めた。
◆受け止めは複雑
ただ、保護者側の受け止めは複雑だ。育休中の目黒区の女性会社員(35)は、12日から長男(6つ)と次男(4つ)を休ませたものの、子どもが通いたがり、保育所と相談して今後は週1日預けることにした。「育休中なので休ませた方がいいかなと思ったが、大半の子が普段どおりに通っていた。子どもも友達と遊びたいし、判断が難しい」と話す。
文京区の認可保育所に年長の子を通わせる母親(39)は、仕事が医療関係で在宅勤務ができず、「子どもを預けられなくなれば本当に困る」と心配する。行事も軒並み中止になり、「せめて友達との生活を卒園まで楽しんでほしい」。
◆「子どもの生活や心身の発達にも配慮を」
普光院さんによると、昨春は就労を支える保育所が休園したことで困った親が多かったという。それだけに、国が原則開所の方向性を示したことは歓迎する一方、「自治体が感染状況などをふまえて判断する柔軟性も重要」と指摘。「困っている家庭が保育所を利用できるようにするとともに、子どもの生活や心身の発達にも配慮した対応が求められる」と話している。
東京新聞 2021年01月20日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/80822
新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言で国が「原則開所」とする保育所について、東京都内では独自に登園自粛を求める自治体が出始めている。「感染者の急増を抑えるため」「休ませたい保護者のニーズに沿った」などが理由だが、自治体でまちまちの対応に困惑する保護者も。「保育園を考える親の会」の普光院亜紀代表は「自治体の判断は理解できるが、個々の家庭や仕事の事情は異なる。画一的でない柔軟な対応が必要」と指摘する。(奥野斐、小林由比)
◆自粛要請の世田谷「いきなり休園避けたい」
「通常保育では感染拡大防止と安全な保育の継続が難しい」。世田谷区は8日、登園自粛の協力をお願いする文書を保護者に出した。
区内の保育施設での感染者数は昨年12月、それまでの月平均の約4倍となる40人ほどに急増。今月も増えている。保育認定・調整課の伊藤祐二課長は「感染者が1人出れば、保育士や園児ら濃厚接触者は必然的に多くなる。いきなり休園となるリスクを減らしたい」と説明する。
感染拡大で預けることに保護者から不安の声もあるといい、「区が登園自粛をすれば、会社側と休業や在宅勤務などの調整がしやすい保護者もいる」。区は今月、保育のガイドラインを見直し、登園自粛の「弱い要請」ができるようにした。登園率は60〜80%を想定し、伊藤課長は「国の開所要請と、保護者側の声の両方を踏まえて対応した」と理解を求める。
◆前回の経験から国は原則開所
都内では文京、目黒、渋谷、荒川各区も、家庭で保育できる人に時間短縮や登園自粛の協力をお願いし、保育料は日割りで減額している。
昨年春の緊急事態宣言の際、国は縮小保育や臨時休園も検討するよう示し、都内では実際に縮小や休園の対応を取る自治体が相次いだ。在宅勤務中の保護者、特に女性への負担増や、親子のストレスの高まりなどの問題が指摘された。
こうした点も踏まえ、国は今回「社会経済活動を幅広く止めるものではなく、保育を必要とする人が大幅に減少しない」「子どもが重症化する割合は低い」などと原則開所を求めた。
◆受け止めは複雑
ただ、保護者側の受け止めは複雑だ。育休中の目黒区の女性会社員(35)は、12日から長男(6つ)と次男(4つ)を休ませたものの、子どもが通いたがり、保育所と相談して今後は週1日預けることにした。「育休中なので休ませた方がいいかなと思ったが、大半の子が普段どおりに通っていた。子どもも友達と遊びたいし、判断が難しい」と話す。
文京区の認可保育所に年長の子を通わせる母親(39)は、仕事が医療関係で在宅勤務ができず、「子どもを預けられなくなれば本当に困る」と心配する。行事も軒並み中止になり、「せめて友達との生活を卒園まで楽しんでほしい」。
◆「子どもの生活や心身の発達にも配慮を」
普光院さんによると、昨春は就労を支える保育所が休園したことで困った親が多かったという。それだけに、国が原則開所の方向性を示したことは歓迎する一方、「自治体が感染状況などをふまえて判断する柔軟性も重要」と指摘。「困っている家庭が保育所を利用できるようにするとともに、子どもの生活や心身の発達にも配慮した対応が求められる」と話している。
東京新聞 2021年01月20日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/80822