https://gigazine.net/news/20210110-drugs-decriminalized-upside-downside/
2020年11月にアメリカのオレゴン州がマジックマッシュルームの幻覚成分であるシロシビンを合法化したほか、
12月にはコロンビア政府がコカイン産業の合法化を検討していると報じられるなど、麻薬や幻覚成分の規制緩和や合法化の動きが近年活発化しています。
このような動きのメリットや懸念されている問題について、社会学の専門家が解説しました。
Oregon just decriminalized all drugs – here's why voters passed this groundbreaking reform
https://theconversation.com/oregon-just-decriminalized-all-drugs-heres-why-voters-passed-this-groundbreaking-reform-150806
オレゴン州立大学社会学部のスコット・エイキンス教授とワシントン州立大学社会学部のクレイトン・モッシャー教授によると、
オレゴン州を中心に麻薬の非犯罪化が進んでいる背景には、3つの歴史的な議論があるとのこと。
◆1:麻薬戦争の失敗
1971年、当時のアメリカ大統領であるリチャード・ニクソンは「麻薬は社会の最大の敵である」と宣言し、大々的な麻薬戦争を開始。麻薬の使用を厳罰化して、
麻薬の使用者をアメリカから駆逐しようとしました。
しかし、エイキンス氏らの研究によると、麻薬の厳罰化による抑止効果は小さいかまったく存在しないとのこと。
これには、中毒性が高いという麻薬の性質や、そもそも刑罰が犯罪を抑止する効果には限界があることが挙げられます。
例えば、2001年に全ての麻薬の所持を非犯罪化したポルトガルでは、15〜34歳のコカイン使用率は0.3%と、EUの平均である2.1%よりはるかに低くなっています。
一方、麻薬戦争により麻薬の厳罰化を推し進めたアメリカでは、刑務所の囚人の5人に1人が麻薬犯罪に関与したことで収監されるという事態となりました。
このことからエイキンス氏らは、
「麻薬を厳罰化しても薬物問題は減らなかったので、麻薬を非犯罪化しても薬物問題はほとんど増えないでしょう」と指摘しています。
◆2:人種差別
アメリカ国立薬物乱用研究所(NIDA)のノラ・ボルコウ所長は、NIDAの公式サイトで
「白人と黒人は同じような割合で麻薬を使用していますが、逮捕されたり投獄されたりしているのは圧倒的に黒人です」と訴えています。
エイキンス氏らによると、ボルコウ所長が述べたような状況が発生するのは薬物規制当局が有色人種を積極的に薬物関連の捜査の対象にしていることが原因。
麻薬の非犯罪化が議論されている背景には、麻薬捜査にかこつけた人種差別を解消するねらいもあると、エイキンス氏らは指摘しました。
◆3:コスト
財政的な側面からも、麻薬の非犯罪化についての議論が行われています。
ハーバード大学の経済学者ジェフリー・マイロン氏の試算では、アメリカが2016年に費やした麻薬取り締まり関連の費用は、合計で478億ドル(約5兆円)に達することが分かっています。
一方、麻薬を非犯罪化しつつ麻薬産業に課税することで、政府と地方自治体の税収は合計で580億ドル(約6兆円)も増加すると見積もられているとのことです。
◆麻薬の非犯罪化をすることのデメリット
麻薬の規制緩和に反対する人が抱いている最大の懸念は、子どもへの影響です。
オレゴン州でシロシビンの合法化に反対する運動を展開した弁護士のジェームズ・オルーク氏は、テレビで
「私は、麻薬の非犯罪化は子どもたちへの悪いメッセージとなり、麻薬のリスクに対する彼らの認識に影響を与えてしまうと考えています」と発言しました。
一方、この懸念に対してエイキンス氏らは
「マリファナを合法化したアメリカの州では、10代の若者によるマリファナの消費が減少傾向にあります。
これは、若者にとっては闇市場で取引される薬物を手に入れるより、法律のもとでコントロールされたマリファナを入手する方が難しいからではないでしょうか」と述べて、
麻薬の非犯罪化は目の届きにくい場所での麻薬取引を減少させる効果があることを指摘しました。
◆まとめ
上記のような麻薬の非犯罪化によるメリットとデメリットについて、エイキンス氏らは
「非犯罪化のような政策転換にはリスクはつきものですが、ポルトガルの事例により『非犯罪化は厳罰化よりも人道的で麻薬の抑制効果も高いこと』が証明されています。
これは、薬物問題は勝てる見込みのない戦争であると同時に、管理すべき公衆衛生上の課題でもあるいうことの証左です」と結論付けました。
2020年11月にアメリカのオレゴン州がマジックマッシュルームの幻覚成分であるシロシビンを合法化したほか、
12月にはコロンビア政府がコカイン産業の合法化を検討していると報じられるなど、麻薬や幻覚成分の規制緩和や合法化の動きが近年活発化しています。
このような動きのメリットや懸念されている問題について、社会学の専門家が解説しました。
Oregon just decriminalized all drugs – here's why voters passed this groundbreaking reform
https://theconversation.com/oregon-just-decriminalized-all-drugs-heres-why-voters-passed-this-groundbreaking-reform-150806
オレゴン州立大学社会学部のスコット・エイキンス教授とワシントン州立大学社会学部のクレイトン・モッシャー教授によると、
オレゴン州を中心に麻薬の非犯罪化が進んでいる背景には、3つの歴史的な議論があるとのこと。
◆1:麻薬戦争の失敗
1971年、当時のアメリカ大統領であるリチャード・ニクソンは「麻薬は社会の最大の敵である」と宣言し、大々的な麻薬戦争を開始。麻薬の使用を厳罰化して、
麻薬の使用者をアメリカから駆逐しようとしました。
しかし、エイキンス氏らの研究によると、麻薬の厳罰化による抑止効果は小さいかまったく存在しないとのこと。
これには、中毒性が高いという麻薬の性質や、そもそも刑罰が犯罪を抑止する効果には限界があることが挙げられます。
例えば、2001年に全ての麻薬の所持を非犯罪化したポルトガルでは、15〜34歳のコカイン使用率は0.3%と、EUの平均である2.1%よりはるかに低くなっています。
一方、麻薬戦争により麻薬の厳罰化を推し進めたアメリカでは、刑務所の囚人の5人に1人が麻薬犯罪に関与したことで収監されるという事態となりました。
このことからエイキンス氏らは、
「麻薬を厳罰化しても薬物問題は減らなかったので、麻薬を非犯罪化しても薬物問題はほとんど増えないでしょう」と指摘しています。
◆2:人種差別
アメリカ国立薬物乱用研究所(NIDA)のノラ・ボルコウ所長は、NIDAの公式サイトで
「白人と黒人は同じような割合で麻薬を使用していますが、逮捕されたり投獄されたりしているのは圧倒的に黒人です」と訴えています。
エイキンス氏らによると、ボルコウ所長が述べたような状況が発生するのは薬物規制当局が有色人種を積極的に薬物関連の捜査の対象にしていることが原因。
麻薬の非犯罪化が議論されている背景には、麻薬捜査にかこつけた人種差別を解消するねらいもあると、エイキンス氏らは指摘しました。
◆3:コスト
財政的な側面からも、麻薬の非犯罪化についての議論が行われています。
ハーバード大学の経済学者ジェフリー・マイロン氏の試算では、アメリカが2016年に費やした麻薬取り締まり関連の費用は、合計で478億ドル(約5兆円)に達することが分かっています。
一方、麻薬を非犯罪化しつつ麻薬産業に課税することで、政府と地方自治体の税収は合計で580億ドル(約6兆円)も増加すると見積もられているとのことです。
◆麻薬の非犯罪化をすることのデメリット
麻薬の規制緩和に反対する人が抱いている最大の懸念は、子どもへの影響です。
オレゴン州でシロシビンの合法化に反対する運動を展開した弁護士のジェームズ・オルーク氏は、テレビで
「私は、麻薬の非犯罪化は子どもたちへの悪いメッセージとなり、麻薬のリスクに対する彼らの認識に影響を与えてしまうと考えています」と発言しました。
一方、この懸念に対してエイキンス氏らは
「マリファナを合法化したアメリカの州では、10代の若者によるマリファナの消費が減少傾向にあります。
これは、若者にとっては闇市場で取引される薬物を手に入れるより、法律のもとでコントロールされたマリファナを入手する方が難しいからではないでしょうか」と述べて、
麻薬の非犯罪化は目の届きにくい場所での麻薬取引を減少させる効果があることを指摘しました。
◆まとめ
上記のような麻薬の非犯罪化によるメリットとデメリットについて、エイキンス氏らは
「非犯罪化のような政策転換にはリスクはつきものですが、ポルトガルの事例により『非犯罪化は厳罰化よりも人道的で麻薬の抑制効果も高いこと』が証明されています。
これは、薬物問題は勝てる見込みのない戦争であると同時に、管理すべき公衆衛生上の課題でもあるいうことの証左です」と結論付けました。